オフィスビルや生産工場、インフラなどを建設するゼネコン業界で、脱炭素の動きが加速している。東急建設や大成建設、鹿島建設の3社はCO2の排出を減らすため、建設現場や施設内で使用する電力を太陽光発電などの再生可能エネルギーに切り替えたり、風力発電などの再エネ事業を次世代の収益基盤にする取り組みを相次いで強化している。
東急建設は5月17日、2021年4月以降、新たに着工するすべての工事について、原則、100%再エネ由来の電力にすると表明した。3月に神奈川県で着工した2つの大型物流倉庫の工事においても、すでに再エネ電力に切り替えており、施工中の工事に関しても、順次、再エネに転換していく。
住宅やビルに比べて、脱炭素化が難しいとされてきた生産工場でもCO2などの削減が始まった。
大成建設では、エネルギー多消費施設である生産工場においても、空調などの省エネ化や、太陽光発電などの再エネによる創エネを組み合わせて、生産工場の消費エネルギー収支を実質的にゼロに抑えようとする取り組みを進めている。
同社は消費するエネルギー収支ゼロを目指す工場を「ZEF(ネット・ゼロ・エネルギー・ファクトリー)と独自に定義し、現在、埼玉県で設計中である沖電気工業のOKI本庄工場でZEFを実現する予定だ。
また、大成建設では自社グループで使用する電力を100%再エネに切り替えることも目標に掲げており、2030年度までに100MWの再エネ電源の保有を目指している。
鹿島建設も、再エネ事業を次世代の成長領域と位置づけ、事業強化を進めている。洋上および陸上風力発電の建設などを通じて、年間売上高を300億円にまで増やす方針だ。
また、コンクリートがCO2を吸収する反応に着目し、CO2を大量に吸着する新たなコンクリートの開発などにも取り組んでいく。
日本政府は4月、2030年のCO2排出削減目標を26%から、46%に大幅に引き上げた。達成に向けては2030年までの10年間で、再エネ関連に50〜80兆円規模の投資が必要になるとの試算がある。
3社いずれも脱炭素への取り組みを加速させ、再エネ事業を取り込むことで、収益基盤を強化したい狙いがある。
(Text:藤村朋弘)
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