World Resources Institute(世界資源研究所、WRI)は2020年12月10日、世界の温室効果ガス排出量の最新データを公表した。排出量トップ10ヶ国が世界全体の排出量の約4分の3を占めており、気候変動との戦いは日本を含む10ヶ国が大胆な行動変化をしなければ成功しないと指摘した。
気候変動問題などを研究する独立研究機関、World Resources Institute(世界資源研究所、WRI)は2020年12月10日、2018年の速報値などから世界の温室効果ガス(GHG)排出量の最新データを公表した。中国、アメリカ、EUの上位トップ3が世界全体の41.5%を占めており、さらにインド、ロシア、日本、ブラジル、インドネシア、イラン、カナダの7ヶ国を加えたトップ10の合計が世界排出量の約4分の3にのぼったと発表した。
その一方で下位100ヶ国の合計はわずか3.6%にしかすぎず、WRIは、「気候変動との戦いは日本を含む上位10ヶ国が大胆な行動変化をしなければ成功しない」と指摘した。
The Top 10 GHG Emitters Contribute Over Two-Thirds of Global Emissions
Graphic by Johannes Friedrich. Data source: Preliminary global greenhouse gas emissions 2018 excluding land-use change and forestry (LUCF) from Climate Watch.The EU 27 is considered a country. WRI ウェブサイトより
WRIは、「気候変動による最悪の事態を回避するためには、2050年までにGHG排出ネット・ゼロ(実質ゼロ)実現へ向け、私たちは早急に排出量を削減しなければならない。気候データは最新の排出傾向や、各国の気候変動に向けた短期的、長期的な戦略を理解するうえで必要不可欠なものである」として、気候データプラットフォーム「Climate Watch」を提供している。
Climate Watchは、政策立案者や研究者、メディア、その他のステークホルダーに対し、気候変動に関する各国、そして世界の進捗を洞察するために必要なさまざまな気候データを提供するプラットフォームである。
すべての国や地域、そして各セクターから排出されるGHGを過去から現在までどのように変化したのか可視化し、さらにパリ協定に基づく各国のNDCを分析・比較することで、各国がNDC、そしてSDGs達成に向けた取り組みをどのように強化しているのか。さまざまな分析データを提供することによって、ネット・ゼロの実現を目指している。
WRIは、「2015年のパリ協定の採択から5年が経ち、これまで189ヶ国以上がパリ協定に参加しており、2021年、アメリカがパリ協定に復帰すれば、参加国のGHG排出量は世界の93%に相当する」と述べる。
アメリカや日本、カナダ、ドイツ、メキシコなど19ヶ国が脱炭素経済に向けた長期戦略を策定する中、WRIでは、各国そしてセクター別のGHG排出量を調査し、世界の排出状況がどのように変化しているのか、インタラクティヴチャートから分析した。
先述の通り、中国、アメリカ、EUの上位3ヶ国の排出量は世界全体の41.5%を占め、下位100ヶ国の16倍ものGHGを排出しているという。
次にセクター別の排出分析では、1990年の調査以降、エネルギー部門(電力、輸送、製造、建設、その他)は、どのセクターよりも最もGHGを排出し続けていると指摘する。エネルギー部門の排出量は1990年から56%増加し、2017年には36,435.64MtCO2eとなり、世界全体の73%を占めたという。
農業部門の排出量は1990年から12%増加し、2017年の排出量は5,884.97MtCO2eだった。土地利用変化および林業部門の2017年排出量は3,217.07MtCO2e。産業部門は2,825.88MtCO2eで、すべてのセクターで1990年以降増加し続けている。
WRIは、「エネルギー部門の排出量が最も多いが、ネット・ゼロ実現に向けてはすべてのセクターで急速に減らす必要がある」と指摘する。
国別のGHG排出量(Climate Watchより)
最新データによると、1990年以降、年間平均1.7%増加してきた排出量は、2013年を契機にスローダウンし、年間平均0.7%増で推移している。この減速は世界経済が成長する最中に起こっており、WRIは「21世紀は経済成長とGHG削減のデカップリングが可能であることを証明している。しかし、排出量は依然として上昇傾向にあり、さらなる気候対策が必要である」と指摘する。
参照
WRI "This Interactive Chart Shows Changes in the World's Top 10 Emitters"
(Text:紺野 真冬芽)
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