「化石燃料ファイナンス成績表2021」発表 どこの銀行が、どれだけ、化石燃料に融資したのか 銀行のコミットメントは守られているのか | EnergyShift

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「化石燃料ファイナンス成績表2021」発表 どこの銀行が、どれだけ、化石燃料に融資したのか 銀行のコミットメントは守られているのか

「化石燃料ファイナンス成績表2021」発表 どこの銀行が、どれだけ、化石燃料に融資したのか 銀行のコミットメントは守られているのか

EnergyShift編集部
2021年03月28日

アメリカの環境NGO、レインフォレスト・アクション・ネットワーク他は、3月24日、新しい報告書『化石燃料ファイナンス成績表2021〜気候カオスをもたらす銀行業務〜』を発表した。この報告書は世界の主要民間銀行による化石燃料への融資・引受をまとめたものだ。

分析の結果、邦銀4行を含む世界の60銀行は、パリ協定採択後の5年間で合計3.8兆ドル以上を化石燃料部門に資金提供したことが明らかになった。

また、新型コロナウイルス感染拡大による不況下にも関わらず、2020年の融資・引受額はパリ協定採択翌年である2016年の金額を上回ったこともわかった。

レインフォレスト・アクション・ネットワークらNGOは、世界の主要銀行がパリ協定から5年経っても化石燃料への資金提供を継続していることに対して「パリ協定と整合性がない」と批判した。

『化石燃料ファイナンス成績表2021』概要

  • 世界の主要民間銀行60行が化石燃料部門に行った資金提供を示した包括的な報告書であり、石炭、石油、ガス部門の世界2,300社に対する2016年〜2020年の5年間の融資・引受を分析の対象としている。
  • 第12版となる2021年版は対象銀行を35行から60行に拡大した。
  • 世界の主要60銀行は、パリ協定採択後の5年間(2016年〜2020年)で合計3.8兆ドル以上を化石燃料部門に資金提供した。
  • 新型コロナウイルス感染拡大の影響で化石燃料の需要および生産は減少したが、2020年の化石燃料への資金提供額は約7,507億ドル。パリ協定採択の翌年である2016年の約7,092億ドルを上回った。
  • 上記5年間の融資・引受額が最も多かった銀行はJPモルガン・チェース、2位がシティ、3位がウェルズ・ファーゴ、4位がバンク・オブ・アメリカ(ともに米国)、5位がロイヤル・バンク・オブ・カナダ(RBC)。地域別上位銀行は、ヨーロッパはバークレイズ、アジアは三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)、中国は中国銀行。
  • 邦銀では、MUFGが世界6位(約1,477億ドル)、みずほフィナンシャルグループ(みずほ)が8位(約1,235億ドル)で、上位10銀行にメガバンク2行が入った。MUFGは昨年と同じ順位だが、パリ協定採択以降の資金提供は増加傾向にある。三井住友フィナンシャルグループ(SMBC)は18位で(約863億ドル)、昨年20位から順位を上げた。今回初めて対象となった三井住友トラスト・グループは59位(約6億ドル)。
  • コロナ禍での不況のため、2020年の化石燃料事業への融資・引受額は約7,507億ドルで、前年の8,237億ドルと比べて約9%減少した。しかし化石燃料を拡大している上位100社への過去5年の資金提供額は約1.5兆ドルで、2020年の提供額3,685億ドルは前年の3,336億ドルに比べて10%増加した。
  • 資金提供先には「ライン3」石油パイプライン、アルゼンチン・パタゴニア地域の先住民族での土地でのフラッキング(水圧破砕法)によるシェールオイル・ガス開発など、物議を醸している事業を進める企業が含まれる。3メガバンク はライン3の建設会社であるエンブリッジ社に資金を提供している。

レインフォレスト・アクション・ネットワーク「責任ある金融」シニアキャンペーナー ハナ・ハイネケン氏は「世界の主要銀行は今後どのような方向に向かうのか、厳しい選択を迫られています。パリ協定以降、メガバンクら邦銀は3,500億ドル以上の融資・引受を化石燃料へ提供しています。この資金の4割以上は化石燃料を最も拡大している100社に提供されました。今年11月に開催される気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)の前に、化石燃料への資金提供が増えることがあってはいけません。ウォール街の銀行とMUFGをはじめ世界の主要銀行は、地球の気温上昇を1.5度未満に抑えるために化石燃料の拡大への資金を直ちに止め、パリ協定の1.5度目標に沿って化石燃料ファイナンスを段階的に打ち切る必要があります」と指摘した。

