気候変動に立ち向かうグッチの環境戦略ポートフォリオが進化し、完全なカーボンニュートラルに加えて、環境再生型農業支援を推進する。
2021年1月27日 ミラノ ─ グッチはカーボンニュートラルを達成してきた自社の環境戦略をさらに発展させ、「ネイチャー ポジティブ」なソリューション(自然の力を活用したソリューション)への取り組みをスタートしていることを発表した。グッチの新たな「環境戦略ポートフォリオ」では、重要な森林やマングローブ林を保護および再生するとともに、自社のサプライチェーンにおける環境再生型農業に投資し、より広範囲から自然環境のポジティブな変化を生み出すことを目指している。
2018年以降、グッチは自社の事業活動とサプライチェーン全体においてカーボンニュートラルを実現しており、温室効果ガス(GHG)排出の回避・削減を最優先にしながら、さらに年次ベースで残存した排出量を自然に根ざしたソリューションによってオフセット(相殺)してきた。このたびの新しい環境戦略では、引き続き排出の回避・削減を優先しつつ、同時に生物多様性と気候にポジティブな変化をもたらすことを目的に、サプライチェーン全体の改革を推進してゆく。
グッチの社長兼CEOであるマルコ・ビッザーリ氏はこの発表にあたって次のように述べている。
「グッチは気候変動に対する戦略を、一連の明確なアクションを組み合わせて発展させます。引き続きサプライチェーン全体にわたって二酸化炭素排出を抑えて温室効果ガスを低減し、カーボンニュートラルを維持します。同時に、もうひとつの重要な柱として環境再生型農業への投資を行います。グッチの新たな『環境戦略ポートフォリオ』はサイエンスに基づいており、気候変動を緩和する重要な生態系を保護および再生することで、生物多様性と気候を将来にわたって持続可能にするものです。私たちは、自然を気候変動の犠牲者から気候に変化をもたらす原動力へと変えるための具体的な活動とシステムを広めることが、地球温暖化へのソリューションのひとつになると考えています。この方法は、最終的に私たちの地球の未来を救うことになるでしょう」。
・重要な森林の保全
環境損益計算書(EP&L)の年次会計によると、グッチは2018年から2019年の間に温室効果ガス総排出量を18%削減(成長比)。温室効果ガスプロトコルのスコープ1、2、3にあるカーボンニュートラルに対するコミットメントを継続するため、2019年の残存する温室効果ガス排出量(二酸化炭素換算1,369,000トン)を、約1,195,000ヘクタールの重要な森と生物多様性の保全によって相殺した。同社はConservation International(コンサベーション・インターナショナル)によるケニアのチユル丘陵REDD+プロジェクトおよびSouth Pole(サウスポール)によるジンバブエのカリバREDD+プロジェクトへの資金提供を通じて、気候変動を緩和し、絶滅危惧種の野生生物と生息地を保護するとともに、地元のコミュニティに経済的および社会的にポジティブな影響をもたらしている。
・マングローブ林の再生・保全
上記の2019年度の排出量相殺に加え、グッチはSouth Poleによるホンデュラスのモスキティア ブルーカーボンREDD+プロジェクトに資金提供している。このプロジェクトにより約5,000ヘクタールにおよぶマングローブ林と285,000ヘクタール以上の森林が伐採から保護されることになる。マングローブ林は成長した一般的な森の最大約10倍の炭素を蓄えることができるが、世界のマングローブ林の30~50%が既に失われ、毎年2%ずつ消滅し続けており、この生態系がダメージを受け破壊されてしまうと、膨大な量の二酸化炭素が大気中に再排出されてしまうため、同プロジェクトが気候変動改善の一助となることが期待される。
・環境再生型農業を通じた土地管理の向上
環境再生型農業への広範囲で長期的な戦略の第一歩として、グッチは、Conservation International、South PoleそしてNative(ネイティブ)と共同で環境再生型農業プロジェクトの実行可能地域の特定と規模拡大を目的とした調査を進行し、グッチ製品に再生可能な原材料を供給することを目指している。グッチはサプライチェーンだけでなく、生産者に対しても「カーボンファーミング」を通じて環境再生型農業に切り替えるよう奨励。その一環として、まず、Nativeによる最新の再生型プロジェクトに直接資金を提供し、今後5年間で世界各地の3,075ヘクタールにおよぶウールとレザーの生産地で約25,000トンの二酸化炭素の排出抑制を目指している。このプロジェクトでは、最終的に合計32,000ヘクタール以上の土地の再生型への転換を促し、さらに200,000トンの二酸化炭素の排出を抑えることが可能になる。一例としてグッチはパタゴニアの羊毛生産者に1,800ヘクタールの牧草地を再生型に転換するための資金を援助し、土壌の健康状態、水質、生物多様性の向上、動物福祉のベストプラクティス、二酸化炭素排出の抑制を長期的に推進している。こうした取り組みにより、グッチは、伝統的にファッションの原材料生産の主流である化学物質に依存してきた農業から、自然を消耗させるのではなく、自然を再生し強化する農業システムへの移行を提唱している。
包括的な環境戦略のもと、グッチはサプライチェーン全体で温室効果ガス排出の回避および削減に取り組んでいる。2019年には持続可能な製品のデザイン・製造方法を採用することにより温室効果ガス排出量を二酸化炭素換算266,000トン削減(過去2年間で二酸化炭素換算706,125トン削減)するとともに、グッチのサプライチェーンの影響の大きい分野において以下の計測可能な改善が見られている。
・再生可能エネルギーへの切り替え
グリーンエネルギーへの切り替えにより二酸化炭素換算59,000トンを削減。ショップ、オフィス、ウェアハウス、ファクトリーのグリーンエネルギー使用を2022年に100%とする目標に対し83%まで到達。またグッチのサプライヤーがグリーンエネルギーへ切り替えるための設備資金を援助している。
・製造効率
レザーのメタルまたはクロムフリーのなめし加工、グッチ スクラップレス プログラム、Gucci-Up プログラムなどを導入し、製造工程における持続可能性や効率の向上、発生する廃棄物の削減により、二酸化炭素換算3,000トンの排出を回避している。
・サステナブルな原料調達
コレクションに持続可能な方法で調達したリサイクル素材やオーガニック繊維の使用を増やすことにより二酸化炭素換算179,000トンを削減。2025年までにサステナブルな原料調達を100%にする目標に向けて前進している。
・循環性
ナイロン、コットン、カシミヤ、ポリエステル、貴金属、プラスチック、パッケージについてリサイクルおよび再生された素材の使用を拡大し、二酸化炭素換算13,000トンの排出を削減するとともに、循環型経済をサポート。また、Gucci Circular Linesからの初のコレクション「Gucci Off The Grid」をローンチした。さらにThe RealRealとのパートナーシップのもと、持ち主の手を離れたグッチ製品をオンラインショップで販売するといった新たな循環型ビジネスモデルを創造している。
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