これからの地域エネルギー事業のヒント3 地域エネルギー事業の成立要件:地域密着型エネルギー事業者の地域エネルギー論 | EnergyShift編集部

EnergyShift(エナジーシフト)EnergyShift(エナジーシフト)

これからの地域エネルギー事業のヒント3 地域エネルギー事業の成立要件:地域密着型エネルギー事業者の地域エネルギー論

これからの地域エネルギー事業のヒント3 地域エネルギー事業の成立要件:地域密着型エネルギー事業者の地域エネルギー論

EnergyShift編集部
2020/06/23
ブックマーク
EnergyShift編集部
2020/06/23
ブックマーク

新型コロナウイルスの感染拡大は、改めて「地域」ということを意識させた。では、その「地域」でエネルギー事業を展開するためには、どのような要件があるのだろうか。地域の都市ガス事業にもかかわってきた、エネルギー事業コンサルタントの角田憲司氏が、あらためて地域のエネルギー事業が成立するための条件を示す。

コロナ問題で意識された「地域」概念

緊急事態宣言やその解除などの新型コロナウイルスの感染拡大防止対策は、基本的に都道府県を軸に行われている。それにより、たとえば図のような都道府県別の日本地図は大量にメディアに露出し、誰もが自分が住んでいる地域というものを知らず知らずに意識したはずである。

また、コロナのような感染症は東京をはじめとする大都市に人口が集中することで脅威度が上がることを皆が実感したことで、結果として「密ではない」地方圏に住むことの価値を高めたともいえる。

2020年5月15日時点での緊急事態宣言対象地域

「ここで、何が」 VS 「何を、どこで」

一般に、「地域」や「地方」という言葉は「大都市」や「中央」の対概念として用いられるが、およそ日本に「地域」という名前の「地域」はない。「地域」は抽象名詞であり、どの地域にも具体的な地名がついている。

同様に、我々のようなガス事業者にとっての地域にも固有の地名があり、そこで手がけるガス事業は「その地でしか行えない事業」となる。
さらに「その地でしか行えない」という点では基礎自治体(市町村)の仕事も同じであり、市町村の行政サービスも都市ガス事業も、「地域密着型」よりも「土着型」という表現の方がふさわしい。

こうした「土着型」のプレイヤーは、何をやるにしても「ここで何ができるか」と考え、「ここでできること」しかできない。その土着型プレイヤーたる基礎自治体や地場のガス事業者が手がける地域エネルギー事業についても同様であり、「ここで、どんな地域エネルギー事業ができるか」と考える。

一方、特定地域に縛られず物事を考えられるエネルギープレイヤーは、「どんなエネルギー事業がどこでできるか」と考え、適地を探し、そこに降り立って事業を行う。つまり、「できるところ」でできることを行う。

分散型の地域エネルギー事業を推進する政策は、主に後者の発想で進められている。補助金を投入して進められる「実証事業」や「モデル事業」の成功が、必ずしも全国的な成功(=どこの地でもうまくいく)につながらないのは、当然といえば当然である。

地域エネルギー事業が成立するためには

地域新電力にせよ、面的なエネルギー事業にせよ、それが事業として成立するためにはいくつかの要件が整わねばならない。

第1には「事業に活用が可能なエネルギー、とりわけ再生可能エネルギーの賦存状況」である。
賦存が乏しければ事業性も乏しくなる。一般に太陽光、風力、バイオマス、小水力のような自然エネルギー由来の再エネは地域に特定されるので、それらが十分賦存していない地域での事業は難しい。ただし、生ゴミ由来のバイオマスや屋根載せ型の太陽光を活用した事業は都市部でも成立する可能性もあるので、「わが地域には自然エネルギーがないから」と諦めるのも早計である。

第2には「地域のエネルギー需要密度やエネルギー需要構成」だ。
エネルギー需要のあり方で事業性が変わり、需要密度が低ければ事業採算性も低くなる。エネルギー需要は電力需要と熱需要に大別できるが、熱需要密度が低ければ再エネ熱やコージェネ熱の活用ができず、熱事業としての採算性も低くなる。また熱エネルギーは搬送コストが高いので、面的に融通して利活用するにも需要の集積度が高くなくては事業性の確保が難しい。

第3の要件としては、「事業に参画するプレイヤーの地域エネルギー・リテラシーの有無」で事業の実現可能性が変わることだ。
たとえば自治体にリテラシーがあり前向きである地域では、自治体新電力の実現可能性が高くなる。地元事業者にリテラシーがあり前向きな地域では、地域連携で事業化できる可能性が高まる。ただし、この第3要件は第1・第2要件と違って外から見えづらく、筆者の経験からすれば、意外に事業性検討のネックになっているのではないか。

第4には「自由化された電力小売ビジネスの状況」が挙げられる。
一般に電力小売ビジネスは「競争型(自社ブランド型)」と「地域貢献型(地域ブランド型)」に大別できるが、地域エネルギー事業はユーザーにスイッチングしてもらって成り立つ事業であるため、地域ブランドに「地域経済貢献意識」や「郷土愛」のような求心力がなければスイッチが難しい。さらに都市圏のような競争型の電力小売が活発な地域では地域ブランドといえども他のプレイヤーとのスイッチング競争を勝ち抜く必要があり、一般住民をユーザーとした「市民電力」成立の壁となっている。

以上を総合すると、地域エネルギー事業は上述の要件が整わないことが多く(=整わない方が圧倒的かもしれない)、どの地域でも容易に実現できるものではないことがわかる。

とはいえ、これで諦めたら、エネルギーの地産地消によって地域経済に貢献する道は閉ざされてしまうので、知恵を絞って活路を見出したいところである。次回はそのあたりを考える。

地域密着型エネルギー事業者の地域エネルギー論

プロフィール

角田 憲司(つのだ けんじ)

エネルギー事業コンサルタント・中小企業診断士
1978年東京ガスに入社し、家庭用営業・マーケティング部門、熱量変更部門、卸営業部門等に従事。2011年千葉ガス社長、2016年日本ガス協会地方支援担当理事を経て、2020年4月よりフリーとなり、都市ガス・LPガス業界に向けた各種情報の発信やセミナー講師、個社コンサルティング等を行っている。愛知県出身。


コメント


EnergyShift(エネルギーシフト)

シェアする

オリジナル記事一覧

EnergyShift_NAVI
【募集中】ベストな運転開始を迎えるために!発電事業者が知っておくべきこと。

記事ランキング