"持続可能な経営"と利益率を両立、トップの誇りが実行を後押し 日本ロレアル | EnergyShift

日本へGX(グリーントランスフォーメーション)

EnergyShift(エナジーシフト)EnergyShift(エナジーシフト)

"持続可能な経営"と利益率を両立、トップの誇りが実行を後押し 日本ロレアル

"持続可能な経営"と利益率を両立、トップの誇りが実行を後押し 日本ロレアル

EnergyShift編集部
2020/12/16

気候変動イノベーション 動き出した企業(2)日本ロレアル・後編

ヨーロッパを拠点とする世界的化粧品メーカーとして、 "持続可能な経営"へビジネスモデル変革を含む大胆な目標を打ち出したロレアル(本社・パリ)。しかし、その戦略を、各国の現場の隅々にまで落とし込むのは簡単ではない。高い目標を実行するために、どう取り組むのか。日本ロレアルのヴァイスプレジデントでコーポレートコミュニケーション本部長の楠田倫子さんに具体的な取り組みや目標の立て方、組織の作り方、推進に欠かせないポイントなどを聞いた。

(前編はこちら)

22年に全拠点でカーボンニュートラル達成へ(具体的な取り組み)

― ロレアルは今春、「プラネタリー・バウンダリー(地球の限界)」を尊重すべく、ビジネスを変革することを宣言。2030年に向けたサステイナビリティ目標を掲げました。「2025年までに再エネ100%採用」「30年までに包装をリサイクル又はバイオベース100%に」「温室効果ガスの削減を16年比50%」など、高い目標ですが、どうやって実現していくのでしょうか。

楠田倫子さん:具体的な目標として、2025年までに全世界で再生可能エネルギーを100%使用し、全拠点をカーボンニュートラルにすることを掲げています。


ロレアルは2030年に向けた目標を定義。カーボンニュートラルの達成、温室効果ガスの削減、プラスチックパッケージの切り替えなどについて、数値で示した (画像提供:ロレアル)

実は、日本国内ではすでに使用するエネルギーは100%再生可能エネルギーになっています。復興支援で縁があった石巻市の石巻合板工業のバイオマス発電所からグリーン電力を調達し、国内拠点の年間の消費電力約550万kWhをまかなっています。

さらに、国内工場に残る旧式ボイラー1基を2022年にスチームボイラーに置き換える予定で、それが完了することで、100%カーボンニュートラルも達成する予定です。グリーン電力は割高ですし、ボイラーには投資が必要ですが、経営判断で進めています。

利益率も改善、コスト削減に加えイノベーションの芽も

― 取り組みが進まない理由には、企業にとって、サステイナブル=コスト増のイメージもあるのではないでしょうか。

楠田さん:よく、サステイナビリティは余計なコストがかかるよね、と言われますが、ロレアルでは2013年から取り組んで、利益率が減少した年は一年もありません。むしろ、結果として、新たなビジネス機会が創出できたり、無駄が削減できたりしていると思います。

たとえば、製品輸送を飛行機から船便に変えたり、出張費の削減をしたりすることが、コスト削減につながっています。(前編で紹介した)キールズの例は、新しい顧客獲得にもつながっていると思います。小さなことの積み重ねですが、むしろ、生産性が上がる場合もあります。

最近では、水を使わなくても洗い流せるヘアケア製品の開発の延長線上で、水の使用量が少なくて済むシャワーヘッドをスイスのスタートアップ企業と共同開発しました。取引先の美容室にそのシャワーヘッドを導入してもらい、専用のシャンプーを使ってもらうことで、美容室から生まれる環境負荷を減らす取り組みです。これはまさに、新しいビジネス、イノベーション。技術的開発は終わっていて、今後、ビジネスとして展開していく予定です。

経営トップの決断と、現場の地道な取り組みが両輪

― 高い目標を掲げ、各国で実行するのは簡単ではないと思います。コミットメントを実現する仕組みは、どうしているのでしょうか。

楠田さん:2030年、2025年までに何をするか、各国ごとに数値目標が示されています。それにのっとって具体的なアクションへの落とし込みを進めています。従来は、年度末に実績報告をするだけでした。あらかじめ、3年、5年で、目標に対して何パーセント削減するか具体的アクションまで示すのは、今回が初めてです。

従来の事業部ごとのアクションプランとも異なります。サステイナビリティに関するコミットメントは包括的なテーマなので、ひとつの部門がやれば済む問題ではなく、部門横断でプランニングしていく必要があります。そこが難しさです。

このため、日本支社長の直轄でタスクフォースを立ち上げました。各ファンクションの部長クラスにサステイナビリティのリーダーとして参加してもらい、月1回会議を開いています。物流、研究所などを含めメンバーは16名。現場にも近く、責任ある立場で発言ができる人たちです。

支社長の直接的な関与とコミットメントが本社から求められているので、支社長みずから会議に出席しています。

― ロレアルがここまで徹底してコミットメントするのは、なぜでしょうか。

楠田さん:日本ではマーケット首位のメーカーではありませんが、世界ナンバーワンの化粧品メーカーであるという誇りが大きいと思います。社会・地球への影響が大きいリーダーとして、責任ある行動を我々がしていかなければ、と考えているのです。

また、消費者や投資家の期待も変わってきていると感じます。経済的合理性からも、責任ある行動を求められるという点でも、流れが変わってきているのではないでしょうか。

 (前編はこちら)

日本ロレアル
世界最大の化粧品会社ロレアルグループの日本法人。マーケティングや販売などを行うオフィス機能だけでなく、研究開発や製造工場も有する、グループ内でも有数の戦略的拠点。ロレアルグループは、国際NGO「CDP」が毎年行っている、企業活動の環境への影響評価で、「気候変動」「森林コモディティ」「水セキュリティ」の3つの分野でいずれも最高評価となる「トリプルA」を獲得。4年連続の「トリプルA」は世界で唯一。

 

楠田倫子さん
日本ロレアル ヴァイスプレジデント コーポレートコミュニケーション本部長
1989年上智大学法学部国際関係法学科を卒業後、富士銀行(現みずほ銀行)に総合職として入行。1992年に同行を退職、コロンビア大学ビジネススクールへ留学。MBAを取得後1994年に帰国。米系消費財メーカー(ワーナー・ランバート、現ファイザー)を経て1999年に日本ロレアル入社。シュウ ウエムラ、ヘレナ・ルビンスタインなどロレアルグループ内のブランドの事業部長職を歴任。2015年にアクティブ コスメティックス事業部事業部長に就任し、2020年1月1日より現職。

(ヘッダー写真:ロレアルとプロキシマス社のパートナーシップにより、電動バイクとカーゴで製品を配達 提供:ロレアル)

(Interview & Text:山田亜紀子)

この記事を読んだ方がよく読んでいる記事


気候変動の最新記事


メールマガジン

アクセスランキング

日別

週別

月別

新着記事

最近のコメント

コメントがありません

お知らせ
エナシフTVとは
無料会員登録