第26回気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)が英国グラスゴーで10月31日に開幕した。COP26では、約200の国と地域の代表が集まり、CO2排出量を2030年までにどのように削減するのか、その方針を議論する。
前回、2019年12月にスペイン・マドリードで開催されたCOP25の最大のテーマは、各国別に提出されていた温室効果ガス削減目標を、さらに引き上げることに各国が合意できるか、決定文書にどれだけ強い表現を盛り込めるか、といったものだった。しかし結果的に、決定文書に盛り込まれた内容は弱いものとなり、各国の意見集約ができずに課題を残して閉幕した。
一方、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、今年8月、「地球温暖化の原因は、人間の活動だと初めて断定した上で、2020年までの10年間の世界の平均気温が、すでに1.09度上昇している」と発表。さらに、10月26日に国連環境計画(UNEP)が発表した年次報告書「排出量ギャップ」では、現状では地球の気温が2.7度上昇すると警告している。
世界の平均気温の上昇を1.5度に抑えるという目標を達成するには、2030年までに排出量を45%程度削減することが必要と言われているが、いまの目標では、逆に排出量は増加してしまう状況だという。
COP26では、各国政府はより野心的な削減公約を年内に作成することが求められている。一番の焦点は、各国が削減目標を引き上げることに対する国際的な合意が形成できるかということだ。気温の上昇を1.5度に抑えるには、2050年ごろまでに世界の温室効果ガスの排出量を実質ゼロにしなくてはならない。
この目標は、COP26の議長国・イギリスなどの欧州やアメリカ、日本などが掲げているが、2050年に至る前の各国の取り組みをどう具体的に進めるかが最大の課題となっている。
このため、2019年のCOP25で結論を得られず継続議題とされている『パリ協定第6条「市場メカニズム」に関するルール制定』や『「共通タイムフレーム」と呼ばれる自国が定める貢献(Nationally Determined Contribution: NDC)の目標期間を5年とするか10年とするか』などに合意できるかが焦点となる。また、国際排出枠取引の実施ルールに関しても最終交渉が開始。日本でも制度の活用方法や自主的炭素市場のルールに影響を与える可能性があるとして注目されている。
議長国イギリスやアメリカなど先進国は、気温上昇を1.5度に抑えることを共通目標とした上で、各国に2030年までのCO2削減目標の引き上げを求めたい考えだ。
バイデン米大統領は気候変動対策として今後10年で5,550億ドル(約63兆円)を投じることを10月28日に発表した。英政府は、環境向けの国際融資を10億ポンド(約1,550億円)増額する。
日本では10月31日に衆議院総選挙が終わり、岸田文雄首相はCOP26に出席するため予定通り11月2日にも英国を訪問する意向を表明した。岸田首相は「気候変動、地球温暖化問題。これは国際的な人類共通の課題であり、日本もしっかり責任を果たさなければならない」と言及。
各国が一致して、削減目標の引き上げに進んでいけるのか、COP26の議論に注目が集まる。
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