日本で2,220万世帯が利用しているLPガスは脱炭素時代に適応できるのか | EnergyShift

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日本で2,220万世帯が利用しているLPガスは脱炭素時代に適応できるのか

日本で2,220万世帯が利用しているLPガスは脱炭素時代に適応できるのか

家庭にエネルギーを供給している会社として身近な存在となると、電力会社、都市ガス会社に加えてLPガス会社があります。LPガスもまた、化石燃料である以上、カーボンニュートラルに向けた制約がかかってくることになります。では、LPガスは、どのようにしてカーボンニュートラルを目指していくのでしょうか。そこでは、都市ガスとは大きく業界構造が異なる故の、意外な方向性があるといえます。

エナシフTVスタジオから(10

LPガスとは何か? 業界構造はどうなっているのか?

一般消費者にとって、LPガスと都市ガスではあまり変わらないように思えます。同じ化石燃料ですし、使い方もほぼ同じです。しかし、熱量や沸点などの性質が異なる上、業界構造や商流が異なっています。最初に、その点からお話しします。

LPガスというのは、液化石油ガス(Liquefied Petroleum Gas)のことです。よくLPガスのことをプロパンガスといいますが、これは半分しか正しくありません。

いわゆる炭化水素は、炭素の数によって名前が決まっています。都市ガスの主成分であるメタンはCH4、化学工業の原料などで使われるエタンはC2H6、そしてプロパンはC3H8です。C4H10はブタンといいます。家庭用のLPガスの主成分はプロパンですが、LPガス自動車用の燃料の場合、ブタンが3割程度混ざっています。ライターのガスもブタンですね。

都市ガスのメタンとLPガスのプロパンは化学的な性質が異なっています。メタンの沸点は-162℃、プロパンの沸点は-42℃、つまりプロパンの方が液化しやすく、そのためにボンベ(シリンダー)で運びやすいということです。

また、体積あたりの熱量も違います。プロパンの方が熱量が高いので、都市ガスとLPガスではガス機器の仕様が異なっています。

そして、都市ガスとLPガスでは業界構造も違っています。都市ガスを供給しているのは、基本的には都市ガス会社です。でも、LPガスを供給している大元にいるのは石油会社です。そして、LPガスは、「元売り」➡「卸売り」➡「小売り」という商流で供給されています。その点、大手都市ガス会社は直接輸入して供給していますし、地方都市ガス会社は大手都市ガス会社から卸供給を受けているのが一般的です。

都市ガス会社は全国で200社ほどですが、LPガス販売店は全国で2万社ほどあります。さらに、都市ガスの小売りが全面的に自由化されたのは2017年4月ですが、それよりはるか以前から、LPガスの販売は自由化されていました。LPガス会社はずっと昔から選ぶことができたのです。

 LPガス都市ガス
主成分プロパンメタン
化学式C3H8CH4
熱量(1m3当たり)24,000kcal10,750kcal
CO2排出量やや多い少ない
沸点-42℃-162℃
供給方法シリンダー(ボンベ)ガス導管
価格割高(8,000円/月程度)割安(5,000円/月程度)
供給会社数LPガス販売店約2万社都市ガス会社約200社
自由化元々自由競争2017年から小売全面自由化
原料石油精製、油田から分離、ガス田から分離天然ガス
業界の構造元売り➡卸売➡小売り大手、中小(大手都市ガス・電力等から卸調達)

実は急いでいない?LPガスの脱炭素・・・次ページ

もとさん(本橋恵一)
もとさん(本橋恵一)

環境エネルギージャーナリスト エネルギー専門誌「エネルギーフォーラム」記者として、電力自由化、原子力、気候変動、再生可能エネルギー、エネルギー政策などを取材。 その後フリーランスとして活動した後、現在はEnergy Shift編集マネージャー。 著書に「電力・ガス業界の動向とカラクリがよーくわかる本」(秀和システム)など https://www.shuwasystem.co.jp/book/9784798064949.html

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