再生可能エネルギー事業者の事例から見る、資産管理術:Copperleaf CMOが語る、エネルギー資産・インフラ投資におけるアセット・マネジメント | EnergyShift編集部

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再生可能エネルギー事業者の事例から見る、資産管理術:Copperleaf CMOが語る、エネルギー資産・インフラ投資におけるアセット・マネジメント

再生可能エネルギー事業者の事例から見る、資産管理術:Copperleaf CMOが語る、エネルギー資産・インフラ投資におけるアセット・マネジメント

EnergyShift編集部
2020/10/08
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2020/10/08
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エネルギーインフラを守る資産管理(第4回)

インフラストラクチャの適切な資産管理は、そこからもたらされる利益を最大化する。対象となるインフラは従来の火力発電所だけではなく、再生可能エネルギー発電設備に対しても同様だ。今回はアイスランドの電力会社における再エネ発電所の資産管理の事例について、CopperleafのCMO(マーケティング最高責任者)のBoudewijn Neijens氏が解説する。

アイスランドの国営電力会社における資産管理

2020年7月に公開された私の1回目のコラムでは、資産管理の必要性と利点について検討しました。 8月に公開された2回目3回目のコラムでは、意思決定と、資産管理に特化した標準化された管理システム(ISO 55000)の重要性に焦点を当てました。

今回、4回目のコラムでは、アイスランドの国営電力会社Landsvirkjun社を取り上げて、ヨーロッパ最大の再生可能エネルギー会社の1つで資産管理がどのように活用されているかを述べていきたいと思います。

Landsvirkjun社ウェブサイト

日本と同じように、アイスランドは島国で、発電所と送配電網は独立しています。また、活発な火山がある火山帯に位置しているため、島の豊富な地熱源を利用し、Landsvirkjun社は地熱発電を運用できます。

しかし、主なエネルギー源は水力発電です。電力の90%以上が15ヶ所の水力発電所によって生み出されています。Landsvirkjun社は、アイスランドで発電する電力の約3分の1を占め、その発電量の80%以上を、主にAlcoa、Rio Tinto、およびその他の大規模な国際グループが所有するアルミニウム製錬所に販売しています。これらの企業は電気代が安いアイスランドに惹かれて、立地しています。実際にLandsvirkjun社のkWhあたりの価格は、ヨーロッパ内で最も低くなっています*。

アルミニウム製錬所において、停電などによる生産中断は、精錬所にとって非常に破壊的なことであり、コストがかかるため、非常に信頼性の高い電源を必要とします。

こうした状況は、Landsvirkjun社における資産管理の重要性を浮き彫りにします。なぜなら非常に低コストかつ最高の信頼性で顧客に電力を供給し、収益性を維持する必要があるからです。

Landsvirkjun社の最も古い発電所は1930年代に建設されました。発電所が運開してからの平均年数は約42年です。合計で2GWの設備容量があり、年間15TWh近くを供給します。同社は99%以上の稼働率(計画停止を除く)で水力発電所を運用しています。しかし資産は老朽化しており、継続的なケアが必要です。これが資産管理が非常に重要であるもう1つの理由です。

“Power Security – A White Paper”, Landsvirkjun, 2015.

Landsvirkjun社における資産管理

Landsvirkjun社は2012年に、資産計画、投資計画、および全体的な保守計画を管理することを目的とした資産管理グループを結成しました。

資産計画は、既存の資産への再投資の長期計画です。計画は次の20年間をカバーし、タイムベースではなくリスクベースでの運用となっています。資産の経過時間と状態の評価は、各資産の故障のリスクを評価するために使用されます。

次に、資産劣化モデルを適用して、各資産の状態の推移を予測します。これらのリスク評価と、運用コストおよび障害リスクを軽減するために必要な潜在的な投資コストを組み合わせることにより、図1に示すように、各資産の推奨される耐用年数を計算できます。

このプロセスは各資産の分析から始まり、全体的な投資要件計画につながるため、「ボトムアップ」であると度々説明しています。

しかし、こうしてできた計画は、多くの投資が必要な年もあればそうでない年もあるという可能性がある事が、分析によって示されます。投資がしばしば「凸凹」になってしまうという点では、あまり実用的な計画ではありません。理想的には、会社は毎年ほぼ同じ金額を投資したいと考えています。

