今の時代「世界で最も持続可能な企業」という言葉は、これ以上ないセールストークかもしれない。持続可能性という点で企業の評価を行う「Global 100 Most Sustainable Corporations in the World (Global 100 Index)」において、シュナイダーエレクトリックが首位に輝いた。年間の収益が10億ドルを超える世界の大企業8,080社の中でもっとも高くされた、同社の取り組みとは?
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2021年1月25日、カナダの出版社Corporate Knightsが、毎年恒例の「Global 100 Most Sustainable Corporations in the World (Global 100 Index)」を発表した。今年は評価対象の基準が変わり、上場企業のうち売上額が10億米ドル超の企業が対象とされた。対象企業は、世界の8,080社だ。
首位となったフランスを本拠とするシュナイダーエレクトリックは、エネルギー転換やマネジメント、産業オートメーションに関するソリューションを得意とする。1836年にシュナイダー兄弟がフランス、ル・クルーゾの鉱山と鋳造所を買収したことからスタートし、今や全世界で事業を展開している。「Life Is On」というコンセプトを掲げ、「あらゆる人がエネルギーや資源を最大限活用することを可能にし、世界の進歩と持続可能性を同時に実現すること」を目指している。
今回、高く評価された理由は、収益の70%が持続可能なソリューションによるものである点に加え、投資の73%を同じく持続可能なプロジェクトに対して行った点などが評価された。また、人種や性別の多様性、資源の生産性と安全性についても高い評価を得ているということだ。
出典:Top company profile: Schneider Electric leads decarbonizing megatrend
Corporate Knightsは、同社の提供する脱炭素化のソリューションは、今後数十年にわたってメガトレンドであり続けると表現した。つまり、送配電網やデータセンター、分散型グリッド設備などをよりスマートに、再エネ化かつデジタル化するシュナイダーエレクトリックのサービスが、これからも主流であり続けるということだ。
シュナイダーエレクトリックのサステナビリティ担当上級副社長のGilles VermotDesroches氏は、今回のランキング首位となったことにあたって、「私たちは、自社の運用とエコシステムの中で模範を示してリードすることを目指しており、お客様のためのソリューションの一部となるよう努めています。持続可能性は、パフォーマンス、革新性、そして職場としての魅力を向上させます。そのことが、価値を生み出しているのです」と述べている。
シュナイダーエレクトリックの2019年の事業収益は、272億ユーロ。そのうち77%がエネルギー関連のサービスによるものだった。売上の大半を占めるエネルギー関連サービスは、前年比5.2%の伸びだ。地域別にみると、北米とアジア圏での売上がともに29%、欧州では26%となっている。
今後のアジア市場の成長を見込み、2020年11月、シンガポールに支社を開設した。もちろん日本市場への参入も目的のひとつだ。日本を含むアジア市場において、再生可能エネルギーへの転換やデジタル化、サステナビリティ志向の強まりを受けた動きだと考えられる。2018年には、シンガポールのマリーナ・ベイ・サンズで同社の取り組みをPRするイベント「Innovation Summit Singapore 2018」を開催していた。
シュナイダーエレクトリックが注力している事業の1つに、データセンターのエネルギー効率化がある。近年、アジア地域でデータセンターの整備が進んでいるということもあるだろう。
シュナイダーエレクトリックが本格的に持続可能性に軸足を置いた経営に力を入れたのは、2015年のパリ協定がきっかけだった。パリ協定が合意されたCOP21の会期中に、気候危機への対応を支援するという決議を行ったという。
とはいえ、パリ協定以前の15年前から、「Schneider Sustainability Impact」という情報開示を続けている。これは持続可能性に関する取組みで、数字では表せないものに関する情報開示だ。3年から5年という中期的目標を設定し、気候、循環経済、健康と平等、倫理、開発という5分野それぞれにおいて定めたKPIの達成率を開示している。2018年―2020年の気候分野では、2020年までに再エネ調達を80%、輸送による排出量の10%削減などを目指すとしており、トータルのスコアは、2019年末時点で、10点満点中7.77点である。
出典:Non-financial results Q4 2019
また、包括的事業成長戦略として、2030年までに非電化エリアの8,000万人に対し、エネルギーへのアクセス手段を提供することを目指している。世界には、エネルギーへのアクセスが十分でない人々が23億人存在するといわれている。気候変動対策には、彼らに対するケアも含まれなければならないというのが、シュナイダーエレクトリックの考えだ。
カーボンニュートラルは2025年の達成を見込んでおり、サプライチェーンを含むスコープ3の排出量は2030年までに35%削減を目指している(2017年比)。
2021年は、同社のアジア市場における活躍が期待される。日本を含むアジアの再エネへのシフトとエネルギー使用の効率化に向けて、シュナイダーエレクトリックのソリューションが、どこまで脱炭素を支えていくのか、注目される。
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