こうして拡大を続けるグリーンボンドだが、拡大とともに監視も強化されてきている。グリーンウォッシュの危険性だ。
英国金融行為監視機構(Financial Conduct Authority)のNikhil Rathi CEOはCOP26で「グリーンウォッシュを放置し、未来のための必要な資本を危険にさらすことはできない」と発言。英国金融監督庁は主に機関投資家を対象とした、より詳細な情報開示と、資産運用会社に向けてESG要素がどのように投資に組み込まれているかの情報提供を強化するように求めている。
EUで2021年3月に導入された「サスティナブル・ファイナンス・ディスクロージャー規則」でも同様の開示要求がある。
英国、EU、スイスの規制当局はグリーンウォッシュ対策として、証券監督者国際機構(Iosco)を通じて動きを強めている。Ioscoに参加している130の国と地域の規制当局に、具体的なルール、ガイダンス、リスク管理を求めている。
前述のEUと中国が発表した「コモングラウンドタクソノミー」はその基準作りを目指したものだが、クライメート・ボンド・イニシアティブの中国代表であるシエ・ウェンホン氏は「世界のグリーンファイナンスが直面する主要な課題の一つは基準が多過ぎることだ」と指摘。
ボンドのなにがグリーンなのか。これは、グリーンの範囲を明確化する。また、投資家へのガイダンス、開示、透明性の担保も未整備だ。
もちろん、ICMAによるグリーンボンド原則や、各国に独自のグリーンボンド原則はある。改訂もされているが、より厳密で定量的な定義がこれからさらに求められることになる。そのルールを世界が求めているということだ。
たとえば、化石燃料から低炭素燃料への転換(たとえば石炭・石油から天然ガスへの転換)をグリーンと認めるのか。EUではこれは排除する方向だが、日本では環境技術として認められる場合がある。今議論がおこなわれているバイオマス燃料もそうだ。
投資運用会社NNインベストメント・パートナーズは、ポーランドの気候変動政策が不透明だとして同国のグリーンボンドを手放した。EU加盟国として唯一、2050年のネットゼロ目標を国家レベルで承認しなかったことなどが理由だ。
インドネシアの森林破壊リスクを考慮して、同国のグリーンボンドをESGファンドに加えない判断をした運用会社もある。
このような混乱は、グリーンボンドの拡大とともにますます大きくなっていくだろう。COP26でのIFRS財団が発表した国際サステナビリティ基準委員会(ISSB)による開示基準も取り入れられていくと思われる。こうした世界のルール作りに日本がどのように加わるのか、加わることができるのかがすでに問題として表面化してきている。
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