2022年3月の電気料金、過去5年で最高値に 家計や企業の負担重く 新電力には再び淘汰の波が | EnergyShift

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2022年3月の電気料金、過去5年で最高値に 家計や企業の負担重く 新電力には再び淘汰の波が

2022年3月の電気料金、過去5年で最高値に 家計や企業の負担重く 新電力には再び淘汰の波が

2022年02月17日

大手電力会社10社の2022年3月の電気料金が過去5年間でもっとも高い水準に達する。緊迫化するウクライナ情勢によって欧州が天然ガス危機に直面するなど、火力発電の燃料であるLNG(液化天然ガス)や石炭、さらには原油などエネルギー価格の高騰が世界的に止まらないためだ。エネルギー価格は落ち着く気配がなく、電気料金のさらなる値上げは避けられそうにない。家計や企業の負担が増す一方、大手電力会社のうち6社が赤字に転落、新電力にも淘汰の波が押し寄せている。

電気代が値上がりしすぎて、関西・中部・北陸電力が自己負担に

2022年3月の大手電力会社の電気料金は北陸電力を除く9社で値上がりする

9社のうち、2月と比べてもっとも値上げ幅が大きいのが中部電力だ。一般的な標準家庭で電気料金は292円高い7,949円になる。次いで東京電力が283円値上がりして8,244円、東北電力が219円高い8,333円になる。最大手の東京電力では2021年3月の電気料金は6,408円だったが、1年間で1,836円上昇するなど、値上がりスピードは異例で、大手電力会社の電気料金は過去5年でもっとも高い水準に達している。

2022年3月の電気料金

中部電力292円上昇7,949円
東京電力283円上昇8,244円
東北電力219円上昇8,333円
沖縄電力213円上昇8,758円
中国電力174円上昇8,005円
四国電力138円上昇7,839円
北海道電力122円上昇8,266円
九州電力113円上昇7,104円
関西電力55円上昇7,473円
北陸電力値上げせず7,187円

電気料金は、燃料輸入価格を自動的に反映させる「燃料費調整制度」を踏まえて決められている。電力会社の経営努力だけではどうしようもない燃料価格の上昇を電気料金に転嫁することで、電力会社の経営安定化と電力の安定供給を図ろうという趣旨からだ。

ただし、大幅な値上げによる消費者負担を緩和しようと、燃料費調整制度で消費者に転嫁できるのは、電力会社があらかじめ設定している基準価格の1.5倍まで。1.5倍を超えるとその超過分は電力会社が負担しなければならない。

その上限に2022年2月の料金改定で北陸電力が達した。3月には関西電力と中国電力が上限を突破し、超過分を自社で負担する事態になっている。3社は経済産業省に値上げを申請しない限り、燃料費が上がっても電気料金を値上げできなくなる。電気事業連合会によると、複数社で同時に上限を突破するのは、2009年に今の制度になってからはじめてだという。

電気料金、上がることはあっても、下がる見込みなし?!

LNGや原油などの世界的な高騰は収まる気配がない。CO2排出量の多い石炭火力からの転換など、脱炭素の流れの中でLNG需要は今後も増加する見込みだ。一方、足もとではロシアによるウクライナ侵攻をめぐり、欧米による制裁いかんで、ロシアからの欧州向け天然ガス供給が途絶するリスクが浮上している。仮にウクライナ情勢が沈静化しても、欧州のロシア依存が続く限り供給不安は拭えず、天然ガス価格が高止まりするとの予想さえある。

中国の存在も大きい。2021年にはLNG輸入量が7,893万トンとなり、日本の輸入量7,432万トンを抜いて、はじめて世界最大の輸入国となった。LNGの争奪戦はすでにはじまっており、とりわけ冬にLNGが高騰するリスクが先鋭化している。

火力発電の依存度が高い日本は、輸入価格の高騰影響を特に受けやすい。そのため大手電力会社ではLNGに関して、価格変動が激しいスポット価格での調達ではなく、長期契約による調達比率を引き上げることでリスクヘッジをしてきた。JOGMEC(石油天然ガス・金属鉱物資源機構)によると輸入LNGのうちおよそ8割が10年間などの長期契約だとする。

ただし、長期契約の価格は3ヶ月分の原油価格に連動して決まる仕組みで、この原油価格の上昇が止まらない。中東で石油施設の爆発や火災などが相次いだことや、ウクライナ情勢の緊迫化による原油需要の押し上げ懸念などから、価格が上昇。ニューヨーク原油市場では、2022年2月1日、原油価格の国際的な指標であるWTIが1バレルあたり88.20ドルをつけ、7年ぶりの高値に達した

欧州における指標のブレンド原油価格について、ゴールドマン・サックスなどの大手金融機関は2022年半ばにも100ドルを超えるとの予測を示す。

しかも、日本最大の火力発電事業者であるJERAによると、「中国は国策として新規の長期契約を増やしている一方、日本の長期契約の新規締結はほぼなくなっている状況だ。10年先、これがどういう影響を及ぼすのか、十分考える必要がある」と危機感を露わにする。

LNG長期契約の新規締結状況


・日本の事業者はLNGの長期契約締結量は大きく減少。長期契約ゆえ、すぐに影響は出ないが、将来的に長期契約による調達量は減少していく見込み
・中国は過去に需給逼迫・停電を経験した経緯から、新規長期契約を積極的に締結している状況
出典:JERA

原油価格がこのまま高止まりすれば、長期契約のLNG価格も釣り上がり、引いてはそれが電気料金の値上げにつながる。さらに近い将来、中国にLNGを買い負けるおそれも浮上してきた。日本においても電気料金の上昇圧力はまだまだ高く、家計や企業の負担が一層増すのではないかと警戒感が広がっている。

燃料価格の高騰は大手電力や新電力にも深刻な影響を・・・次ページ

藤村朋弘
藤村朋弘

2009年より太陽光発電の取材活動に携わり、 その後、日本の電力システム改革や再生可能エネルギー全般まで、取材活動をひろげている。

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