進撃の巨人は全34巻に渡るが、22巻あたりから、話をパラディ島の壁の中の話だけでなく、マーレ国側の事情に比重が移っていく。
その中で語られるのは、残酷な世界となってしまった進撃の巨人の世界における、その(マーレ国にとっての)正しい歴史とあゆみだ。
まず、不平等と言えば、マーレ国では、パラディ島の壁の中に住む人たちと同一の人種が、特別な区に集められており、世界中から忌み嫌われる存在として扱われているのだ。
ちなみにその忌み嫌われる人種こそ、前述したがエルディア人という人種だ。エルディア人とは、その昔、ユミルという少女が大地の悪魔と契約することにより巨人の力を手に入れ(巨人になる力のこと)、大帝国となり、巨人の圧倒的パワーで世界を征服してきた人種なのだ。
進撃の巨人21巻第86話「あの日」より/©Hajime Isayama2010
ところがさまざまな政治的かつ戦争の駆け引きにより、エルディア帝国は崩壊し、エルディア人は、フリッツ王率いる壁の中の人々、そしてマーレに残されたエルディア人とに分かれてしまって今に至っている。
作品中、マーレにおいて、エルディア人の忌み嫌われ方が半端なく、ひたすら残酷で不平等でしかないのだが、マーレに生きるエルディア人は、健気にも名誉マーレ人になれることを励みに生活し、社会に貢献しようと必死なのだ。
ただマーレ人に管理されているとはいえ、エルディア人は、あることにより、本人が望もうと望むまいと、巨人化し、凶暴な巨人に一瞬でなってしまう、いまも危険な存在でもある。
つまり、マーレ人とそのほかの世界の人々にとって、エルディア人は畏怖する存在であり、滅亡させたい種族ではあるのだが、その兵器性に頼らざるをえないマーレ人にとっては同時に、SDGsでいう17の「パートナーシップで目標を達成しよう」でもあるので、そう簡単に抹殺するのもできないという微妙な関係なのだ。なにしろマーレ国は資源不足から、世界のいたるところで紛争を起こしている真っ最中でもあるのだ。
つまり、進撃の巨人の世界における、壁の中の人たちの恐怖の対象である巨人こそ、彼ら壁の中の人々の同族種だという悲劇であり、エルディア人同士の殺し合いだったということになる。マーレ国の勝手な理由での、巨人を「つくる責任、つかう責任」で間違いを生み、こじらせてきた結果が、この先、さらなる全世界を巻き込むドラマに拡大していくわけだが、なぜこの悲劇が起きたのか、誰が意図したのか、そのあたりの本質的な謎解きはぜひアニメ(アニメの「The Final season」が、2022年1月9日日曜日24時5分よりNHK総合にて放送開始予定)やコミックなどの原作を読んでほしいと思う。
進撃の巨人17巻第69話「友人」より/©Hajime Isayama2010
そのなかで主人公たち若者が目指すSDGsな生き方とその成長を感じることが、きっとできるはずだ。
以上サワディ・ノダでした。
関連記事
気候変動の最新記事