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RE100の年次報告書「RE100 Annual Progress and Insights Report 2020 」によると、日本を含む10ヶ国は再エネ調達がもっとも困難な国だという。世界の参加企業の7割は、再エネ調達の動機として「コストが下がるから」と答えた。日本と世界で広がる再エネへのアクセス格差。果たして、日本は世界からどう見えているのか?
2020年12月16日、再生可能エネルギー100%電力による事業運営を目指す国際イニシアチブ・RE100の年次報告書「RE100 Annual Progress and Insights Report 2020」が発表された。国際環境NPOのThe Climate Groupが毎年発表している。一昨年(2019年)12月のレポートでは、参加企業219社のうちマイクロソフトなど34社がすでに再エネ100%を達成したと報告された。
2019年の状況をまとめた今回のレポートは、参加企業261社の回答をもとに作成された。全参加企業の消費電力量は278TWh/年を超える。参加企業はレポート編集後も急速に増え、編集が終わった2020年9月までに、さらに20社以上が加わった。その結果、トータルの消費電力量は300TWh/年を超えた。新型コロナによる影響があったものの、RE100の勢いは衰えることがない。
新規参加企業のうち42%がアジア太平洋地域からの参加だ。再エネ化の波は、すでに全世界に浸透している。今回のレポートにおいては、日本からの参加は39社で、アメリカの79社、イギリスの40社に続き世界で3番目に多い。
参加企業が再エネ100%を達成する目標年は、平均で2028年とされた。2030年までに達成できると見込む企業は全体の4分の3を占める。53社がすでに100%を達成し、65社は90%以上の再エネ調達を実現している。
RE100 Annual Progress and Insights Report 2020より
RE100参加企業を再エネ調達に駆り立てたトリガーは、何だったのか? この問いに対し、99%の企業が、温室効果ガスの削減とCSRと答えている。さらに、92%の企業が顧客満足の向上と回答した。一方、法的な要請や政策インセンティブと回答した企業は約半数にとどまり、企業の自主的な取組みであることが強調された。
注目したいのは、ほぼ70%の企業が再エネ調達の動機としてコスト削減と回答していることだ。気になる調達手段は、オンサイト太陽光発電を中心とする自社の発電事業がもっとも多く、ついでサプライヤーとの契約、エネルギー属性証明書、PPA(電力購入契約)と続く。調達された全再エネ電力量に占めるPPAの割合は、昨年の19%から26%に増加した。2015年は3.3%だったことを考えると、飛躍的な伸びだ。また、再エネ調達と同時にコスト削減にも成功したと回答した半数の企業のうち、3分の2がPPAによるものであった。
世界全体としては、RE100は順調に進んでいるように思われる。しかし今回、再エネ調達がもっとも困難な国として10ヶ国が挙げられた。残念なことに日本も含まれている。他には、アルゼンチン、オーストラリア、中国、インドネシア、ニュージーランド、ロシア、シンガポール、韓国、台湾。アルゼンチンを除く9ヶ国が、アジア・オセアニア地域だ。
もちろん、調達困難な理由は国ごとに異なる。日本市場に対する分析は「高コスト」「認証手段の不足により調達手段が限定されている」というものだ。シンガポール、台湾、オーストラリアについても同様に、コスト面が理由とされた。調達手段の少なさは、8ヶ国に当てはまる阻害要因だ。
RE100 Annual Progress and Insights Report 2020より
2020年9月、日本企業のRE100参加要件は「年間消費電力量10GWh以上」から「年間消費電力量50GWh以上」に引き上げられた。日本の再エネ普及状況を鑑みての措置だが、グローバルでの要件は「年間消費電力量100GWh以上」だ。日本における再エネ調達の難しさは、世界でも折り紙付きといえる。
RE100参加企業のうち、再エネ調達率が10%以下の企業の4分の1が日本企業だ。これについて、報告書では「野心は高いものの、市場の障壁が依然として日本での有意義な再エネ消費を妨げている」と言及されている。
RE100は、すべての政府に対し、企業が再エネを調達しやすい環境を整えるよう求めている。報告書では、次の6つの政策戦略が提示された。
厳しい評価を突きつけられた日本だが、民間ベースでの取組みは実を結びつつある。2020年、RE100参加企業の功績をたたえ、初の「RE100リーダーシップ・アワード」が実施された。9月にニューヨークで開催されたクライメイト・ウィークにおいて受賞企業が発表された。
アワードの6部門のうち、リコーが「協力的なリーダー企業」部門で最終選考にノミネートした。リコーといえば、日本で初めてRE100に参加したパイオニアだ。2017年4月にリコーが初のRE100参加を果たしたことで、その後の日本企業の参加は爆発的に増えた。2020年12月25日現在、46社にのぼる。リコーの受賞はかなわなかったものの、その功績は大きい。
ちなみに、RE100リーダーシップ・アワードの受賞企業はシュナイダーエレクトリック、ノボノルディスク、アップル、シャネル、セールスフォース、アイアン・マウンテンとTSMC(共同受賞)となった。
また、2020年12月8日にCDPが発表した2020年の気候変動Aリスト には日本企業53社が名を連ねている。マーケットが日本の再エネ普及をリードし、需要家として声をあげ続けることで、確実な変化が生まれてきている。日本の変革の追い風となるよう期待したい。
参照
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