鉄鋼製品も脱炭素 2050年までに使用鋼材すべてのCO2ゼロを目指す、新たな国際イニシアチブ「Steel Zero」が発足 | EnergyShift

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鉄鋼製品も脱炭素 2050年までに使用鋼材すべてのCO2ゼロを目指す、新たな国際イニシアチブ「Steel Zero」が発足

鉄鋼製品も脱炭素 2050年までに使用鋼材すべてのCO2ゼロを目指す、新たな国際イニシアチブ「Steel Zero」が発足

2020年12月21日

RE100などを主催するイギリスのNGO「The Climate Group」などは2020年12月1日、2050年までに発電所や建築物などで使用するすべての鉄鋼のCO2排出ゼロを目指す、新たな国際イニシアチブ「Steel Zero」を発足させた。洋上風力発電の世界最大手オーステッドなど8社が加盟し、鉄鋼製品の脱炭素化を促す。

鉄鋼セクターからのCO2排出量は世界の7〜9%を占める

RE100やEV100、EP100を主催するイギリスのNGO「The Climate Group」と、鉄鋼の持続可能性を目指し、責任ある調達基準の策定などを行う「Responsible Steel」は2020年12月1日、2050年までに使用するすべての鉄鋼をCO2排出ゼロにする、新たな国際企業イニシアチブ「Steel Zero」を発足させた。洋上風力発電の世界最大手であるオーステッドなど8社が加盟し、発電所やビル、橋梁などで使用する鉄鋼製品すべての脱炭素化を推進することで、CO2排出ゼロ鉄鋼に対する需要を呼び起こしていく。

鉄鋼は建物から橋梁、自動車から風力タービン、そして家電まで、世界で最も広く使用されている材料だ。Steel Zeroによれば、その売上高は世界で2兆ドル(約208兆円)にのぼり、鉄鋼セクターから排出されるCO2は世界の7〜9%を占めているという。しかも、鉄鋼需要は2050年までにおよそ40%上昇すると予測されており、このままではCO2排出量の増加は避けられない。

しかし、Steel Zeroは「2050年までに鉄鋼セクターのネット・ゼロを可能にする技術はすでに存在している」と指摘する。そして「鉄鋼セクターの脱炭素化を可能にするのは、企業行動、政策、投資活動をセットにしたソリューションの迅速な設計と実装である」とし、「ネット・ゼロスチールに対する企業や公共部門の需要喚起は、技術革新やリサイクル鋼や鉄鋼製品の再利用につながり、非常に重要な役割を果たす」と述べる。

「脱炭素経済に向けた重要な岐路において、ネット・ゼロスチールに対する需要を喚起する「バイヤーコミュニティ」を拡大する必要がある」と設立背景を語る。

Responsible SteelのエグゼクティブディレクターであるAlison Lucas氏は、「CDPの直近の報告によると、鉄鋼会社の潜在的価値の14%が、環境への影響を軽減できなければリスクにさらされ、投資家は鉄鋼業界が自らの将来を守るために、今行動する必要があると懸念を表明しています。脱炭素社会への移行において、経済的な競争力を維持するためには、サプライチェーン全体で変化する必要があります」と述べる。

The Climate Group "SteelZero" Video

オーステッドなど8社がネット・ゼロスチールに対する需要シグナルを発信

Steel Zeroは、鉄鋼業界や投資家、各国政府に対し、CO2排出ゼロの鉄鋼製品に対する需要の高まりという強力なシグナルを発信し続けることで、ネット・ゼロスチールへ向けた投資など持続可能な生産と調達に向けた転換を加速させていく。

発足とともに加盟した企業は次の8社である。

  • BHC Ltd−イギリスの大手構造用鋼材製造および建設会社
  • Bourne Group Ltd−イギリスの大手建設鉄鋼会社
  • Grosvenor Britain&Ireland−世界的な不動産投資会社およびデベロッパー
  • Lendlease−多国籍の建設、不動産、インフラストラクチャー企業
  • Mace Group−グローバルコンサルタント、建設会社
  • Multiplex Construction Europe−世界的な建設請負会社
  • オーステッド−洋上風力発電の世界的リーダー
  • WSP UK−エンジニアリングサービスなどのコンサルティング会社

加盟企業によるコミットメントは以下の2つである。

長期コミットメント
2050年までに調達・指定・在庫において使用する鉄鋼の100%をネット・ゼロスチールにする

中間コミットメント
2030年までに、調達・指定・在庫において使用する鉄鋼の50%をネット・ゼロスチールにする

鉄鋼セクターの脱炭素に向け、世界経済フォーラムなどが主導するネット・ゼロスチールイニシアティブや、世界鉄鋼協会と鉄鋼メーカーなどが設立したネット・ゼロスチールパスウェイ・メソドロジープロジェクト、世界グリーンビルディング協議会が主導するネット・ゼロ推進プロジェクト、C40都市気候リーダーシップグループが主導するクリーン建設フォーラム、CDPとフランス環境エネルギー庁(ADEME)が主導する鉄鋼セクターのためのThe Act(Assessing Low-Carbon Transition:低炭素移行評価)イニシアティブとも連携を図っていく。

鉄鋼世界大手のミタル、カーボンニュートラルを宣言

ネット・ゼロスチールに向けたアクションが高まる中、鉄鋼メーカーも脱炭素に舵を切り始めている。

鉄鋼世界大手のアルセロール・ミタルは2020年9月30日、2050年までにカーボンニュートラルを実現すると発表。石炭の代わりに水素を使って鉄を還元する水素製鉄法を開発し、さらに製鉄過程で排出するCO2を回収・貯留するCCUSなどの技術開発によって、実現する計画だ。

JFEグループも9月15日、2030年度までにCO2排出量を20%以上削減し、2050年以降のできるだけ早い時期に、カーボンニュートラルを目指すと発表した

日本最大の鉄鋼メーカー、日本製鉄の橋本英二社長は、経済産業省が11月17日に開催した総合資源エネルギー調査会 基本政策分科会において、「中国を中心とする海外競合メーカーに対する競争力回復の観点からも、ゼロカーボンスチールは経営の最重要テーマだ」と発言。産業競争力を強化するうえでも、鉄鋼生産における脱炭素化は避けられない情勢となっている。

参照
The Climate Group "SteelZero"
The Climate Group
Responsible Steel
The Climate Group "Information on the commitment framework for SteelZero"
The Climate Group "New SteelZero initiative receives backing from major businesses, ramping up demand for clean steelmaking" 2020.12.1
ArcelorMittal "ArcelorMittal sets 2050 group carbon emissions target of net zero"2020.9.30
JFEホールディングス株式会社 "JFEグループのCO2排出量削減目標について" 2020.9.15

(Text:藤村朋弘・紺野真冬芽)

藤村朋弘
藤村朋弘

2009年より太陽光発電の取材活動に携わり、 その後、日本の電力システム改革や再生可能エネルギー全般まで、取材活動をひろげている。

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