Copperleafの高度な資産投資計画および管理(AIPM)システムC55を使用することで、Landsvirkjun社は、より現実的な長期資産計画を開発し、会社に余計なリスクを発生させることなく、プロジェクトに長年にわたって投資を割り振る事ができます。

図2は、最初の20年間の財務制約を適用した後の長期計画の様子を示しています。

長期計画を作成して維持することは、組織が次のことを行えるようになるため重要です。

  • すべての資産が体系的にレビューされ、その状態とリスクが理解されていることを確認します。
  • 既存の資産を維持するために長期的に必要となる金額とリソースのレベルについて、経営陣が明確に把握できるようにします。
  • 主要なプラント停止を計画する時期と、そのような停止期間中のコストを最小限に抑えるために、最適な作業項目の組み合わせを決定します。

投資計画は、短期計画を管理するプロセスです(Landsvirkjun社の場合は3年)。この短い期間内では、課題は一般的に異なります。技術スタッフは今後数年間で実施されるプロジェクトを調査し、実現可能性を見据え必要なコスト分析を実行し、各プロジェクトのさまざまなオプションを検討し、正当化する必要があります。またプロジェクト(または事業計画)を開始する前には経営陣の承認が必要です。

Landsvirkjun社は、Copperleaf C55ソフトウェアを信頼した上で、潜在的な各プロジェクトの詳細な価値を評価し、ポートフォリオ管理機能を使用して、各プロジェクトと各プロジェクト内の各オプションの厳密な比較を実行します。

これは「トップダウン」プロセスであり、経営陣はこの手法から今後数年間の予算の範囲を設定します。また、利用可能な最大労働時間、毎日オンラインにする必要のある最小発電容量、全体的なリスク許容度などの他の制約も設定する場合があります。次に、管理チームは、プロジェクトの最適な組み合わせ、および各プロジェクトがこれらの制約を順守し、企業とその利害関係者に可能な限り最高の価値を提供するための最適なオプションとタイミングを見つける必要があります。

C55には、Landsvirkjun社がプロジェクトの最良のポートフォリオを迅速に特定できるようにする最適化エンジンがあります。これを使い、最適化を複数回実行して、さまざまなWhat-Ifシナリオを調査できます。たとえば、さまざまなインフレシナリオ、市場電力価格などです。その結果は、実施すべきプロジェクトと時期が特定され、正しい計画が示されます。

次に、Landsvirjkun社はC55の運用を通じてこのプロジェクトのポートフォリオを管理します。こうしたことから、立案された投資計画は、Landsvirkjun社が次のことを行えるようにする重要なプロセスとなっています。

  • 簡単に比較できる標準化されたビジネスケースを開発します。
  • プロジェクトのポートフォリオに複数の制約(財務、リソース、タイミング、リスク許容度など)を適用し、結果が確実に達成可能であり、会社の目標を達成できるようにします。
  • プロジェクトオプションとタイミングの可能な限り最高の組み合わせを選択し、すべての制約と目的を尊重しながら、可能な限り最高の価値を提供します。

言うまでもなく、プロジェクト計画は定期的な保守計画に関連付けられている必要があります。これが、Landsvirkjun社の資産管理部門が「保守ポリシー」と「優先順位付け」を設定する理由です。C55などの高度なAIPMシステムは、保守計画を組み込んで、プロジェクトオプションを評価するときにすべてのライフサイクルコストを確実に考慮することができます。

資産管理の段階的アプローチ

資産管理グループが2012年に設立されたとき、最初に取り組んだのは既存のプロセスと構造を文書化することであり、そこから将来の改善のためのロードマップを作成しました。また、内部で開発したシステムは老朽化した資産の更新計画を正確に伝える事ができなかったため、運用を中止することにしました。Copperleafの支援により、2段階の計画が作成されました。

