気候変動対策の機運が日増しに高まる中、脱炭素化の潮流はもはや避けられないものになっている。CO2排出量が多い石炭に対する国際的な問題意識の高まりは、火力発電燃料用の石炭権益事業などを手掛けてきた日本の総合商社にも影響を与えた。伊藤忠商事は、2019年5月、企業に対し気候変動に関連する財務情報の開示を促す「TCFD」に賛同を表明した。脱炭素社会の実現に寄与する事業を加速し、業界を先駆ける伊藤忠商事の取り組みを追ってみた。
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近年、温暖化ガス排出量が多い石炭火力発電所は投資家から厳しい目線を向けられており、総合商社の石炭関連の資産売却が加速している。伊藤忠はオーストラリアで発電用石炭(一般炭)の権益を保有する「ラベンスワース・ノース」炭鉱を売却すると今年11月に発表した。
同社は既存の一般炭炭鉱事業についても、「SDGs」への貢献・取組強化の観点から、脱炭素社会を業界に先駆けて実現すべく今年4月に、コロンビアの一般炭(発電用石炭)「Drummond(ドラモンド)炭鉱」の権益20%全てを米石炭企業「Drummond」に売却した。
Drummondの年間生産量は620万トン。伊藤忠が保有する一般炭の権益の8割にあたる。伊藤忠は石炭権益や石炭火力発電など化石燃料事業から生じる温暖化ガス排出量を算出しており、2018年度に3,700万トンあった排出量は、南米の主力鉱山売却で2,100万トンまで減少。残る2割を産出している豪州の2つの鉱山における一般炭権益も2023年度までに売却し、一般炭権益からの完全撤退を目指す(図1)。
図1:化石燃料事業・権益のGHGの排出量
出所:伊藤忠商事 化石燃料事業・権益のGHG排出量削減への取組み
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