脱炭素 世界ワーストはJPモルガン・チェース

2020年も米国の銀行が二酸化炭素排出を牽引し、JPモルガン・チェース(米国)は依然として化石燃料への融資・引受で世界ワースト銀行だ。チェースは最近、自社ファイナンスをパリ協定と整合させると約束したが、無制限といっていいほど化石燃料事業に資金提供を続けている。 チェースは2016年から2020年の期間、化石燃料に約3,167億ドルの融資・引受を行ったが、この金額はワースト2位であるシティの金額を33%も上回っている。

今回の分析から得られたもう一つの特筆すべき結果は、BNPパリバ(フランス)が2020年のワースト4銀行にランクインしたことだ。BNPパリバは、2020年に化石燃料に408億ドルを資金提供し、2019年と比較して41%の大幅増加となった。つまり、昨年の化石燃料ファイナンス増加はBNPパリバの増額が理由であることを意味する。一方、BNPパリバは2017年に方針を制定し、シェールオイル・ガス、オイルサンド、液化天然ガスLNGなどへの融資制限を約束していた。

気候変動に関する銀行方針のコミットメントについても分析

本報告書はまた、気候変動に関する銀行方針のコミットメントについても分析している。分析の結果、その約束は十分に守られず、パリ協定の目標と全般的に整合していないことも明らかになった。

最近の注目を集めている方針は、達成年が遠く目標も曖昧な「2050年ネットゼロ」や、非在来型化石燃料への資金提供の制限に重点を置いている。また、現行の銀行方針は総じてプロジェクトファイナンスへの制限についてが最も厳しくなっているが、プロジェクトファイナンスの割合は本報告書で分析した化石燃料ファイナンス全体の5%にしかすぎないことも判明した。

なお、本報告書の執筆団体は、全銀行の資金提供の意思決定に「自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意」(FPIC)の権利を含め、先住民族の権利尊重および人権尊重が広範にわたって必須要件でなければならないという点で一致している。

執筆団体、賛同団体からのコメント

先住民族環境ネットワーク(IEN) 事務局長 ダラス・ゴールドトゥース

「世界の大手銀行は石油・ガス開発の拡大に融資していることから、大きな責任があることを理解しなければなりません。グリーンウォッシュ、排出量取引、実証されていない技術的解決策、そしてネットゼロのコミットメントは、人道上の罪、母なる地球への罪を免れることはできません。先住民族の土地は世界的に略奪され、固有の権利は侵害され、化石燃料の開発拡大に直面して生活の価値が大きく失われています。母なる地球の神聖さと領土を守るために、大手銀行は地球が破壊された費用を補償する責任があります」

気候ネットワーク 国際ディレクター 平田仁子

「今回の最新報告書で、やはりいまだに日本の金融機関が、多額の資金を化石燃料をはじめとする気候変動を加速させる事業や企業に資金提供し続けている事実が明らかになりました。パリ協定を支持し、事業を整合させるという責任銀行原則(PRB)への賛同はまだ形だけであって、実態が伴っていないことを浮き彫りにするものです。気候変動への対応は一刻の猶予も許されません。速やかな方針の抜本転換が必要です」

国際環境NGO 350.org日本支部キャンペーナー 渡辺瑛莉

「本調査により、日本のメガバンク3行が、いまだに世界の化石燃料部門に多額の資金提供を続け、パリ協定の目標と全く整合していないことが明らかとなりました。1.5度目標達成のためには、石炭のみならず、化石燃料部門全般で新規・拡大計画への資金提供を即時に停止し、コーポレートファイナンスも含めた包括的な1.5度目標に整合したフェーズアウトポリシーの制定が急務です。この点で世界の主要銀行と比べいまだに遅れをとっている邦銀は、早急な改善措置をとり、気候危機の加速ではなく、その解決に向けて責任を果たすべきです」

パリ協定以降のワースト12銀行

(化石燃料への融資・引受額、2016年〜2020年合計)

世界順位銀行合計(単位:米ドル)
1JPモルガン・チェース(米国)3,167億
2シティ(米国)2,375億
3ウェルズ・ファーゴ(米国)2,233億
4バンク・オブ・アメリカ(米国)1,985億
5ロイヤル・バンク・オブ・カナダ(RBC、カナダ)1,601億
6三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG、日本)1,477億
7バークレイズ(英国)1,449億
8みずほフィナンシャルグループ(日本)1,235億
9BNPパリバ(フランス)1,211億
10トロント・ドミニオン(TD、カナダ)1,208億
11スコシアバンク(カナダ)1,138億
12HSBC(英国)1,108億

 

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