フェーズ1
資産管理チームは、C55を実装することで、将来のプロジェクトのすべてのビジネスケースを一貫した方法でキャプチャできるようになった事から、最初に対処したのは投資計画フェーズでした。プロジェクトを評価するためのより標準的な手段を備えたLandsvirkjun社は、さまざまなレベルの投資が企業の将来のリスク要因にどのように影響するかを分析できるようにしたいと考えました。これを達成するために、Landsvirkjun社はC55の投資決定の最適化機能を実装して、利用可能な予算と会社に対する各プロジェクトの全体的な価値に基づいて最適なプロジェクトのセットを選択できるようにしました。

フェーズ2
2番目のフェーズは、C55の予測分析を使用して資産計画を実装し、インフラストラクチャを維持し、会社の戦略的および長期的な財務計画を支援するための支出要件の長期的な見解を会社に提供することでした。

この計画を念頭に置いて、Landsvirkjun社は、会社の発電所の運営に豊富な経験を持つコアチームを結集しました。新しいプロセスを定義する際にすべての利害関係者が発言できるように、組織全体の財務、運用、およびその他の部門の代表者による3つのワークショップが開催されました。CopperleafのC55ソリューションはわずか4ヶ月でインストールされ、以来、同社はこのシステムを使用しています。

Landsvirkjun社は、リスク、経年、状態を使用して、長期的な投資ニーズを特定しました。重大なリスクが明確に識別されるため、計画外の停止が発生する前にそれらのリスクを軽減するための活動を実行でき、会社は投資計画がそれらのリスクにどの程度対処するかを確認できます。会社が検討するリスクのカテゴリは次のとおりです。

会社が検討するリスク
  • 財務
  • 安全性
  • 環境
  • 発電量の損失
  • コンプライアンス
  • 物的損害
  • 評判

図3に示すように、さまざまなリスクを簡単に比較できるように、各リスクタイプの結果は正規化されています。

短期的な投資ニーズの提案は、包括的なデータベースに収集され、ポートフォリオにまとめられます。ポートフォリオは、リスク評価、会社の目的、予算とリソースの制約に基づいて最適化されます。

これらの要素はすべてバリューフレームワークに取り込まれ、Landsvirkjun社が各プロジェクトの単一の金銭価値化されたスコアを計算できるようにします。考慮される要素は次のとおりです。

ポートフォリオで考慮される要素
  • 経済的メリット
  • 会社イメージ(評判)
  • 従業員の満足度
  • 環境リスク
  • 財務リスク
  • 発電リスクの喪失
  • 安全リスク
  • 投資コスト

バリューフレームワークの主な要素はリスクの軽減です。軽減されるリスクが多いほど、投資の価値が高くなります。

しかし、他の要素も役割を果たします。たとえば、プロジェクトは特定の資産の将来のメンテナンスコストを削減し、それによって経済的利益を生み出す場合があります。同様に、プロジェクトはフィールドクルーの作業を容易にし、それによって従業員の満足度を向上させる可能性があります。このような方法を使用すると、プロジェクトオーナーは予算案を関係者に透過的かつ適切に構造化された方法で簡単に提示できます。

事例から見る、資産管理の結果とメリット

資産管理と堅牢な資産投資計画および管理ソリューションの採用により、Landsvirkjun社には具体的および無形のメリットが融合しています。利点は、次の4つのカテゴリに分類できます。

より迅速で最良の決定:
より完全なデータ(すべての支出のタイプがC55に記録されます)とより正確なデータ(バージョン管理の問題がなくなります)により、Landsvirkjun社はエネルギー部門全体の支出を管理する手段についてより良い決定を下すことができます。さまざまな投資シナリオを比較できるため、資産管理チームは、十分な情報に基づいた意思決定のために高感度でWhat-If分析を簡単に行うことができます。

プロセスの効率:
複数のMicrosoft Excelベースのスプレッドシートから単一の集中型マルチユーザーシステムに移行することで、部門間での意思の疎通がかつてないほど向上しました。真の情報源が1つあることで、従業員は正しい情報を使用でき、データの検索に時間を費やしません。その結果、投資計画プロセスがはるかに効率的かつ効果的になります。

