脱炭素の切り札として、世界中が次世代エネルギーに位置づける水素。燃やしても二酸化炭素(CO2)を排出しない水素は、発電のエネルギー源として、あるいは自動車などの輸送の動力源として、さらに製鉄や化学部門の脱炭素化など、さまざまな分野での活用が想定され、2050年には市場規模は280兆円を超えるとされている。水素技術で世界をリードする日本は市場を席巻できるのか。水素まとめ最後となる今回は、業界マップ(カオスマップ)から成長企業を占う。
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水素のサプライチェーン(供給網)は川上(水素製造)から川下(水素利用)まで、「つくる」「はこぶ」「つかう」という3つの領域にわかれる。それぞれの分野に多くの企業が携わるうえ、関連産業の裾野が広く、水素関連の市場規模は2050年に世界で2.5兆ドル(約284兆円)に達し、3,000万人の雇用を生む(Hydrogen Council試算)との予測がある。
日本政府も現在約200トン(2017年時点)の水素導入量を2030年に300万トン、2050年には2,000万トンまで拡大させる目標を掲げている。とはいえ、大量の水素を国内だけで調達するのは難しい。目標達成に向け、政府は豪州や中東、米国などの資源国から安価な水素を大量調達するとともに、水素関連技術で世界をリードする日本の技術とノウハウで、LNG(液化天然ガス)と同様のサプライチェーンの構築を目指している。
多くの産業にまたがる水素のサプライチェーン、まずはその全体像を俯瞰してみてみよう。
経済産業省の資料などをもとに編集部作成(クリックすると別ウィンドウで開きます)
水素は、水はもちろん、石炭やガスなど多様な資源からつくることができる。日本政府は、石炭やガス産出国で製造した大量の水素を輸送して、2050年の脱炭素を目指している。その導入目標は次のとおり、野心的な数値が並ぶ。
経済産業省の資料などをもとに編集部作成(クリックすると別ウィンドウで開きます)
政府が掲げた水素戦略に呼応し、総合商社や石油元売り、海運、重工、造船、自動車、鉄鋼、電力、都市ガスなど、さまざまな企業が「つくる」「はこぶ」「つかう」の3つの領域で取り組みを加速させている。その数50社以上。そこで、主要プレイヤーをまとめた水素カオスマップを作成した。この中から世界を席巻する企業が生まれてくるかもしれない。
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