トヨタ自動車は2021年12月15日、「バッテリーEV戦略に関する説明会」を実施し、2030年までにバッテリーEV(BEV)のグローバル販売台数で年間350万台を目指すと発表した。2030年までに30車種のバッテリーEVを展開する。発表では、2022年から発売するEVコンセプトモデル15車種を一気に公開し報道陣を驚かせた。
しかし、その一方で「トヨタは脱炭素に消極的」「日本の自動車産業が世界に置いていかれる」といった指摘も耳にする。トヨタは、脱炭素とどう向き合い、どこを目指していくのか。トヨタの取り組みを追ってみた。
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トヨタは30年以上にわたりCO2排出量を削減し、カーボンニュートラルを実現するための技術革新と投資を行ってきた。1997年に世界初の量産ハイブリッド車(HV)「プリウス」を世に送り出したが、その前からバッテリーEVの開発は始まっていた。
1996年に初のEVとなる『RAV4 EV』を開発して市場投入。だが、当初、同社のEVは航続距離の短さや充電インフラ不足などの理由で、一般ユーザーには受け入れられなかった。いち早くHVを世の中に出し、電動車両に力を入れてきたトヨタであったが、EVなどの電動車両で他社に遅れをとっているとの声もあがっていた。
その後、買い物や通勤など、街中や近距離の移動のために開発した小型EVコミューター「e-com」の実証を開始。2012年に、超小型EV「COMS」や小型EV「eQ」を導入し、バッテリーEVの可能性を追求してきた。
そして、2021年2人乗りの超小型EV「C+pod」と、3輪BEVの歩行領域モビリティ「C+walk T」を発売した。現在、グローバルでHV(ハイブリッドカー)、HEV(ハイブリッド式電動自動車)、PHEV(プラグインハイブリッドカー)、FCV(燃料電池車)、BEV(バッテリー式電動自動車)の電動車両を55モデル販売し、年間販売台数は200万台を超えている。グローバル新車平均CO2の2020年実績は2010年比23%削減(図1)。2050年にはグローバル新車平均CO2排出量を90%以上削減することを目標に掲げる。
図1:これまでの取り組み(2020年実績)
出所:「トヨタ環境チャレンジ2050 」
先にも述べたが、トヨタは2030年にバッテリーEVのグローバル販売台数で年間350万台を目指す。レクサスは、2030年までにすべてのカテゴリーでバッテリーEVのフルラインナップを実現し、欧州、北米、中国でバッテリーEV100%、グローバルで100万台の販売を目指す。2035年にはグローバルでバッテリーEV100%を掲げている。
次世代のモビリティの在り方を象徴するモデルとして、2018年に発表した「e-Palette」を含め、EVの開発を加速する。
トヨタはEV市場を本格的に攻めつつ、水素技術にも取り組む。1990年代、バッテリーEVと同時に開発が始まったのが、水素で走る燃料電池自動車だ。水素エンジンは、ガソリンの代わりに水素を燃やしてエンジンを動かす。燃えやすい性質で、燃やしても水しか排出されない水素は、脱炭素社会に向けた“夢の燃料”と言われる。
トヨタは、水素社会の実現は個々の技術の進化に加えて、「つくる・はこぶ・つかう」というすべてのプロセスを繋げることが重要だと考える(図2)。
図2:水素の「つくる・はこぶ・つかう」
スーパー耐久シリーズ2021 鈴鹿大会での水素の「つくる」「はこぶ」「つかう」
出所:トヨタ自動車
2021年5月、最初の挑戦となった富士のレースでは水素を「つかう」ための選択肢を広げ、2回目の挑戦となるオートポリスのレースでは水素を「つくる」ための選択肢を広げることに注力し、「水素エンジン」を搭載した「カローラスポーツ」を完走させた。9月に開催されたレースでは、水素を「はこぶ」をテーマにし、世界初の液化水素運搬船でオーストラリアから日本に水素を運ぶ実証を行った。水素を液体にして「ためる」ことにも取り組む。
さらに、12月2日、トヨタの欧州法人が突如として水素エンジン搭載のコンセプトカー「GRヤリス H2」を公開した。現在EV化がトレンドとなっている欧州にトヨタの水素エンジン開発をアピールした。
IEAは2021年11月に出した報告書で「水素は有望な低炭素の輸送燃料としてみられてきたが、輸送燃料の構成の1つとして定着するには難しい状況が続いている」と指摘した。燃料インフラが十分に整備されたとしても、航続距離、販売価格、維持費などの面でガソリン車やEVと競争できる車両を製造する必要がある。トヨタは水素エンジン車の量産時期はまだ言える段階にないとしている。技術は前進しているものの、市販化するには品質や安全性などまだ確認すべきことが多いという。
トヨタは従来、BEV以外にPHEV、FCVなどの開発も同時に進める、いわゆる「全方位戦略」をとっているわけだが、どの電動車に軸足を置くにしても、鍵を握るのは車載電池の開発・生産だ。
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