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FIP制度のプレミアム単価はどのように決まる?第20回「再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会」

FIP制度のプレミアム単価はどのように決まる?第20回「再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会」

2020/10/29

審議会ウィークリートピック

2020年10月9日、総合資源エネルギー調査会の第20回「再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会」が開催された。第19回に引き続き、FIP(プレミアム価格買取制度)の詳細設計に関する論点をめぐって議論された。

第19回再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会の解説記事

FIPの課題は採算性・予見性と価格変動リスク対策のバランス

資源エネルギー庁の第20回「再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会」において、FIP(フィードインプレミアム・プレミアム価格買取制度)の詳細設計が精力的に進められている。

FIPとは、再エネ電源に対してその売電価格等に一定の政策的支援をしつつ、将来の自立化を目指して部分的な市場統合要素を組み入れた、橋渡し的な再エネ支援政策である。

FIP発電事業者の採算性・予見性の確保と、市場統合に向けた価格変動リスクの持たせ方のバランス確保が非常に難しい制度である。第20回小委でも多くの論点で、委員の意見が大きく割れる結果となった。

なお本稿は、【事実上の「決定」が進むFIPの詳細設計:第19回 再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会】の続編となる。関心があればこちらもご覧になっていただきたい。

第20回小委の議題は、FIP詳細設計に関する以下の5つの論点である。

  • 【論点2】交付対象区分等の決定及び入札を実施する交付対象区分等の指定
  • 【論点4】卸電力取引市場の価格の参照方法
  • 【論点6】バランシングコストの取扱い
  • 【論点9】オフテイカーリスク対策(一時調達契約)
  • 【その他の論点】出力制御発生時のプレミアムの交付

一旦これで、エネ庁事務局が用意したFIP詳細設計に関する論点はすべて網羅されたかたちとなっている。論点の番号順に概要を紹介しよう。

【論点2】FIP交付対象区分等の決定及び入札を実施する交付対象区分等の指定

再エネ電源に対する支援策としてFITとFIPの違いの一つは、段階的に市場統合を進めるというものであり、これにより一層のコストダウンと無理のない大量導入実現のバランスを確保することが重要である。

よって、どのような電源をどのような区分でFIP対象とするかは、電源毎の状況や事業環境を参考にすることと整理されている。例えば、太陽光等のように変動するタイプであるか否か、コスト効率的な発電事業規模はどの程度の大きさか、当該電源種別の国内外の発電コスト動向はどのように変化しているか等が考慮される。

また発電事業そのものの状況だけでなく、売電先の一つである卸電力取引市場の取引はどのような状況であるか、変動電源を集約することが期待されるアグリゲーターの事業動向はどのような状況であるか等が参考とされる。

再エネ小委において整理されたこれらの指標に基づき、具体的なFIP対象区分等については調達価格等算定委員会において決定される。

【論点4】卸電力取引市場の価格の参照方法

前編で紹介した電力量(kWh)以外の収入(環境価値等)については一旦割愛すると、FIP制度における発電事業者の売電収入は、卸電力市場等での売電収入と、図1の③プレミアムの交付金の合計金額である。

図1の③プレミアム単価は、①「基準価格(FIP価格)」と②参照価格の差額である。

「基準価格(FIP価格)」は交付期間(例えば20年間)を通じて一定の固定単価である。他方、参照価格は市場参照期間(事務局案では1ヶ月)ごとに変動するため、これに応じてプレミアム単価も毎月変動することとなる。よって、参照価格をどのように算定するかは非常に重要な論点である。

出所:第20回小委事務局資料

第20回小委のエネ庁事務局案をまとめたものが表1である。

出所:第20回小委事務局資料をもとに筆者作成

繰り返しとなるが、FITと異なるFIPの最大の特徴の一つが、FIP電源を一定程度、市場価格の変動に晒す点にある。ただし、この「一定程度」という匙加減は非常に難しい。

すでにFIPを導入済みの諸外国においても、市場参照期間は「1時間」から「1年間」まで非常に幅広い実例が存在する。市場参照期間が短い設計の場合、実態としてはFITの固定価格とほぼ同じであり、発電事業の市場価格変動リスクはほぼゼロになる反面、FIPが目指していた市場統合、すなわち市場価格の変動に応じた発電事業者の行動変容を促すことはできなくなる。

市場参照期間が長ければこの逆に、より儲かる時間帯や季節に発電・売電を移動させることにより、発電事業者による創意工夫が促されることとなる。

出所:第20回小委事務局資料

「量」の観点において今後の再エネ電源主力化の主役は、太陽光と風力(洋上風力含む)の2者になると考えられる。FIPの主要電源となる両者はいずれも変動電源であるが、この発電特性をどのように考慮するかが論点となった。仮に昼間にしか発電しない太陽光発電が取引所の24時間平均価格を参照したとしても、当面の間は実態と大きな乖離が生じるためである。

