世界的なエネルギー危機が深刻化する中、多くの国で電気料金が上昇している。
経営が悪化する電力会社を救済するため、価格統制下にある中国も、電気料金の上げ幅を最大20%まで容認する方針を打ち出した。
一方、イギリスでは、天然ガスなどの高騰を料金に転嫁できず電力・ガス会社の破綻が相次ぐ。今年8〜9月の間に10社が経営破綻した。
日本でも昨冬の電力高騰の煽りを受け、新電力の経営破綻が続いている。さらに今、暖房需要がピークを迎える冬期に向かって、世界各国がLNGを奪いにいっており、価格は一段と高騰する見込だ。
しかも、この冬の電力需給の見通しは、全国7つのエリアでピーク時の需要に対する電力供給の余力を示す数値が3%台しかなく、過去10年間でもっとも厳しくなる見込みだ。経済産業省が10月26日開いた電力・ガス基本政策小委員会(第40回)で示した。
厳しい冬を想定した場合、2022年2月の供給余力(予備率)は、東京電力管内で3.1%と3%ギリギリになっているほか、中部や関西、九州など7つのエリアで3.9%と、極めて厳しい状況になるという。
経産省では、発電所のトラブルやLNGなどの燃料不足によって、需給がひっ迫するおそれもあるとして、家庭や企業にできる範囲内での省エネを呼びかける方針だ。萩生田経済産業大臣は、この冬の電力需給について「安定供給に必要な供給力はかろうじて確保できるものの、かなり厳しい見通しとなっている」と述べた。
大手電力会社の10月半ば時点のLNG在庫は過去5年間で最高水準にある。前年同期と比べ約70万トン増となっており、なんとかひっ迫は回避できる模様だ。また、気象庁によると2022年1月の気温は平年並みと予報している。
その一方で、米海洋大気局は今冬、北半球では70~80%の確率で「ラニーニャ現象」が発生し、気温が例年より低くなると予測しており、電力不足が起こる懸念はまだ残る。もし北半球で電力不足が起これば、LNGなどの需給が再び崩れ、高騰は免れないだろう。
日本の電気料金は、燃料価格が3〜5ヶ月遅れで電気料金に反映される仕組みだ。今年12月に反映された燃料価格は2021年7〜9月のものである。今のLNGの高騰を考えると、2022年1月以降も、電気料金が値上がりするのは確実な状況だ。
脱炭素社会の実現を目指し、化石燃料を削減する動きが強まる中、LNGなどの価格高騰リスクを考えれば、エネルギーに占める化石燃料を一層減らすことが求められている。2022年に入っても、電気料金の上昇が避けられない中、一般家庭に与える影響を最小限にするという観点からも、再エネなどさらなる対策が必要になっている。
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