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CDP 2021年のAリストを公開 日本の気候変動Aリスト入りは何社? 世界の企業のうち2%、12兆ドル相当が「Aリスト」入り

2021年12月15日

気候変動Aリストは厳格化で減少、森林、水、トリプルAは増加

今年のCOP26サミットのグラスゴー気候合意やIPCC第6次評価報告書により、環境問題は相互に関連しており、共に管理しなければならないことが明らかになっている。企業は徐々にこのことを認識し、より包括的なアプローチで報告を行うようになってきているとCDPは分析している。

2021年には、花王、ロレアル、ユニリーバ、HPなど、先駆的な企業14社が、3つの環境テーマ(気候変動、森林、水)すべてでA認証となる「トリプルA」を達成し、昨年の10社を上回った。さらに、CDPの「Forests A List(森林)」に掲載された企業数は16社から24社に、「Water A List(水)」は106社から118社に増加した。

一方、気候変動のAリストは277社から200社に減少したが、これは、気候変動対応のための各種の条件が整いつつあり、結果としてハードルが上がったためだとCDPは分析している。

A評価を得るためには、気候変動問題に対する強固なガバナンスと監督、厳格なリスク管理プロセス、スコープ1と2の排出量の検証、バリューチェーン全体での排出量削減などが求められる。また、A評価のほとんどの企業は、SBTi(Science Based Targetsイニシアチブ)によって承認された明確な排出量目標を持ち、スコープ3の排出量をカバーする目標と指標を持っている。こうした定量的な指標などが明確化され、気候変動Aリストはより厳格になったとみられる。

Aリスト以外では多くの企業が情報開示の質を大幅に向上させ、ランキングを上げている。509社が、2020年にはC以下だったスコアを2021年にはBに改善した。これは、単に環境への影響を開示して認識しているだけではなく、それを管理するために行動を起こしていることを意味している。

Aリストにランクインした企業は全体の2%で、58%がCからD-の評価を受けている。CDPは、まだ世界の企業の多くが環境への影響を認識し始めたばかりであるとコメント。シェブロン、エクソンモービル、グレンコア、バークシャー・ハサウェイなど、時価総額21兆米ドルに相当する16,870社は、投資家や顧客からの情報提供の要請に応じず、また、回答の中で十分な情報を提供しなかった。

CDPリストと投資の関連

企業の環境透明性に対する市場の要求は高まっている。2021年には、110兆米ドル以上の資産を持つ590社以上の投資家と、5.5兆米ドルの調達額を持つ200社の主要バイヤーが、CDPを通じて企業の環境データを要求したという。

CDPによると、環境指標で高い評価を得ている企業は、財務的にも優れた業績を上げていることを示唆する証拠があるという。CDPのAリストに基づいて作成されたStoxx Global Climate Change Leadersインデックス*は、過去8年間の平均年間リターンが参照インデックスよりも5.8%高いという結果が出ているのだ。

CDPの企業・サプライチェーン担当グローバルディレクターのデクスター・ガルビンは次のようにコメントした。

「COP26では、気候と生態系の緊急事態に対処し、1.5℃以内に抑えるための実体経済の変革を推進する上で、企業が果たすべき役割が強調されました。毎年、より多くの企業が自らの影響を開示し、環境問題が相互に関連していることを認識していることは素晴らしいことです。一方で、環境データを報告するという最初の一歩を踏み出せない企業が1万7,000社もあるというのは、あまりにも多すぎます。これらの企業は、地球を危険にさらしているだけでなく、自分自身をも危険にさらしています。これまで通りの活動を続ければ、世論や規制、投資家の感情に左右されることになるでしょう。そして、監視の目は厳しさを増しており、空虚な目標やグリーンウォッシュは通用しません」。

Aリストに掲載されている企業の環境保護活動の例として、花王と富士通がリリースでは取り上げられている。それによると、花王は、2021年にインドネシアの小規模農園約800ヶ所で持続可能なパーム油(RSPO 持続可能なパーム油に関する円卓会議)の認証取得支援を開始し、2030年までに同地域の農園5,000ヶ所での認証取得を目指している。富士通は、アジアのクライアントとバリューチェーンを組んで、水問題が深刻化している地域の解決に取り組んでいる。例えば、ジャカルタ州防災局は、富士通の災害情報管理システムを利用して、自然災害にタイムリーかつ正確に対応しているという。

* 2012年12月19日から2021年11月17日までのSTOXX Global Climate Change LeadersおよびSTOXX Global 1800インデックスの累積パフォーマンスに基づく(グロスリターン)。

小森岳史
小森岳史

EnergyShift編集部 気候変動、環境活動、サステナビリティ、科学技術等を担当。

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