元ドコモコンテンツ担当部長のサブスクはサステナブルのはじまり 第2回 | EnergyShift

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元ドコモコンテンツ担当部長のサブスクはサステナブルのはじまり 第2回

2021年09月29日

サブスクで成功する最低限の条件

こういう光景を目の当たりにして、取り放題の着メロサービスは、原価積み上げでサービスを考えていたら、思いつかないサービスだったので、新規ビジネス開発は、着想と発想の転換が必要なんだと初めて教えられた、今から、約20年ばかり前の出来事である。繰り返しになるが、この着メロ取り放題スタイルが、現在流行りの、聴き放題や取り放題サブスクサービスの原型なのでは無いかと考え深げに思う。

サブスクモデルの基本は投資の回収と値付けに集約されるが、そのまえに、以下の5つを

まず考えることを推奨しておく

  • 消費しても原価がないものまたは償却が済んだもの
  • 原価があっても、定額設定の採算分岐以上に使い切れない可能性
  • ヘビーユーザーを賄えるだけの全ユーザー数を集められるマーケティング力
  • 対象ユーザーにとって財布に優しい定額値付け
  • 売り切りモデル以上にサービス運用の活性化は必須

さらに、これはここに書くべきか悩んだのだが、一番ありがたいというか利益が出るのが

  • 会費だけ払って、権利行使しないお客さんが一定数いること

通称「死に会員ビジネス」と呼ぶ人もいるが、表現はあれだけど、間違いなくこの人たちが潜在しそうなサービスは確実に利益率が上がります。カワイイ?表現だと、幽霊会員とも呼ばれる。値段が安すぎて気にしないとか解約し忘れてるとかも含みます。

3G(FOMA)サービスが開始。リッチコンテンツ始まる

さて、その後iモードユーザーが劇的に増加していった事もあり、iモードのコンテンツのサブスクモデルは好調に進歩していった。サブスクモデルの事業は通常の事業と違い、急激に会員数が減ることは可能性としては低く、一旦、ビジネスとして立ち上がると、ある程度の売り上げと利益が読みやすく、つまり安定収益になる事業となるため、各社コンテンツプロバイダーさんからは非常にありがたがられた。

ところが、提供するコンテンツ(サービス)自体の権利処理関係の形態から、月額課金ではなく、ユーザーがそのコンテンツを欲しいときにその都度、課金する方法(つまり購入時のみ課金する方式)を懇願されるコンテンツプロバイダーさんも見られ始めた。と言っても、情けないことに都度課金するシステムが、実は当時のドコモには無く、あらたに開発が必要であったのだ。普通のコンテンツサービスであれば、買い切りモデルの都度が基本で、サブスクが発展形という感じで逆なのだが、そこがやはりドコモの特殊性だったわけだ。

コンテンツの権利関係が複雑というのは、着メロサイトとはまた別の、音楽業界のコンテンツプロバイダーさん達で、そのコンテンツというのが、当時大ヒットした、着うたなのだ。時代がうまく噛み合ったと言うか、ちょうど、着メロよりはるかにリッチコンテンツである着うたが出始めた頃に、通信速度が強化された3G(ドコモで言うFOMA)が普及し始めており、着うたサービスのマーケット売上も急激に成長していくこととなる。

単音や2から128音程度の音楽風メロディーだった着メロと違って、着うたの音源はデータ量が大きすぎて、2Gサービスだと着うたを1曲ダウンロードするのにかなりの時間がかかってしまう。しかし、3G(FOMA)サービスが開始されたので、1曲のダウンロード時間が一気に短縮された。つまり、コンテンツプロバイダーやユーザーのニーズに技術が追いついた結果が、着うたというサービスが流行った要因なのだ。ちなみに音楽のダウンロードサービスはPHSがあった時代にも存在したのだが、ダウンロード時間があまりにも長いため全く流行らなかった。

まさに、時代がこの着うたサービスを待っていたかのように、普及し始め、ドコモとしても、iモードサービスにダウンロードの度に課金できる都度課金の仕組みを入れる事になり、瞬く間に着うたサービスは普及していった。もちろん、その後、フル楽曲をダウンロードできるようにもなり、ケータイで音楽をダウンロードして聴くことが当たり前になったのは言うまでもない。

ただ着うたに関しては、前出のように権利処理関係が複雑で、サブスクモデルに移行できないでいたのだ。

時代が早すぎても失敗する例。着うたの取り放題サブスク・・・次のページへ

山口善輝
山口善輝

株式会社リクルートにプロパー入社。新規事業開発を経てマーケティングビジネス事業部でマーケティング関連の営業を主務とする。1999年5月に株式会社NTTドコモに転職。iモードビジネス部を経て、コンテンツ&カスタマ部にて、iモードおよびドコモのモバイルコンテンツの開拓及びシステム支援を担当。iモードのコンテンツの責任者として、長らくiモードの成長に貢献。NTTドコモ退社後、フィールズ株式会社取締役、プライムワークス株式会社(現JNSホールディングス株式会社)取締役、株式会社ディースリー取締役、株式会社フューチャースコープ取締役、株式会社角川春樹事務所取締役、株式会社マーベラス取締役などを歴任。モバイル分野のみならず、広くゲーム及びIT系全般そして、コンテンツ、eコマース及び権利ビジネス等に詳しく、豊富な人脈によるアライアンス及び数多くの新規ビジネスを現在も立ち上げ続けている。

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