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英国政府、25万人の雇用創出に向け、グリーン産業革命を発表

英国政府、脱炭素化を推進 25万人の雇用創出に向け、グリーン産業革命を発表

2020年11月26日

ガソリン・ディーゼル車は2030年に販売禁止へ

英国のボリス・ジョンソン首相は2020年11月18日、2050年カーボンニュートラルの実現を目指し、洋上風力や水素、次世代原子力の技術革新、さらに2030年までにガソリン・ディーゼル車の新車販売を禁止する、野心的な10項目の計画を含む「グリーン産業革命(Green Industrial Revolution)」を発表した。英国政府は10項目の計画に対し120億ボンドを投じ、25万人のグリーン雇用の創出を支援するという。

120億ポンドを投じ、最大25万人の雇用を創出する

英国のボリス・ジョンソン首相は2020年11月18日、最大25万人の雇用を創出し、支援する「グリーン産業革命」のための野心的な10項目の計画を発表した。

この計画は、洋上風力や水素などのクリーンエネルギー、輸送、自然、革新的な技術を網羅しており、英国が2050年までに温室効果ガスの実質排出量ゼロを実現することを可能にするものだという。また、2021年に英国グラスゴーで開催される国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)に向けて、特に重要になるとした。

野心的な10の計画は、国全体でレベルアップするというジョンソン首相のミッションの一部だ。120億ポンド(約1兆6,560億円)の政府投資を動員して、最大25万人のグリーン雇用の創出し、2030年までに民間セクターから3倍以上の投資を促す。

北東部、ヨークシャー、ハンバー、ウェストミッドランズ、スコットランド、ウェールズを含む英国産業の中心地で、グリーン産業革命を推進し、グリーン雇用と産業の構築を目指すというものである。

英国の強みを中心に構築されたグリーン産業革命とは

英国の強みを中心に構築された10項目は次の通りである。

洋上風力
英国のすべての家庭に電力を供給するのに十分な洋上風力を導入する。2030年までに導入量を現在の4倍となる40GWにし、最大6万人の雇用をサポートする。

水素
産業、輸送、電力、家庭向けに2030年までに5GW規模の低炭素水素発電の開発を目指す。家庭向けでは水素を利用して暖房や調理を行う住宅の試用を進め、2023年に水素を利用した住宅区域、2025年には住宅地域へと拡大し、2030年までに数万世帯に相当する水素タウンの開発を目指す。最大5億ポンドを投じ、このうち2億4,000万ポンドが新たな水素製造施設に投資される。

原子力
クリーンエネルギー源として原子力を推進し、大規模な原子力から、1万人の雇用を創出することができる次世代の小型モジュール炉(SMR)の開発を目指す。投資額は5億2,500万ポンド。

電気自動車(EV)
ミッドランド西部や北東部、北ウェールズを含む、世界をリードする自動車製造拠点を支援してEVへの移行を加速し、EV普及に向け社会インフラを変革する。

公共交通機関、サイクリング、ウォーキング
サイクリングとウォーキングをより魅力的な移動手段にするとともに、将来のゼロエミッションの公共交通機関に投資する。

ゼロエミッション航空とより環境に優しい海運
ゼロエミッション航空と海運の研究プロジェクトを通じて、脱炭素化が困難な産業がより環境負荷が小さいものとすることを支援する。

住宅と公共施設
2030年までに5万人の雇用を創出し、2028年までに毎年60万台のヒートポンプを設置する目標を掲げ、住宅や学校、病院をより環境負荷が少なく、より暖かく、よりエネルギー効率の高いものとする。投資額は10億ポンド。

CO2の回収・貯蔵
大気中のCO2を回収・貯蔵する技術の世界的リーダーとなり、2030年までに1,000万tのCO2を削減することを目標とする。総投資額は10億ポンドとなり、5万人の雇用を支援する。

自然環境
毎年3万ヘクタールの植樹をすることで、自然環境を保護および回復させ、数千人の雇用を創出および維持する。

イノベーションとファイナンス
上記9項目の新しい野心的なエネルギー目標の達成および、ロンドン市をグリーンファイナンスのグローバルセンターにするため必要な最先端技術を開発する。

ジョンソン首相は次のように述べる。「2020年は(コロナ危機など)私たちが期待していたものとは大きく異なる道を歩みましたが、私は英国をレベルアップさせるという野心的な計画を見失っていません。10ポイントプランは、2050年までにネットゼロに向けて前進しながら、数十万人のグリーンジョブを保護、創出します」。

「私たちのグリーン産業革命は、スコットランドと北東部の風力タービンや、ミッドランドで製造されたEVによって推進され、ウェールズで開発された最新技術によって進歩し、より豊かでグリーンな未来を期待できます」。


閣議でのボリス・ジョンソン首相 2020年11月

ガソリン・ディーゼル車の新車販売は2030年に禁止へ

注目のひとつが、18億ポンド以上が投じられるEVだ。

ジョンソン首相はグリーン産業革命とともに、従来の計画より10年前倒しとなる、2030年までに英国内で新たにガソリン車とディーゼル車の販売を終了すると発表した。

販売禁止に向けたアプローチは2つからなる。

ステップ1では、新たなガソリン車やディーゼル車・バンの販売を2030年までに廃止する。ただし、2030年から2035年の間は、大幅な距離をゼロエミッション(プラグインハイブリッド車、またはフルハイブリッド車)で走る能力がある場合、自動車とバンの販売は可能となる。

ステップ2では、2035年からすべての自動車とバンを完全なゼロエミッション車とするというもの。

ガソリン・ディーゼル車を販売禁止し、ゼロエミッション車への移行を加速させるために、18億ポンド以上の支援を行う。まず13億ポンドを投じ、英国全土の家庭や道路、高速道路でのEV充電スポット建設にあてられ、人々がより簡単かつ便利に充電できるようにする。
また、ゼロ排出や超低排出ガス自動車を購入する人々に5億8,200万ポンドの助成金を提供し、購入をより安くし、より多くの人々に移行を促す。

さらに、最大10億ポンドを提供するというコミットメントの一環として、今後4年間で約5億ポンドを費やし、EV用バッテリー開発と大量生産に向け、ミッドランドや北東部などの製造拠点に投資する。この政策措置は何千人もの雇用を保護し、創出するという。

英国はゼロエミッション貨物の先駆者になるため、新大型ディーゼル車(HGVs)の段階的な廃止についても協議する予定だ。

その一方で、太陽光発電や陸上風力、蓄電池などのエネルギー貯蔵などの関連技術は含まれなかった。

グリーン産業革命は、英国のネットゼロ実現に向けた取り組みの始まりであり、2021年グラスゴーで開催されるCOP26に向けて、雇用を創出しながら、CO2排出量のさらなる削減を進めていくとした。

(Text:藤村 朋弘・紺野 真冬芽)

参照
Press Release "PM outlines his Ten Point Plan for a Green Industrial Revolution for 250,000 jobs" 2020.11.18
Policy paper "The ten point plan for a green industrial revolution"



藤村朋弘
藤村朋弘

2009年より太陽光発電の取材活動に携わり、 その後、日本の電力システム改革や再生可能エネルギー全般まで、取材活動をひろげている。

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