リスクの可視化と管理の向上:
全体的に、Landsvirkjun社内のリスク認識が向上しています。すべてのプロジェクトオーナーが各投資の必要性とタイミングを正当化するためのデータを必ず提出することになったため、ドキュメントが大幅に改善されました。

従業員のエンゲージメントと満足度:
変更管理に重点を置き、システムをアイスランド語に変換するなどの追加措置を講じることにより、C55の導入と採用は成功しました。

資産管理の責任者であるUnnur Thorvaldsdottir氏は、AIPMプロジェクトの結果に満足しており、その準備と変更管理が実装の成功の鍵であると信じています。経験豊富な外部コンサルタントに質問をして、Landsvirkjun社が決定を下す前にプロセスをマッピングするのを支援することは非常に価値があると彼女は感じています。

Landsvirkjun社はまた、継続的にプロセスとツールを改善し、レビューし続けることがいかに重要であるかを認識しています。リーンマネジメントとhydroAMPは2つの良い例です。

リーンマネジメントの導入
最近、Landsvirkjun社はすべての発電所にリーンマネジメントを導入しました。リーンマネジメントは、ビジネスプロセスのさまざまなステップを特定し、価値を生み出さないステップを確認、合理化、および切り捨てることにより、労力、時間、または資金の無駄をなくすように設計された方法論です。リーンマネジメントは、継続的な改善を促進することにより、アセット管理を補完します**。小規模な改善が主な焦点であり、従業員は問題のある領域を特定してアイデアを共有することが奨励されています。

hydroAMPの導入
Landsvirkjun社は、CopperleafのC55ソリューションに統合された水力発電所の状態評価プロトコルとしてhydroAMPも導入しています。hydroAMPの目標は、水力発電設備の状態を客観的に評価して資産とリスク管理の意思決定を支援する方法を合理化および簡略化するフレームワークを作成することです***。

  • ** “リーンマネジメントとアセット管理”, Bernard Gaudreault, The Institute of Asset Managementの講演資料から, July 2020.
  • *** “水力発電アセットコンディション評価”, CEATI portal https://hydroamp.com/

まとめ:どの程度正確に、回避されたリスクの量を測定できますか?

Landsvikjun社のMathiesenエグゼクティブバイスプレジデントは次のように結論づけています。

「数字の『確からしさ』の観点から、メリットを数値化するのは簡単なことではありません。どの程度正確に、回避されたリスクの量を測定できますか? 私たちが知っているのは、ISO55000資産管理標準仕様で、こちらに概説されているベストプラクティスに手順を合わせることです。これで、すべての主要な資産クラスの透明性が得られ、短期計画と長期計画の両方のさまざまな投資シナリオを比較して、リソースを最大限に活用することができるということです。全体として、これにより私たちは大きな自信を持って意思決定をすることができ、将来をよりよく計画する知見をもらうことができるのです」。

エネルギーインフラを守る資産管理
第3回 AIPMソリューション
第2回 ISO55000シリーズと資産管理の課題
第1回 エネルギーインフラを守る資産管理の概観

プロフィール

Boudewijn Neijens

2010年にマーケティングとビジネス開発の副社長としてCopperleafに入社し、現在は、マーケティング最高責任者。また、アセットマネジメント機構カナダ支部の議長、また国際標準化機構ISO及び大規模電気システム国際会議CIGREにおいてアセットマネジメントワーキンググループ議長も併任。
これまで、ヨーロッパ、中東、アフリカでグラフィックアートの巨人Creoのビジネス開発を主導し、その後、世界中のCreoのすべてのマーケティング活動を主導してきた、国際的なビジネス開発において幅広い経験を持つ。最近では、Aquatic Informaticsでマーケティング、国際ビジネス、製品管理を担当。ブリュッセル大学で機械工学の学士を持ち、フランスのINSEADでMBA、また CMRP, CRL and CAMA 認証を取得。
熱心な船員であり、BCでボランティアの捜索救急船の艦隊を管理しているため、リスクベースの意思決定と資産管理を直接適用することができる。

翻訳:大矢 征仁(おおや まさひと)Copperleaf シニアコンサルタント


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