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英ボリス・ジョンソン首相、2030年までに温室効果ガス排出量68%削減を発表

英ボリス・ジョンソン首相、2030年までに温室効果ガス排出量68%削減を発表

2020年12月14日

英国のボリス・ジョンソン首相は、2020年12月3日、2050年までにネット・ゼロカーボン(脱炭素)を実現するため、2030年までに温室効果ガス排出量を68%削減する野心的な新たな目標を発表した。68%削減は世界で最も高い水準であり、どの主要先進国よりも早いペースで削減を目指す。

世界で最も高い削減水準

英国のボリス・ジョンソン首相は、2020年12月3日(現地時間)、2050年までにネット・ゼロカーボンを実現するために、2030年までに温室効果ガス(GHG)排出量を少なくとも1990年比で、68%削減する野心的な新たな削減目標(NDC)を発表した。

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)による「1.5℃特別報告書」をきっかけとして、世界中で1.5℃目標達成に向けた機運が高まる中、英国は主要先進国の中で2050年までにGHGのネット・ゼロを初めて法制化するなど、気候変動対策への取り組みにおいてリーダーシップを発揮してきた。

今回、これまで53%削減だったNDC目標を68%へと大幅に引き上げたことで、排出削減量は世界で最も高い水準となり、どの主要先進国よりも早いペースで削減を目指すという。ジョンソン首相は、野心的なNDCを発表することで、2021年グラスゴーで開催されるCOP26(気候変動枠組み条約第26回締約国会議)に向けて、主導的な役割を果たしたい狙いもある。

12月12日にはthe Climate Ambitionサミットを共催

今回のNDC見直しは、パリ協定の採択から5周年を記念して、2020年12月12日に開催されたthe Climate Ambitionサミットを英国が共催するのに先立って行われたものである。

このサミットは、国連、英国、フランス、そしてチリ、イタリアとの協力のもと開催され、「グラスゴーへのスプリント」として位置づけられている。

来年(2021年)11月グラスゴーで開催されるCOP26に向けて、世界各国に対し、より野心的なNDCや長期的なネット・ゼロエミッション戦略、最も脆弱な人々を支援するための気候ファイナンスのコミットメントなどを求めていくという。

68%削減を達成するシナリオとは?

68%削減を達成するための英国のシナリオは、11月に発表した2030年までに最大25万人の雇用を創出・支援する「グリーン産業革命」に向けた、ジョンソン首相の野心的な10項目の計画が根幹をなす。

この10項目の計画は、40GWの導入を目指す洋上風力や5GW規模の低炭素水素発電の開発、次世代原子炉のほか、ガソリン・ディーゼル車の新車販売の禁止などで構成されている。野心的な政策と120億ポンド(約1兆6,560億円)の投資によって、400億ポンド(約5.6兆円)以上の民間投資を促す可能性があるという。国そして民間投資の活性化により、エネルギーや輸送、建築部門などの排出量削減を大きく前進させる見込みだ。

今後数十年の間に排出量を削減するための取るべき行動についても、ロードマップを提供し、世界中の企業、機関、国から同等レベルの目標達成を奨励していく。

ジョンソン首相は、次のように述べている。

「企業、学識経験者、NGO団体、地域社会が共通の目標に向かって団結し、気候変動への取り組みをさらに加速させることで、排出量を削減し、その過程で何十万人もの雇用を創出できることを証明してみせます。

今日、どの経済大国よりも早く2030年までに排出量を削減するという野心的な新しい目標を掲げ、主導的な役割を果たすとともに、10項目の計画がその達成に向けた道筋を示してくれています。

これは世界的な取り組みであり、英国はthe Climate Ambitionサミットの一環として、世界の指導者たちに、排出量を削減し、ネット・ゼロ目標を設定するための野心的な計画を推進するよう求めていきます」。

野心的なNDCにわく英国産業界

今回の野心的なNDC発表に際し、政府、産業界から多くのコメントが寄せられた。主要な発言を紹介する。

ビジネス兼エネルギー大臣でありCOP26議長のAlok Sharma氏。
「気候変動への取り組みは、私たちの一生のうちで最も緊急を要する共通の努力の一つであり、壊滅的な地球温暖化を防ぐために、すべての国が大胆な行動を求められています。英国の新しい排出量目標は世界で最も高い水準であり、地球が直面している課題の緊急性と規模を反映しています。COP26に先駆け開催されるClimate Ambitionサミットに他の国々も私たちとともに参加し、NDCを引き上げてくれることを期待しています」。

