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トヨタ脱炭素戦略の今後を、2021年3月期 決算発表から分析する

トヨタ脱炭素戦略の今後を、2021年3月期 決算発表から分析する

EnergyShift編集部
2021/05/17

トヨタ自動車は、2021年3月期決算説明会を5月12日にオンラインで開催した。トヨタの今後のカーボンニュートラル戦略を、発表記者会見から分析する。

強い危機感、終わってみれば減収増益

トヨタ自動車は、2021年3月期(2020年4月~2021年3月)の決算説明会を5月12日にオンラインでおこなった。各種報道されている通り、連結決算では営業収益が27兆2,145億円(前期比2兆6,519億円減)、営業利益は2兆1,977億円(同2,014億円減)、純利益は2兆2,452億円(同2,091億円増)だった。

会見では、新型コロナウイルス以外にも、世界的な半導体不足、昨年7月の集中豪雨、米国テキサスの記録的寒波が起こり、「有事の決算」であると説明された。

新型コロナウイルスの緊急事態宣言下での昨年5月、2021年の販売見通しとして、販売台数はトヨタ・レクサスで800万台、営業利益5,000億円としていたが、終わってみれば販売台数908.7万台、営業利益2兆1,977億円、純利益も10.3%増と、減収増益だった。4半期ごとでは、1期は大きくマイナス、2期は少し持ち直し、3期、4期は増益になった。


トヨタ 決算説明会 資料より

新型コロナウイルスやはもちろん、半導体不足等に対しても柔軟な危機対応力はさすがであり、「リーマンショックのときとは比較にならないほど危機に直面したときに現場が自律的に動けるようになってきた」(河合満Executive Fellow)とのことだ。

トヨタのカーボンニュートラルというチャレンジ

堅調な決算発表を終えたトヨタがいま、直面している大きな「危機」は、カーボンニュートラルへの対応ではないだろうか。オンライン記者会見での第二部、取り組み紹介はカーボンニュートラルの紹介で終始し、第一部と第二部のオンラインでの質疑応答も半分以上はカーボンニュートラルへの対応についてだった。

その中で繰り返されたのが、世界の地域ごとの状況によるサステナブルで実用的(プラクティカル)な対応だ。地域ごとの状況とは、エンドユーザーに電動化が求められているか、インフラは整っているか、各国政府の気候変動対策はどうなっているか、ということだ。

2030年、グローバルでBEV+FCEVを200万台見込む

質疑応答では各地域での2030年の電動車見込みの数字が紹介された。


トヨタ 決算説明会 資料より

この表を見ればわかる通り、日本ではBEV+FCEVで10%だが、欧州は40%とかなりの開きがある。「地域ごとの状況」(=カーボンニュートラルへの国ぐるみの対応)が反映されている。

これを見ても、トヨタはまだHEV、PHEVなどのハイブリッド車も需要があると考えている。質疑応答での解説では、2030年にはまだBEVは価格が高く、顧客はある程度限られる。一方、HEV、PHEVは主にコストの面でまだ求められていると見る。

「電動化比率だけを見るのではなく、2050年にカーボンニュートラルにすることが目標」

「電動化比率だけを見るのではなく、2050年にカーボンニュートラルにすることが目標」という発言も繰り返された。つまり、総合的にみてカーボンニュートラルであることが重要である、という認識だ。ここでいう「総合的」とはどういうことか。

たとえば、トヨタの持つ(コネクテッド)データによると、都市部は電動モーターでの走行が長くなり、50%は電動走行だという。こうした電動走行時の比率を上げることは考えられるという。

バッテリーに関しても、バッテリー性能だけを考えるのではなく、ソフトウェア的にバッテリー効率を上げる、また、車体のデザインまでを含めた「電費」の向上をすることで結果的にカーボンニュートラルに近づけるということだ。

プリウス販売から20年、トヨタはCO2排出抑制ではトップランナーを走り続け、これからもトップランナーであり続けると長田准執行役員は会見で述べた。

また、同会見で長田氏は、「今は技術をひとつに絞るのではなく、さまざまな選択肢にチャレンジしていくことが重要な時期」と述べた。e-Fuel、水素エンジン等の取り組みもその一環である。さまざまな技術にチャレンジし続け、地域ごとの需要にいかに応えるか。今はそうした時期であり、そのためのラインナップということだ。


2021年4月に発表された新EVシリーズ「TOYOTA bZ」

バッテリー生産に投資拡大 全固体量産は未定

一方、バッテリーについても多く質疑がおこなわれた。

上記の2030年電動車販売見込みを達成するには、生産設備への大きな投資が必要になってくる。

バッテリー生産量で言えば、現行のラインでは年間6GWhの生産能力を、年間180GWhに、EVラインは2ラインから60ラインになる。これだけの投資が必要だが、積極的におこなっていくという。


トヨタ 決算説明会 資料より

会見の質疑で岡田政道執行役員は希少金属の調達にも触れた。複数のパートナーとアライアンスを組んで調達はおこなわれ、そこにはパナソニックも含まれる。材料の確保と供給網には一層力を入れ、量とスピードの両立を目指す。また、開発のスピードを上げ、短いリードタイムで小刻みな開発をおこないたいと述べた。

また、前田執行役員はバッテリーの性能と安全性にも触れ、劣化問題にも言及。航続距離(エネルギー密度)と劣化、そして安全のバランスをとることが重要であり、トヨタはなによりも安全を最優先にするとした。

バッテリー劣化が避けられない仕組みとして、バッテリーへの負荷が激しい(スポーティな走り)場合は、電解質の濃度にばらつきが出ることがわかった。こうしたバッテリーの電圧、電流、温度をモデル化して、多重監視することでバランスを取る取り組みを続けると述べた。全個体電池に関しては、量産にはまだ時間がかかるとの見解だった。


トヨタ 決算説明会 資料より

これで、国内主要メーカーの3つ、ホンダ日産、トヨタの決算が出そろい、また、それぞれのEVへの取り組みも鮮明に旗色がでた。トヨタが言うように、「グローバル市場」といっても地域ごとにカーボンニュートラルの取り組みや進捗はかなり異なる。日本のメーカーとしてこの先の10年、各社がどう、脱炭素を戦っていくのか、目が離せない状況となる。トヨタの株価は決算発表日に2.2%上昇した。

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