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元WWF気候変動担当が問う。何が地球温暖化対策として重要か:原村からの便り

2021年11月17日

再エネ最大限導入には「地域住民の同意」が不可欠

「エネルギー基本計画」は再生可能エネルギーを主力電源化するため、「地域との共生」により「最大限導入」としている。同様に「地球温暖化対策計画」の方でも「住民や関係地方公共団体を含む地域の合意形成を図ることが重要」とある。しかしこれでは不十分で、「地域住民の同意が必要」「住民や関係地方公共団体を含む地域の同意」とするべきである。

太陽光発電の乱開発により、山林などが切り崩され、土砂災害の誘因となっていることから、地域の人々は太陽光発電へ嫌悪感を抱くようになってしまった。このままだと「最大限導入」は不可能である。実際、多くの自治体では「地域住民の同意」を事業者へ義務付ける条例を採択しており、設置自体を禁止している自治体も、2017年に比べ2倍以上になっている。

ため池の太陽光発電はやめるべき

「地球温暖化対策計画」では、再生可能エネルギーの導入拡大・活用促進の中で、ため池にも設置すべきであるとしている。ため池など水上に太陽光パネルを設置するのは危険であるので、対象から外すべきである。水上にパネルを設置しても、台風、大雨、大風などにより、パネルが風にあおられ、浮遊して重なってしまう危険性があるからだ。

実際2019年の台風15号により、千葉県市原市のため池に設置されていた「千葉・山倉水上メガソーラー発電所」は強風によりパネルが固定されていたアンカーから外れ、パネルが重なり合ったところへ、翌日の台風一過の晴天で発電を始めてしまい、結果火災が発生したのである。気候変動はこれからさらに過酷になるはずで、今よりも強大な台風、大雨、竜巻などが起きる可能性大のため、水上は避けるべきである。

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鮎川ゆりか
鮎川ゆりか

千葉商科大学名誉教授 CUCエネルギー株式会社 取締役 1971年上智大学外国語学部英語学科卒。1996年ハーバード大学院環境公共政策学修士修了。原子力資料情報室の国際担当(1988~1995年)。WWF(世界自然保護基金) 気候変動担当/特別顧問(1997~2008年)。国連気候変動枠組み条約国際交渉、国内政策、自然エネルギーの導入施策活動を展開。2008年G8サミットNGOフォーラム副代表。衆参両議院の環境委員会等で参考人意見陳述。環境省の中央環境審議会「施策総合企画小委員会」等委員、「グリーン電力認証機構」委員、千葉県市川市環境審議会会長を歴任。2010年4月~2018年3月まで千葉商科大学、政策情報学部教授。同大学にて2017年4月より学長プロジェクト「環境・エネルギー」リーダーとして「自然エネルギー100%大学」を推進し、電気の100%自然エネルギーは達成。2019年9月より原村の有志による「自立する美しい村研究会」代表。 『e-コンパクトシティが地球を救う』(日本評論社2012年)、『これからの環境エネルギー 未来は地域で完結する小規模分散型社会』(三和書籍 2015年)など著書多数。

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