全労連に訊く、脱炭素でうまれる深刻な雇用問題 解決する術はあるか シリーズ:雇用とカーボンニュートラル(1)後編 | EnergyShift

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全労連に訊く、脱炭素でうまれる深刻な雇用問題 解決する術はあるか シリーズ:雇用とカーボンニュートラル(1)後編

全労連に訊く、脱炭素でうまれる深刻な雇用問題 解決する術はあるか シリーズ:雇用とカーボンニュートラル(1)後編

2021年12月17日

前編では、2050年のカーボンニュートラルの実現におけるエネルギー転換について労働者の権利を守る労働組合がどのような考えをもっているのか全国労働組合総連合(全労連)の、竹下武常任幹事と黒澤幸一事務局長に話をうかがった。後編では、日本が目指すべき働き方、そして全労連の今後の役割とは何か、語ってもらう。

カーボンニュートラル実現への雇用転換

―電力事業や鉄鋼業など、業界によってはエネルギー転換、つまりCO2を削減していく働きかけに対してネガティブな影響を受ける業種もあると思います。そういった業界に対しては、労働組合としてはどういう支援をしていくとお考えでしょうか。

黒澤氏:まず、原子力産業についてですが、確かに原発の立地県では、原発廃止に対して、雇用の確保はどうするのか、というような抵抗があり、さまざまなご意見があります。これに対して、国際再生可能エネルギー機関(IRENA)の調査報告が別の見方を示してくれます。世界全体で、再エネ・省エネ分野によって創出される年間の新規雇用数は、化石燃料・原子力分野における雇用数をはるかに超えているということです。

東北大学の明日香壽川教授による日本においてエネルギー転換で影響を受ける雇用(約20万人)に対し、温室効果ガス排出を60%削減するシナリオの場合、2030年までに年間254万人の雇用が10年間維持されるとしています。

エネルギー転換によって全体的に大幅な雇用増になるという試算は国際労働機関(ILO)なども公表しています。こうした点に着目し、計画性をもって取り組めば、経済の落ち込みや、雇用が失われることなくエネルギー転換していくことは十分可能だと考えています。

竹下氏:(特に原発における)定期点検作業など、被ばくが避けられないという労働環境の存在を認めてはいけないと思うのです。労働者の健康を守るのが我々の使命ですから、そういった点からも我々は原発を認めることはできないと思います。

―かつて、日本では石炭産業が縮小し、炭坑労働者が移行していった歴史があります。これを機に日本のエネルギーの主役は石炭から石油へと一気に切り替わっていったわけですが、そういった歴史というのは、原発問題にも活かされるものなのでしょうか。

竹下氏:国の役割という観点から言うと、活かされると思います。炭鉱閉鎖によって、20万人以上の雇用が失われましたが、このようなエネルギー転換に対して、日本は国からの補助金によって交付金を支給するなど、労働者の雇用も政府が援助することによって、労働、使用者の協力で乗り越えてきました。

黒澤氏 :そういうことを踏まえて、原発からエネルギー転換した際にすぐに回収できない問題については、移行期間の措置として国が援助をするべきだと思いますし、国の役割が大きいと思うのです。ところが、(自由民主党副総裁の)麻生太郎氏の「北海道のお米は温暖化でおいしくなった」発言から現れているように、政府・与党の気候危機に対する緊張感や危機感のなさは非常に残念です。

―国の話がでましたが、あらためて国(政府)や企業の経営者などへの要求はどのようなものでしょうか。

黒澤氏:経営者は、会社という存在が社会にとってどういうものであるべきかを正面から考えた事業をやるべきだと思います。そしてその中で、労働者が安全に、自分の仕事に誇りをもって働ける事業の展開をぜひやっていただきたいですね。お金儲けやコスト(削減)が先に立つような経営ではなく、社会に役に立つ、安全な事業をぜひどんどん展開していただきたいなと期待しています。このことは、エネルギー転換の中でも十分に可能だと思います。

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竹下武 黒澤幸一
竹下武 黒澤幸一

竹下 武(左) 1966年生まれ。生協労連出身。2018年から全労連常任幹事。 黒澤幸一(右) 1966年生まれ。日本医労連出身。2020年から全労連事務局長。

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