2021年12月22日、電力広域的運営推進機関(OCCTO)は、2025年度を対象とした容量市場メインオークションの約定結果を公表した。前回の約定価格は需要曲線の上限とほぼ一致する1万4,137円/kWとなり、物議をかもした。これに対し、今回はその半分以下の約定価格となった。容量負担金を支払う小売電気事業者、とりわけ新電力はほっとしただろう。しかし、本当の問題はまだ残っている。
容量市場とは、電力の供給力を確保するためのしくみだ。
太陽光発電や風力発電などの増加によって、火力発電の設備稼働率が下がることになる。その結果、発電所の採算が悪化するため、新設が進まないだけではなく、休廃止が進むことになる。そのため、必要なときに十分な発電所がないという事態が生じかねない。そのため、発電所に対して発電容量(kW)に応じた金額を提供するというものが、容量市場である。米国北東部や英国の電力市場ではすでに導入されており、日本では2020年度からスタートした。
電力広域的運営推進機関(OCCTO)が4年後の供給力を対象に、毎年オークションを実施することになっており、今回の対象年度は2025年度だ。
2020年に行われた初めてのオークションでは、約定価格が1万4,137円/kW、約定総額は約1兆6,000億円となり、これは設定された需要曲線の上限に近い価格だった。そのため、関西電力など旧一般電気事業者の意図的な応札価格設定が疑われた(検証ではそうした事実はなかったとされている)。また、退出すべき石炭火力発電への補助になることなど、さまざまな問題が指摘されており、制度を改善してのオークションとなった。
今回の約定価格はどうなったかというと、北海道と九州を除くエリアでは3,495円/kWh、北海道と九州は5,242円/kW、約定総額は5,000億円強となり、大幅に下がったことになる。
図1 2021年度実施 容量市場メインオークションの供給曲線(スムージング処理後)
※2 発動指令電源の応札容量については、メインオークションにおける調達上限容量を超過した非落札電源の容量は除外している。
※3 応札後に織込む石炭とバイオマスの混焼を行うFIT電源の供給力を含む。
※4 供給曲線に織込む各容量については「<参考>FIT電源等の期待容量等について(p.13)を参照。
出所:電力広域的運営推進機関
図1は、メインオークションの供給曲線を示したものだ。ほとんどの電源は0円で応札しており、約定価格を決めるのは、容量市場での収入を必要とする電源、すなわち新設や休廃止の可能性を持った電源ということになる。こうした電源の応札価格がおよそ半分になったことが、約定価格の下落の要因の1つだろう。また、容量市場に応札しないFIT(固定価格買取制度)電源である再エネの期待容量が前年よりも4割程度増えていることも、引き下げにつながっている。そのため、約定総容量はわずかに減少することとなった。
北海道と九州では約定価格が他エリアの1.5倍となっている。これはエリア内では供給が不足し、そのままでは約定価格が高くなってしまうが、隣接するエリアからの供給を織り込むことで引き下げた結果ということになる。
OCCTOの供給計画によると、2025年度の最大電力は1億6,000万kW未満であり、これに対してグラフ上では1億8,000万kW近い電源が確保されたことになる。実際には他の電源も含め、調達量は1億8,740万kWだ。
解決したように見える容量市場問題だが、あのビジネスに影響が・・・次ページ
エネルギーの最新記事