2050年までにネット・ゼロエミッションを目指す、The Prince of Wales’s Corporate Leaders Groupの共同議長を務めるPeter Simpson氏。
「ネット・ゼロへのレースにおいて、信頼性のある計画は重要であり、本日の発表を歓迎します。企業が国の野心と世界のニーズの両方をサポートするためにステップアップや投資、行動を起こすことがこれほど重要な時期は他にありません。気候変動は私たちを待ってはくれず、行動を起こすのは今なのです」。

NatWest GroupのチーフエグゼクティブオフィサーであるAlison Rose氏。
「NatWest Groupは政府がグリーン投資と成長を実現できるよう支援することを約束します。英国の企業顧客向け主要銀行として、英国全土の人々が気候変動に取り組み、温室効果ガスの排出量を削減できるよう主導する重要な責任を負っており、本日の政府の発表を歓迎します」。

北欧最大のエネルギー企業であるEquinorのAnders Opedal CEO。
「Equinorは2050年までにネット・ゼロ企業になることを目指しており、英国政府や社会とともに協力し合い、低炭素の未来に向けソリューションを開発させていく方針です。Equinorは現在、英国での技術開発や洋上風力発電、水素および二酸化炭素の回収・貯蔵プロジェクトに積極的に携わっています。私たちは今後のエキサイティングな発表を楽しみにしています」。

SSE(Scottish and Southern Energy)のチーフエグゼクティブであるAlistair Phillips-Davies氏。
「大胆で断固とした政策決定は、ネット・ゼロ目標を実現し、気候変動への取り組みやコロナ危機からのグリーンリカバリーを促進するために必要な投資を誘導するでしょう。この目標は、SSEのような企業が乗り越えて実現すべき、明確で長期的なシグナルを提供してくれます。Dogger Bankでの世界最大の洋上風力発電所の建設を含む75億ポンドの低炭素投資プログラムにおいて、私たちの役割を果たし、COP26に向けて英国の国際的なリーダーシップを実証するためにも、二酸化炭素の回収・貯蔵技術の開発から、急増する再生可能エネルギー、電気自動車、ヒートポンプに対応するために必要なネットワークインフラの構築に至るまで、さらなる努力をはたしたい」。

メディア大手、SkyのグループチーフエグゼクティブであるJeremy Darroch氏。
「気候危機の緊急性を私たちすべての心にとどめなければなりません。この危機にどう対応するかが私たちの時代を決定づけることになり、政府が大胆で野心的な目標を設定したのは正しいことだと思います。私たちにはこれを正すチャンスが一度しかなく、COP26に向けて政府と協力し、積極的にソリューションの一部を担い、持続可能な方法での復興を支援したいと考えています」。

ScottishPowerのCEOであるKeith Anderson氏。
「この発表は、ネット・ゼロ実現へのレースを大幅に加速させるものであり、よりグリーンな環境を構築し、気候危機への対応をリードするというScottishPower独自の目標と一致しています。
当社は、今後5年間で100億ポンドを投資し、再生可能エネルギー発電容量を倍増させ、輸送と熱の分野で脱炭素化を支援するために必要なネットワークインフラを整備し、同時に100%クリーンな電力を顧客に提供することを目指します。これらはすべて、雇用創出やサプライチェーンの強化、エネルギーセクター全体のイノベーションを促進するものになります。この野心的な新しい目標は、私たちすべてをより良い未来へより早く導いてくれることでしょう」。

英国政府は、最後に「COP26の議長国として、すべてのUNFCCC締約国と協力して、COP26において市場メカニズムに関するルールに合意することを約束する」と結んだ。

英国プレスリリース「UK sets ambitious new climate target ahead of UN Summit」2020.12.3
the Climate Ambition

(Text:藤村朋弘・紺野真冬芽)

藤村朋弘
藤村朋弘

2009年より太陽光発電の取材活動に携わり、 その後、日本の電力システム改革や再生可能エネルギー全般まで、取材活動をひろげている。

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