日本政府が再生可能エネルギーの主力電源化の切り札と位置づけたのが、洋上風力発電だ。切り札とまで言い切ることに、その期待の高さが伺える。もちろん開発の本格化は2030年代以降となるが、いまから仕込まなければ間に合わない。そして洋上風力には国内外、様々な国や企業の思惑が絡んでいる。なぜか。日本の洋上風力市場にはポテンシャルがあるからだ。では、どれだけのポテンシャルがあるのか。ゆーだいこと前田雄大が、今回は日本の洋上風力の本当のポテンシャルについて解説する。
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筆者が政府にいるころから、日本の脱炭素の鍵は洋上風力と、そしてエネルギーの固定化、この2つだとずっと言ってきた。個人的に特にイチオシなのが洋上風力だ。
政府も再エネ主力電源化の切り札、とまで言い切る洋上風力には、国内外、様々な国・企業の思惑も絡んでくる。例えば、イギリスが虎視眈々と日本市場を狙っていると解説したが、なぜか。
日本の洋上風力市場にポテンシャルがあるからだ。ポテンシャルもあるし、日本政府の金も落ちる。だからこそ、狙いどころになるわけだ。
では、どれだけのポテンシャルがあるのか? 疑問に思われる読者も多いだろう。そう、日本のポテンシャルはかなりすごい。そこで今回は、日本の洋上風力のポテンシャルを紹介した上で、次の6つの論点について解説していきたい。
まずは、日本の洋上風力のポテンシャルから解説していこう。
10月7日・8日に世界風力会議(GWEC)の「世界洋上風力サミット 日本」に登壇したGWECのAlastair Dutton氏の発言が話題になっている。オンライン講演を紹介した日経クロステックの記事によると、日本は1,897GW(着床式122GW、浮体式1,775GW)の洋上風力のポテンシャルがあり、日本の現在の年間電力消費量のなんと7.5〜8倍になるというのだ。ちなみに、GWECのウェブサイトで公開されている日本の洋上風力ポテンシャルの資料と同じ数字であり、この数字は公式のものと考えていいだろう。
半端ない数字であり、一気に日本の脱炭素問題が解決するレベルのポテンシャルだ。筆者の持論として、日本はエネルギー自立のみならず、輸出国になれると言い続けてきたのだが、それも夢ではない数字である。
もちろん、これはあくまで理論上の可能値であり、そのまま鵜呑みにできる数字ではないが、一方で、洋上風力は陸上風力に比べても有望視されていることは世界の潮流でもある。特に陸地面積が狭く、まわりを海で囲まれている日本ではなおさらだ。何せ日本は排他的経済水域世界第6位の海洋大国である。
日本のグリーン成長戦略でも洋上風力への期待は謳われている。
この点について、環境省では2019年に日本の洋上風力がどれくらい導入可能かについて調査を委託し、報告書にまとめている。
報告書によると、日本の洋上風力の導入ポテンシャルは、着床式が337.34GW、浮体式は782.88GW、合計1,120.22GW。年間発電量は浮体式・着床式あわせて3,460.7TWh。日本の国内電力消費量は2020年で905TWh、平均およそ1,000TWhなので、なんと日本3つ分がまかなえる。日本政府もそういう数字を出している。
この3,460.7TWhのポテンシャルは、陸地から30km以上であったり、風速6.5m/s未満、水深200m以上、海域公園では開発できないという条件での算出になっている。割と制約をかけて抑制的に出しても、これだけの数字になるということだ。
ちなみに、環境省試算ではこの条件から「陸地から30km」の条件を外した数字も出している。それによると、年間発電量は1万1,272.2TWh。日本の年間発電量を10掛け合わせてもおつりが来る、というすごい数字だ。後段で解説する浮体式洋上風力の技術革新如何では可能になるということで夢のある数字になる。
こうしてみると、環境省のデータ、GWECのデータ、ともにみても、日本の洋上風力には非常に大きな「ポテンシャル」があると十分に言えるだろう。では、実際の開発はどうなっているのか。次に、日本の洋上風力発電の現状について見ていきたい。
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