世界保険大手・チューリッヒは新型コロナと気候変動をどう捉えたか。世界経済フォーラム「グローバル・リスク・レポート2021」を読む | EnergyShift

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世界保険大手・チューリッヒは新型コロナと気候変動をどう捉えたか。世界経済フォーラム「グローバル・リスク・レポート2021」を読む

世界保険大手・チューリッヒは新型コロナと気候変動をどう捉えたか。世界経済フォーラム「グローバル・リスク・レポート2021」を読む

2021/03/01

世界経済フォーラムは、2006年から毎年「グローバル・リスク・レポート」を発行している。保険大手のチューリッヒ、Marsh McLennan、SKグループとともに独自調査によって、世界のさまざまなリスクを分析するものだ。新型コロナに翻弄される今、彼らは世界のリスクをどのように捉えなおしたのか。

世界経済フォーラムのレポートは保険の世界大手チューリッヒも参加したリスク分析

2021年1月19日、世界経済フォーラムは「The Global Risk Report 2021」を発表した。2006年から毎年公表されており、今年で16回目だ。

レポート編纂にあたっての戦略的パートナーは、保険の世界大手チューリッヒ・インシュアランス・グループ、アメリカ・ニューヨークを拠点とする保険大手のMarsh McLennanと韓国の石油・通信大手SKグループの名が挙げられている。

世界経済フォーラムのGlobal Shapersもこの調査に参加した。Global Shapersとは、世界の変化を促す若者によるコミュニティで、151ヶ国、約1万人のメンバーが活動している。今回のレポートには、彼らは回答者として参加している。

2021年のグローバル・リスクはコロナによって様変わり

我々がこれから直面する2021年のリスクについて、同レポートでは「新型コロナによってリスクがすっかり様変わりした」と評している。新たなリスクが出現する一方、既存のリスクも増大しているという。

長期的なリスクについては、可能性と影響の大きさという2つの観点からランキングされた。

まず、発生の可能性が高いリスクには次の7つが挙げられている(図上)。可能性が大きい順に「異常気象」「気候変動適応・対応の失敗」「人為的な環境災害」「感染症」「生物多様性の喪失」、そして「デジタルパワーの集中」「デジタル不平等」だ。


Source: World Economic Forum Global Risks Perception Survey 2020

図では、それぞれのリスクが色で分類されている。緑は環境リスク、赤は社会リスク、紫はテクノロジーのリスクだ。2021年の7つのリスクのうち、4つのリスクが環境に関するものだ。実は、「異常気象」「気候変動適応・対応の失敗」というトップ2の顔ぶれは2019年から不動で、気候変動リスクの高さを物語っている。

注目したいのは、デジタルに関するリスクが初登場していることだ。過去10年を振り返っても、デジタルという要素がリスク視されたことはなかった。新型コロナ・パンデミックが推し進めたデジタル化の負の側面に、スポットが当てられたといえる。

さて、影響の大きさの観点からランキングをみてみよう(図下)。インパクトの大きい順に「感染症」「気候変動適応・対応の失敗」「大量破壊兵器」「生物多様性の喪失」「天然資源危機」「人為的な環境災害」、最後が「生活・雇用の危機」となっている。新型コロナ・パンデミックのインパクトがいかに大きいかが見てとれる。

なお、中東呼吸器症候群(MERS)が流行した2015年は「感染症」が第2位だった。最後にランクインした「生活・雇用のリスク」は新型コロナが経済や雇用に与える影響を映し出している。新型コロナによってリスクの様相が変わったという全体像がみえてきた。

コロナと気候変動が突く社会の脆弱性

短期的なリスクでは「感染症」「生活・雇用のリスク」がもっとも懸念されている。Global Shapersらによるアンケートでも、約6割の回答者がこの認識だ。パンデミックによって失われた世界の雇用は、2020年の第2四半期だけで4億9,500万人分の職に相当するという。こうしたダメージを受けやすいのは、低所得者層や開発途上国といった特定の層だ。

この構図は、気候変動が途上国に与える影響とまったく同様ではないだろうか。主に先進国が排出したCO2によって大きな被害をこうむるのは途上国だ。例えば、気温が上がることによる海面上昇の影響を真っ先に受けるのは、島嶼国だろう。大量のCO2を排出した訳ではない彼らが、気候変動リスクの最前線に立たされる。

コロナが加速させるデジタルデバイド

同レポートでは、広がる格差を「持てる者(have)」「持たざる者(have-not)」とずばり表現した。ここでいう格差とは、経済的というよりデジタルへのアクセス格差の意味合いが強い。

ニューノーマルの到来によって社会は急速にデジタル化し、第四次産業革命とすら呼ばれている。日本のビジネスシーンでも、慣れないウェブ会議に慌てる場面が多くみられた。世界では、デジタルにアクセスできるか、できないかが命運を分かつようになるという。インターネット環境がなくデジタル化が進んでいないエリアでは、多くの機会が逸失されるリスクを指摘している。

レポートでは、特に若者の機会が制限されると懸念している。現在の気候変動リスクに加え、デジタルデバイドという二重のリスクが若者に与える影響は深刻なものだ。

さらに、パンデミック後の経済復興においても、ビジネスリスクは増大する恐れがあるという。加速するデジタル化によって、大企業と中小企業間のギャップが拡大し、それによって先進国の停滞と新興市場などのポテンシャルが失われる可能性がある。広がる格差による不平等が、長期にわたる持続的な開発を困難にするという。

逆に、今こそクリーン経済にシフトする好機

将来のリスクをこれほど並べられると、未来には暗雲しか立ち込めていないのではと考えてしまいそうだ。しかし、重要なのはこれからだ。今、各国政府はコロナからの復興の道を模索している。我々には、グリーン・リカバリーに舵を切り、スマートでクリーンな成長に対して投資するチャンスがまだ残されているという。

レポートは、新型コロナのリスク管理のために注力すべき4つの分野を指し示している。「制度的権限」「リスクファイナンス」「情報収集と共有」、そして「医療機器とワクチン」だ。これらすべてのリスクマネジメントを強化し、次のパンデミックに備えることが重要だと示唆している。

さらに、企業や国、国際社会全体が経済回復をなしえるために、ステークホルダーも交えたリスク分析のフレームワーク構築や正しい情報へのアクセス、官民の適切なコミュニケーションが欠かせないとした。

グローバル・リスク・レポート2021のダウンロードはこちら

山下幸恵
山下幸恵

九州大学文学部卒。九州電力グループ会社にて大型変圧器・住宅電化機器の販売に従事。新電力ベンチャーにおいて、ディマンドリスポンスやエネルギーソリューションの提案を行う。自治体および大手商社と地域新電力の立ち上げを主管。福岡市にて、気候変動や地球温暖化、省エネについての市民向けセミナーを実施。2019年よりエネルギーライターとして活躍中。

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