パリ協定を契機に、世界的規模で各企業の気候変動に対応した経営戦略の開示や、脱炭素に向けた目標設定等を通じ、「脱炭素経営」に取り組む動きが促進されている。
そんな中、環境省はこの度「脱炭素経営に向けた取組の広がり」と銘打ち、3つの枠組み、即ち
・TCFD:企業の気候変動への取組み、影響に関する情報を開示する枠組み
・SBT:企業の科学的な中長期の目標設定を促す枠組み
・RE100:企業が事業活動に必要な電力の100%を再エネで賄うことを目指す枠組み
以上を国別・業種別等で図表にし、それぞれの促進状況を分かりやすく可視化し発表した。
これによると、TCFDは世界2,156の金融機関、企業、政府等が賛同している中、日本は401機関賛同で世界第一位。SBT、RE100の枠組みでも、どちらもアメリカに次ぐ第二位となっており、日本全体での対応の遅れが指摘される場面もあるが、2021年5月31日時点では賛同企業及び機関が増え、世界トップクラスとなっていることを示している。
その中でも、 上記3つの枠組み全てに取り組んでいる企業は、建設業7社、電気機器7社、食料品4社をはじめ全30社にのぼり、いずれも日本を牽引する大企業がその名を連ねていることが分かる。
いくつか各企業の事例を紹介したい。
パナソニックは先月、純水素型燃料電池と太陽電池を組み合わせた自家発電によるRE100の実証への取組みを発表。工場の稼働電力のための自家発電燃料として、水素を本格的に取り入れたRE100への実証実験としては世界初の試みであり、加えて2030年までに事業活動にともなうCO2の排出量を実質ゼロにするとの方針も明らかにしている。
また、ソニーグループは、投資先のスタートアップがどれだけESG(環境・社会・企業統治)に取り組んでいるかを評価する新制度を始める。スタートアップは短期間での成長を優先する傾向が強い中、中長期での企業価値の向上につなげる意図だ。
そして、三菱地所はバイオマス発電事業の新規参入を決定した。総事業費は300億円超、国内に10ヶ所以上の発電所を設ける計画が推進中だ。2022年度からは電力小売会社への売電も始め、環境経営の一環として、将来は発電所からオフィスビルなど自社物件へ、バイオマス発電によるグリーンエネルギーの直接送電も検討しているという。
上記、どの企業の事例をみても、“脱炭素経営”に向けた本気度と、本格的な取組みであることが伺える。
気候変動の影響がますます顕在化しつつある今日、ますます大きくなること必至の国際的な脱炭素へ向けての潮流のなかで、いかに先んじてこれらの取組みを進めるかは、ESG投資の流れを確実につかむことにもつながり、新たな取引先やビジネスチャンスの獲得にも大きな影響をもたらすことになる。
これらの情報が各企業・各機関で有効活用されることにより、日本全体が脱炭素へ向けて、ますます躍進することを期待したい。
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