半導体不足が続いている。半導体不足の原因は先日解説したが、その影響は自動車メーカーに如実に響いており、トヨタは先般減産を発表。8月時点の生産計画に対し、9月追加分が約7万台、10月分が約33万台の減産となる。そうした中、トヨタをはじめ、日本の自動車メーカーが在庫を持たざる経営を改める動きが出てきた。これは日本の自動車産業、特にトヨタの経営スタイルを大きく転換させるものだ。半導体不足に起因するこの現象について、ゆーだいこと前田雄大が解説する。
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9月15日付の日経新聞は、トヨタや日産など自動車メーカーが在庫の調達戦略を見直すと報じた。しかし、事態をきちんと把握すると、実はトヨタに関しては「持たざる経営」の転換をもっと前から準備していたことがわかる。そこで今回は、「持たざる経営転機」報道について、別角度から分析していきたい。
まずは、そもそも在庫を持たざる経営とは何か、トヨタ生産方式を例に解説し、その上で、次の4つの論点を分析したい。
それでは、持たざる経営とは何か、トヨタ生産方式を例に解説したい。
戦後、特に1990年代ごろまで、日本の経営方式は世界の研究対象となっていた。なぜ、日本企業は強いのか、と注目を浴びたわけだが、その中で世界に名をとどろかせたのが、トヨタ生産方式やその中にあるカンバン方式だった。
筆者が2000年代後半にアメリカの国際関係の大学院に留学したときにも、まだ日本の経営方式についてレガシーが残っていたほどだ。経営概念としてインパクトのある手法である、ということだろう。
実は、このトヨタ生産方式やカンバン方式は、密接に、今回の持たざる経営に関係している。
トヨタの生産の特徴は、徹底的な無駄の排除と、製造工程の合理性を求めるもの。日本の他の企業をはじめ、多くの自動車企業がこれを見習っているが、トヨタのスキル、徹底ぶりは段違いであると言われている。
トヨタのこのシステムは、生産性をアップさせる自動化という考え方と、そして無駄をなくして生産効率をアップさせるジャストインタイム方式の2つの柱から成り立っている。
特に持たざる経営の特色を出しているのが、後者のジャストインタイム方式。「ジャストインタイム」とは、簡単に言えば、「必要なものを、必要なときに、必要なだけ」供給するための生産計画という考え方だ。ちなみに、このジャストインタイムと似ているものの、その実、大きく違うのが受注生産方式である。通称BTO。BTOは顧客の希望に合わせた製品を、顧客の注文を受けてから製造する方法のことで一見、合理的に見えるが、BTOで需要家が選べるオプションが多いと、それだけメーカー側はパーツの在庫を持たなくてはいけなくなる、という欠点がある。
一方、すべてのパーツを自社で在庫せず、必要なときに必要な分だけ準備する考え方がジャストインタイムだ。では、どんな仕組みなのか、簡単に見ていこう。
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