第20回小委では太陽光発電と風力発電については、一般送配電事業者が公表するエリアごとの供給実績(電源種別、1時間値)を利用して、市場価格指標の加重平均を取ることが合意された。

【論点6】バランシングコストの取扱い

FIT特例制度が存在するFIT電源とは異なり、FIP電源は火力等の電源と同じくインバランス制度の対象となっている。よって、FIP電源では計画値同時同量に対応するためのバランシングコストが発生する。

将来的には自立を目指すとはいえ、現時点で、変動再エネ電源に対して完璧な計画値同時同量を達成せよというのは無理な話であり、FIP電源がインバランスを最小化するためには、気象予報等に基づいた正確な出力予測・計画作成をおこなうための追加的な費用が発生する。

よって、FIP電源の参入障壁を下げる観点から、当面の間、一種の経過措置としてFIP電源にはバランシングコストが交付される。事務局案では発電量(供給量)に応じてkWh当たり一律の額を交付するとしているため、FIP事業者はインバランスを抑制することにより、バランシングコスト交付金を自社の儲けとすることが可能である。

一部の事業者に対するヒアリングによれば、バランシングコストは0.5~1.0円/kWh程度であることが報告された。また、例えばドイツではFIP導入初年度の太陽光では約1.5円/kWhの交付から開始したうえで徐々にこれを低下させ、2015年以降は0.5円/kWhとなっている。日本のFIPでも、このあたりの数値を参考に調達価格等算定委員会で検討されると考えられる。

【論点9】オフテイカーリスク対策(一時調達契約)

FIT制度と異なり、FIPでは発電事業者は自らが売電先(小売電気事業者や電力卸取引所)を選択・確保しなければならない。その売電先が倒産等に見舞われた場合、FIP電源は突然に売電先を失うこととなり、このことはFIP参入の障壁となると考えられている。
よって一種の緊急避難先として、一般送配電事業者等は一時的な買電に応じる義務がFIP法に定められている。

これはあくまで一時的な措置であって、FIP事業者が恒久的に一般送配電事業者等への売電に依存することを避けるため、一時調達価格は基準価格の80%、利用可能な期間は連続最長12ヶ月、とすることが提案され、合意された。

【その他の論点】出力制御発生時のプレミアムの交付

上記論点4の図1で示したように、プレミアム単価は毎月変動するものの、その月内では毎日24時間同額のプレミアムが発電量に応じて交付されることがFIPの基本形である。

他方、太陽光発電が大量に導入された九州エリアでは既に、不需要期には再エネの出力制御(出力抑制)が頻発している。

  • (1)2019年度に九州本土で出力制御が発生した回数:74回
  • (2)2019年度のスポット市場の九州エリアプライスが0.01円/kWhのコマ数:693コマ(=14日10時間30分)
  • (3)2019年度の再エネ出力制御による再エネ逸失電力量比率
    再エネ逸失電力量比率 = 再エネ制御量÷(再エネ制御量+再エネ発電量)×100 = 4.1%

不需要期に、系統全体の電力需給バランスが崩れそうなので(最悪の場合、これによりブラックアウトが発生しかねないので)、適切に出力を抑制してほしいというタイミングにおいて、さらにFIPプレミアムを交付して発電を促すということは不適切であるという意見が複数の委員から述べられている。

本件は事務局が当初設けた論点ではないため、番号無しの「その他の論点」という扱いとなっているが、第20回小委では委員間で最も意見が分かれた論点となった。

念のため、出力制御対象となったFIP電源については無補償で出力制御する(発電しないため、プレミアムも交付されない)ことは前提であり、本件は出力制御の対象とならなかったFIP電源へのプレミアムの交付についてどう考えるかという論点である。

小委ではFIP導入済み欧州諸国の制度が紹介されている。JEPXスポット価格の下限値が0.01円/kWhである日本とは異なり、欧州では需給バランスに応じてスポット価格自体がネガティブプライスを付ける仕組みとなっている。そしてスポット価格がネガティブプライスとなった場合は、FIPプレミアムはゼロもしくは減額される詳細制度となっている。

仮に、プレミアムを交付しないことそれ自体がFIP事業への参入を著しく損ねてしまうならば、再エネ主力化の方向性に反する結果となり得る。
他方、長い目で見れば、再エネ電源を市場統合することこそが、低コストでより多くの再エネを導入する方策だとの主張にも合理性がある。

FITから完全市場統合に向けた橋渡し的制度であるFIPならではの、微妙なバランスを取らねばならぬ難しい論点である。今回の小委では結論は出されておらず、次回以降の小委で継続検討されることとなった。

今後、再エネ電源の出力制御は、九州エリアだけでなく全国的に発生すると考えられる。全国のFIP発電事業者の採算性・投資決定に影響する重要な論点の行方に注視したい。

(Text:梅田あおば)

梅田あおば
梅田あおば

ライター、ジャーナリスト。専門は、電力・ガス、エネルギー・環境政策、制度など。 https://twitter.com/Aoba_Umeda

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