私たちはふだん、何気なくお金を金融機関に預けている。しかし、預けたお金がどこに投融資されているのか、気にすることは少ないのではないか。金融機関によっては、預けたお金が気候変動問題の原因になる事業に投融資されている。そうであれば、その金融機関にお金を預けることを考え直すことも必要かもしれない。Fridays For Future Tokyoの黒部睦氏は、こうした個人の取組みもまた社会を変えるという。
皆さんは「ダイベストメント」という言葉を聞いたことがあるだろうか。これまでもエナシフで何度か取り上げられてきた話題なので、知っている方も多いと思う。ただ、世間一般では聞き慣れない言葉だと思うので、今一度簡単に説明する。
自分が銀行や金融機関に預けたり、運用するために投資したお金の行き先を考えたことはあるだろうか。銀行などの金融機関は、私たちから預かったお金を様々な事業に投融資し、運用する。もしかしたら、そんなつもりはなく預けた自分のお金が、回り回って気候変動を加速するような化石燃料事業に振り向けられているかもしれないのだ。
そこで生まれた運動が「ダイベストメント」。この言葉は、「投資」を意味するインベストメントと対になり、「投資撤退」などと訳されている。
預金を、化石燃料や原発などを支援している金融機関からダイベストし、そうした産業を支援していない「クールバンク」に乗り換えることを「ダイベストメント」という。私たちは、金融機関が気候変動を加速するような事業ではなく、再エネなどの脱炭素を実現するサステナブルな事業を支援するよう、預金者・顧客として声を届けることが大切なのだ。
(350jp.org HP「Let’s DIVEST」より)
この「ダイベストメント」というムーブメントは、大学が寄付基金を化石燃料企業に投資していたことを突き止め、そのような企業から投資を撤退してほしいと大学に訴えた数人の大学生から始まったそうだ。このような草の根の運動が、今や世界中で広がりを見せている。
ドイツのNGOであるUrgewaldの調査によって、2018年10月〜2020年10月の間に世界の石炭火力発電の開発企業に対して融資を行った世界の金融機関のうち、日本の3メガバンクがトップ3を占めていたことが明らかになった。
(350jp.org HP「Let’s DIVEST」より)
このことを受けて、Fridays For Futureでは昨年3月にみずほ銀行前で石炭産業からの融資撤退を求めるスタンディングアクションを行った。
Fridays For Future TokyoのFacebookより
その後、MUFGは2019年、SMBCグループとみずほFGは2020年、「原則、新規石炭火力発電所向けの融資を行わない」との方針を掲げたが、「支援表明済み案件」として、2020年12月、ベトナムのブンアン2石炭火力発電事業への協調融資を決定したとみられ、国際的な批判を浴びている。このように各金融機関は少しずつ変わり始めているが、まだまだ抜け穴があるのが現状だ。
ここからは、350jp.orgの「Let’s DIVEST」キャンペーンページ で紹介されているダイベストメントの具体的なアクション内容を簡単に紹介する。
実際に口座を移すのが難しい人でも参加できるのが、「ダイベスト宣言」だ。「私の預け先の金融機関が、地球温暖化を加速するビジネスを止めない場合、”地球にやさしい預け先”に預金等を乗り換えます」と金融機関に伝えるアクションである。電話やHPのお問い合わせページで意見を伝えることで、誰でも簡単に短時間で大手金融機関に環境に配慮した行動を促すことができる。ローコストハイリターンなアクションでお得感満載である。
そして、実際に口座を移せる人は「クールバンク」と呼ばれる金融機関に移し「ダイベストメント」をおこなえる。「そんなこと言われても、どこがクールなのかわからないよ、、、」と思った方にもってこいのランキングまで用意されているので、ぜひ参考にしてもらいたい。
(350jp.org HP「Let’s DIVEST」より)
そして最後には、「ダイベストしたぞ!」という報告をしてほしい。多くの人からこういった声が集まることが、大手金融機関に環境に配慮した行動をより力強く促すことに繋がる。その一翼をあなたも担ってみるのはどうだろうか。
このダイベストメント、一見学生にはハードルが高く難しそうに聞こえるかもしれない。しかし、むしろ学生の方が、このダイベストメントをおこなうチャンスがあると思う。
私は大学生になって初めて、自分で銀行の口座を作りに行った。それまでは親が作った銀行の口座にお金を預けていたが、その銀行は3大メガバンクのうちの1つだった。これはダイベストメントの大チャンス!!! そう思って先日、もともと使っていた口座を閉じてきたのだ!
学生になり自分で働き始める過程で、銀行口座を作ることになる人も多いと思う。そんな時、ぜひこのダイベストメントというアクションを思い出してほしい。また、「この銀行にしてね」と指示があった場合は、口座を開設する時に「本当は石炭に融資しているからほかの銀行にしようかなと思ったんですけど、、、」などと言えてしまったら、もう最高の極みである。顧客から直接そんな言葉をかけられたら、無視はできないだろう。
余談だが、最近、環境活動家の小野りりあんから、「レッツ ダイベスト」とマジックマッキーで書かれたTシャツを着なくなったということで譲り受けた。今もそのTシャツを着ながら、この記事を書いている。そして学校の課題で動画を撮影する際や、ミーティングに出席する際もこの服を着ていることがある。
「地球のために、自分ができることから少しずつ取り組んでいこう」とよく言うが、正直もうそれでは間に合わない。かと言って、無理をしてしまっては持続的なアクションにならない。「自分ができること」をやることが大事だが、それは少しずつではなく、「自分にできること」は絶対にやってほしいと思うのだ。ひとりひとりのそのアクションが、ひとりひとりの大切な声となり、集まって大きな民意になり、早急に社会を変える力になるからだ。
このダイベストメントというアクションが、もっと簡単にできる身近な行動の1つとして広まってほしいと思う。そしてこのアクションが、近いうちに大きな効果を出すこと祈り、今後もこのアクションを広めていきたいと思う。
皆さんも一緒に、レッツ ダイベスト!!
参考
350jp.orgの「Let’s DIVEST」キャンペーンページ
気候ネットワーク「【共同プレスリリース】日本の金融機関が石炭産業への融資総額で世界第1位に 3メガバンクが2回連続でトップを独占(2021年2月25日)」
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