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ロシア、「2060年までにCO2排出実質ゼロ」プーチン氏が表明 脱炭素をアピール

ロシア、「2060年までにCO2排出実質ゼロ」プーチン氏が表明 脱炭素をアピール

2021年10月14日

ロシアのプーチン大統領は10月13日、ロシアで排出されるCO2を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」を2060年までに達成する方針を表明した。モスクワで開催中の国際フォーラム「ロシア・エネルギー週間」で演説し、脱炭素に向け積極的な姿勢をアピールした。

世界有数の石油・ガス出産国であるロシアはCO2の国別排出量が世界4番目であるが、CO2の排出抑制には消極的だと見られていた。欧州連合(EU)、英国、イタリアはロシアに対し、2050年までの実質ゼロにコミットし、気候変動対策を強化するよう求めていた。欧州委員会は12日に環境関連事業に資金使途を絞ったグリーンボンド(環境債)を発行、120億ユーロ(約1兆5,700億円)を調達したと発表し、環境や気候変動対策を強化している。

プーチン氏は、欧州で価格高騰が問題となっている天然ガスの供給について、2021年には過去最高水準の供給量になると指摘。1~9月の欧州向けの天然ガス供給量については、ロシアは液化天然ガス(LNG)を含めて前年同期比で15%増やしたと述べ、欧州諸国の要請があればさらに増やすと強調。供給増への具体的な計画には触れなかった。

プーチン氏は演説後、ロシアがエネルギー供給を外交の武器にしているのではないかとの指摘について、「ナンセンスだ」と答え、根拠のない政治的なおしゃべりとして否定した。天然ガス相場は今、世界的に上昇が加速し、ロシア依存へのリスクが懸念されている。プーチン氏は、価格高騰は風力発電量の減少による電力不足などが原因だとの見方を示し、欧州市場での価格の上昇は供給側でなく、需要側に要因があると語った。

さらに9月に完工した天然ガスを欧州向けに送る海底パイプライン「ノルドストリーム2」が稼働すれば価格は大幅に下がると強調。「まだ行政的な障害が残っている」と述べ、ドイツ当局などに稼働に向けた早期承認を求めた。ノルドストリーム2はドイツ当局の承認を待っているが、米国は欧州のロシアへのエネルギー依存度が高まるとして稼働に反対している。

ロシアが天然ガスの供給をしぼることでヨーロッパに揺さぶりをかけ、承認を急がせようとしているのではないかという見方も出ており、「行政的な障害」と言及することでプーチン大統領はこれに反論した。

ロシアは世界的に主流となっている「50年に実質ゼロ」の目標より10年程度遅れることになるが、「気候を維持することは全人類共通の課題だ」と強調する。ロシアの表明により、「脱炭素」ブームの動きは世界でますます加速することが予想される。

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ヘッダー写真:Kremlin.ru, CC BY 4.0, via Wikimedia Commons

EnergyShift編集部
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