ブレーキを踏むな アクセルを踏め 世界エネルギー危機と脱炭素 | EnergyShift

脱炭素を面白く

EnergyShift(エナジーシフト)

ブレーキを踏むな アクセルを踏め 世界エネルギー危機と脱炭素

ブレーキを踏むな アクセルを踏め 世界エネルギー危機と脱炭素

2021/10/12

世界各地で電力価格・エネルギー価格が高騰している。9月中旬から顕著になり、いまだに高騰の報道が続いており、正常化の兆しはまだない。電力価格高騰はなぜなのか。気候変動対策、脱炭素を急ぎすぎたからというのは本当なのか。大きな流れと、直近の問題を整理してみたい。

電力、エネルギー価格はどこまで高くなったのか

ヨーロッパで電力、ガス、石炭価格が急上昇している。

この価格高騰に関しては、詳細にみていけば世界的な潮流と地域ごとの理由がそれぞれにある。ひと括りに世界エネルギー危機がきた、とだけ考えてしまうのは尚早だ。

IEA(国際エネルギー機関)は10月2日のニュースレターで「最近の世界的な天然ガス価格の上昇は複数の要因の結果であり、その責任をクリーンエネルギーへの移行に求めるのは不正確で誤解を招く」と指摘している。一方、ウォール・ストリート・ジャーナルは「ヨーロッパの脱炭素政策が化石燃料の不足を引き起こした」と社説に書いた。


出典:Bloomberg、ICE、EEX 欧州のガス、電力、石炭価格の上昇

特にスペインが高騰している。スペインの電気料金は2019年から2020年の平均から3倍に跳ね上がった。暖房のシーズンが始まる10月1日、電力価格は216€/MWhに達した。これは今までの記録である189.90€/MWhを塗り替え、瞬間的には230€を超えた。

欧州のガス価格のベース市場であるオランダのTTFは95€/MWh以上で取引されている。10月5日にTTFは100€/MWhを超えた。今は少し戻して88€(10月11日)だが、今年8月の倍以上の価格だ。


出典:ICE TTFによるLNGガス価格の変動

そのオランダでは今年1月上旬に16€/MWhだった電力価格は9月下旬には98€/MWhと、6倍に達している。フランスは10月1日にガス料金が12.6%値上がりし、電力価格は10.3%上昇して135.50€/MWh。

ドイツは昨年からエネルギー価格が14%上昇している。来年の電力価格は133€/MWh。イタリアは10月に入ってから30%の電気代が上昇している。ガソリンは15%、ガス代も14%の上昇だ。

イギリスの電力会社も軒並み18%前後の値上げをしている。それだけでなく、電力会社の破綻が相次いでいる。英エネルギー相は高騰は数ヶ月続く見込みとコメントしている。

中国では石炭不足による電力の逼迫で停電が問題になり、製造業に支障が出ている。ゴールドマン・サックスは今回の電力不足で中国の工業活動に最大44%の悪影響を与えるとしている。10月11日には豪雨と洪水で鉱山の閉鎖が相次ぎ、石炭先物価格が急上昇。過去最高値をつけた。


出典:Bloomberg、Zhengzhou Commodity Exchange 石炭価格の上昇

電力の7割を石炭火力で発電しているインドでは、深刻な石炭不足ですでにたびたび停電が起こっている。10月11日付のロイターによると石炭火力発電所135ヶ所の半数以上で燃料在庫が(10月11日時点で)残り3日を割り込んでいると報道されている。

アメリカでもLNG価格が2020年の2倍以上に高騰。この冬の暖房費は3割ほど高くなるといわれている。石炭価格は2年ぶりの高値。そして、今年2月のテキサスを忘れている人は少ない。

なぜ電力価格は高くなっているのか(世界の潮流)

これらエネルギー価格高騰には、世界的な潮流と地域での問題がある。

世界的な潮流としては、まずは新型コロナウイルスからの経済復興による電力・ガス需要の急激な高まりだ。ワクチンの浸透により、世界中で経済活動が活発になっている。製造業もまた動き始めている。

もうひとつの大きな潮流は、脱炭素による投資の影響もあるだろう。これはIEAの今年のOutlookなどの各種提言による、化石燃料の削減傾向に起因する。

今年5月、IEAはNet Zero by 2050を発表し、2050年までに全世界の温室効果ガスをゼロにし、気温上昇を1.5℃未満に抑制しようという報告書を発表した。それによると、今後化石燃料への開発や投資は順次停止していき、反対にクリーンエネルギーへ年間4兆ドル以上投資すべきという。

これにより、新しい化石燃料開発への投資が行われにくくなっていることは確かで、現在あるLNGや石炭燃料を奪い合う形になり、価格が上昇しているという見方がある。

IEAの10月に公表されたガス供給に関するリポートによれば、LNGの(長期)契約金額は2020年に前年比約30%縮小している。ピーク時の2018年からみると45%の縮小だ。

OPECやロシアなどは、原油の価格下落を恐れ、増産を行わないように慎重になっている。サウジアラビア、アラブ首長国連邦、ロシアなどの生産余力は、およそ800万バレルに及ぶ。

そして、天候。今年の猛暑で欧州、中国は冷房に(電力需要として)天然ガスが消費された。

このコロナからの回復、化石燃料への投資減少、天候による需要増、は世界的な潮流といえる。

電力高騰を地域別に分析、脱炭素への積極策はなぜ必要か・・・次のページへ

小森岳史
小森岳史

EnergyShift編集部 気候変動、環境活動、サステナビリティ、科学技術等を担当。