電気料金12月も値上げ、大手電力10社すべてが過去5年で最高値に  2022年初頭はさらに高騰か | EnergyShift

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電気料金12月も値上げ、大手電力10社すべてが過去5年で最高値に  2022年初頭はさらに高騰か

電気料金12月も値上げ、大手電力10社すべてが過去5年で最高値に  2022年初頭はさらに高騰か

2021年10月29日

今年12月の電気料金が大手電力10社すべてで値上がりする。東京電力管内では今年に入って1,000円以上値上がりしており、一般家庭の暮らしにも影響が広がっている。火力発電の燃料であるLNG(液化天然ガス)や石炭など世界的なエネルギー資源の高騰が背景にある。暖房需要が増える今冬には電力が不足する懸念もあり、電気料金はさらに値上がりする模様だ。

電力3社、今年に入って1,000円以上の値上げ

10社いっせい値上げは4ヶ月連続となる。値上がり幅は一般的な標準家庭で今年11月と比べて沖縄電力が141円、中部電力127円、中国電力120円、東京電力114円、東北電力109円と、10社中5社が100円を超えた。

東京電力管内の標準家庭の電気料金は2021年12月に7,485円になる。今年1月と比べ1,168円、18.4%上昇した。中部電力も今年入ってから1,097円値上がりしており、7,153円になる。沖縄電力も1,209円上昇し、12月の電気料金が8,134円になる。8,000円を超えたのは過去5年ではじめて。年初からの値上げ幅は10社平均で13.8%となり、その結果、大手電力10社が過去5年でもっとも高い水準に達している。

標準家庭の電気料金

背景にあるのが、世界的なエネルギー危機だ。欧米、中国、インドなど世界各地で電力不足が深刻化し、LNGなどのエネルギー資源の奪い合いが起こった。その結果、燃料価格の上昇が止まらない。

日本は2050年の脱炭素社会の実現に向け、再生可能エネルギーの最大限の導入を図っているが、電力の76%をLNGや石炭火力に頼っているのが現状だ。たとえば、東京電力の電源構成のうち78%が火力だ(58%がLNGなど)。火力発電の比率が高い電力会社ほど電気料金の値上げ幅が大きい。世界的なエネルギー価格の高騰は落ち着く気配がなく、年明け以降も、電気料金はさらに値上がりする見込みだ。

出典:東京電力エナジーパートナー

LNG価格、2021年に入り過去最高を2度も更新

LNG価格は2021年に入り過去最高を2度も更新している。

特に高騰が顕著なのが、アジア市場のスポットLNG価格の指標であるJKM(ジャパン・コリア・マーカー)だ。2020年末に日本や中国、韓国などを襲った寒波、LNGプラントトラブル、パナマ運河の大渋滞によるアメリカ産LNGの供給遅延など複数の要因が重なり、2021年1月、JKMのスポット価格が32.5ドルという史上最高値をつける。その後いったんは落ち着くが、10月に入り、欧州のスポット価格が一時54ドルまで上昇する。JKMもこれにひっぱられる形で、56.3ドルまで急騰した。

欧州スポット価格の高騰にも複数の要因がある。世界的な石炭のひっ迫と高騰に、冬の到来が重なり、LNGの需要が増加。石炭発電などの稼働率を上げた結果、炭素価格も高騰し、石炭よりCO2排出量が少ないLNGの需要にさらに拍車をかけた。その一方で、イギリスやスペインなどで風力発電量が限定的となり、電力不足の懸念が浮上。天然ガスの在庫量をうまく積み増すことができず、そこに追い討ちをかけるように、ロシアが天然ガスを供給制限するかの動きをみせるなど、不透明感は増すばかりだ。

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藤村朋弘
藤村朋弘

2009年より太陽光発電の取材活動に携わり、 その後、日本の電力システム改革や再生可能エネルギー全般まで、取材活動をひろげている。

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