ブルームバーグNEFによると、世界の環境・社会・ガバナンスを目的としたESG債の累積発行額が3兆ドルを突破した。最初の1兆ドルに到達するまで12年、次の2兆ドルに達するまで2年弱、そしてこの3兆ドル到達まではわずか8ヶ月という早さだ。
ソーシャル・ボンドの発行額が2020年だけで1,500億ドル近くに急増し、2019年比は720%増。この急増は2021年も続いており、2021年1月から5月までで1,280億ドルの債券が発行された。ソーシャル・ボンドの多くは新型コロナウイルスに起因しているもので、政府機関、国を超えた団体によって多くが発行されている。
ESG債のうち、ソーシャル・ボンドだけが急増しているわけではない。2020年の1−5月と比べて2021年のサステナビリティ・ボンドは320%増、グリーン・ボンドは142%増、最近注目されているサステナビリティ・リンク・ボンドは253%の伸びを示した。
格付機関ムーディーズによると2021年に発行されるESG債は約6,500億ドル以上の予想で、これが債券全体に占める割合も2020年の5.5%から、8%〜10%まで増加する見込みだという。
最近注目されているのが、サステナビリティ・リンク・ボンドだ。この手法では、資金使途をほかのESG債のように特定事業に定めない。そのかわり、企業は環境などの目標値を設定し、達成の有無で利率や償還の時期が変わるもの。S&Pグローバルでは2021年のサステナビリティ・リンク・ボンドの発行額は500億ドルになると予想している。
フランスのトタルは今年2月、すべての新債券をサステナビリティ・リンク・ボンドにすることを発表した。今後の投資家への支払いはスコープ1,スコープ2の排出量に依存することになる。トタルのCEO、Patrick Pouyanné氏は、決算説明会で「目標を達成できなければ、当社は負債の上昇によって罰せられ、(社債保有者は)報われることになる」と述べた。
こうした使途目的を定めないサステナビリティ・リンク・ボンドがさらに増える見込みで、イタリアの電力大手エネルも32億5,000万ユーロを調達した。
日本では昨年10月、不動産大手のヒューリックが日本初のサステナビリティ・リンク・ボンドを発行した。ヒューリックの設定目標はRE100の達成と東京・銀座8丁目開発計画における日本初の耐火木造12階建て商業施設の竣工。両方、またはいずれかの目標が未達になった場合、投資家に支払う利息(クーポン)の利率は0.1%上乗せされる。今年にはいって3月には野村総合研究所(NRI)が、5月にはANAホールディングスがサステナビリティ・リンク・ボンドをそれぞれ発行している。
いま、投資家がリスクとして捉えているのが、グリーン・ウォッシュだ。発行体が環境面での信頼を誇張することであり、投資家の監視が強くなってきている。
これは国家の規制当局間でのグリーン・ボンドの定義にもかかわってくる。中国では今年のグリーン・ボンド発行額は230億ドル(248%増)であり、過去最高になっているが、Climate Bonds Initiativeの中国プログラムマネージャーであるXie Wenhong氏によると、グリーンと見なされる国際基準を満たしているものは半分以下になるという。
中国のグリーンボンド債 Source: Bloomberg
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