ビジネスパーソンの理解が進むSDGs、ESG。課題は気候変動以外の取り組み―PwCレポート | EnergyShift

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ビジネスパーソンの理解が進むSDGs、ESG。課題は気候変動以外の取り組み―PwCレポート

ビジネスパーソンの理解が進むSDGs、ESG。課題は気候変動以外の取り組み―PwCレポート

EnergyShift編集部
2020/12/07

PwC Japanグループでは、日本企業におけるESGの認知度と情報開示に関する調査を行い、2020年11月30日に、メディア向けに速報の形で公開された。上場企業の従業員を対象とした認知度調査では、2016年以降、SDGsやESG投資に対する認知度が向上する一方、気候変動に関する認知度が横ばいであることがわかった。

コーポレートサステナビリティの時代

今回、PwC Japan グループが行ったのは、「コーポレートサステナビリティ調査2020」と、「サステナビリティレポーティング調査2020」の2種類。前者は、上場企業の従業員を対象とした認知度調査、後者は同じく上場企業が発行する統合報告書やサステナビリティレポートなど、非財務情報の報告書に関する調査である。

いずれの調査結果についても、2021年の1月ないし2月には、正式なレポートとして公表される予定だ。

記者説明会でプレゼンテーションを行った、PwCあらた有限責任監査法人パートナーの田原英俊氏は、最初にサステナビリティに関する企業の視点の変化について説明を行った。

田原氏の説明では、CSR/サステナビリティの領域は年々変化しており、現在は第三世代にあたるという。1980年代までの第一世代では、法令順守と社会貢献を中心としたCSRの時代だったものが、第二世代では経済活動と社会、環境の両立を目指すようなCSRへと変化していったという。しかし2000年代以降は、経済活動は社会システム、さらには自然環境に支えられる、長期的な視点に立った企業のサステナビリティが求められるようになった(図1)。



出典:PwC 上図の破線は、企業が捉えるCSR/サステナビリティの領域を指す

現代の企業におけるコーポレートサステナビリティとは、人口構造の変化、気候変動など、グローバルなメガトレンドに対し、長期的に存続・成長するための戦略を策定し、実行することであり、その実践にあたっては、メディアやNGOなどのインフルエンサー、およびステークホルダーの行動を正しく認識することが不可欠だという。これは、この日の説明会に参加した記者に対しても、責任を問いかけるものとなった。

急激に高まったSDGsの認知度

続いて、「コーポレートサステナビリティ調査2020」についての説明が行われた。

図2は、今回、前回(2018年)、前々回(2016年)の調査結果を比較したものだが、特徴的なのは、SDGsに対する認知度が急激に高まっていることだ。気候変動に関する認知度も少しずつ上がっているものの、「人に説明できるだけ知っている」割合は、SDGsが気候変動を上回り、44.2%となっている。

また、ESG投資についても、認知度は向上しており、「人に説明できるだけ知っている」割合が、2016年にはわずか5.9%だったものが、2020年には22.1%となっている。


出典:PwC

また、業種によってそれぞれの項目の認知度に違いがみられる。商社や銀行が高い認知度にある一方、小売と陸上輸送については認知度が低い傾向がみられた。

さらに、コーポレートサステナビリティ/CSRの具体的な内容の事例としては、環境負荷削減など、かつてのCSRの内容に相当するものを挙げる割合が高い一方、「サプライチェーンへの配慮」、「社会性に配慮した製品・サービスの開発と販売」、「中長期的な課題を踏まえたビジネス戦略の実行」といった現在のコーポレートサステナビリティの内容に相当するものを挙げる割合は少なかった。特に、銀行がかつてのCSRを中心に考えている傾向があるという。ただし、第三世代に関する内容についても、自社にとって重要なことだと認識しているということも示されている。

一方、SDGsの17のテーマについて、将来のビジネスの機会になると考えられているのは、「エネルギー」「働き方」「産業と技術革新」「まちづくり」「気候変動」の5つに集中した。

まだ環境報告書の域を出ないレポート

続いて、「サステナビリティレポーティング調査2020」について説明された。

日本の傾向としては、ESG情報と財務情報を併せて開示する統合報告書が主流で、海外よりも高い割合になっているという。ESG情報については、およそ半分が環境のみのサステナビリティ戦略しか示しておらず、社会領域まで含めたものは3割にとどまっている。

サステナビリティの機会を特定し、リスクに対する軽減策と経済的影響を評価しているものは全体の1割程度にとどまっているが、これがさらに機会の活用策の経済的評価となると5%程度とさらに少なくなる。全般的に企業は機会よりもリスクを注視する傾向がある。

重要な課題について、定量的なKPIを設定している企業はおよそ71%だが、うち15%は温室効果ガスについてのKPIしか設定していない。田原氏によると、全般的に、長期的な成長の観点から改善されることが期待されるということだ。

日本は環境にフォーカスがあたる傾向

質疑応答では、調査結果に対する背景や海外との違いが問われた。

田原氏によると、日本企業は環境にフォーカスがあたる傾向が強いという。元々、ESGとは無関係に環境問題に取り組んできた歴史がある。一方、欧州は環境に特化しているということはない。逆に米国は日本より遅れているかもしれないという。

また、米国の年金基金の新規制案に関連して、田原氏は、ESG投資が、中長期的に成長できる企業かどうかという判断であること、長期的時間軸と短期的時間軸ではリターンはトレードオフになる可能性を指摘しつつも、企業が「どういう課題があるのか」を考え、適切に対応していかなくてはいけないし、その点でESG投資が変化するとは考えていないとした。

最後に、コロナ危機について、「企業のレジリエンスを問うものとして、長期的マネジメントが問われる」ものだと語った。さらに、コロナ危機以前から人権については、気候変動の次に投資家の中でクローズアップされてきたものであるとして、今後日本でも2011年に国連で承認された「ビジネスと人権に関する指導原則」にのっとって、取り組みが高まってくるのではないかとした。

全般的に、日本企業にはコーポレートサステナビリティについて、進捗も見られているが、今後は環境のみならず社会的課題にも取り組んでいくことが必要ということではないだろうか。

(Text:本橋恵一)

参照
EnergyShift "サステナビリティの「見える化」で、企業をトランスフォーム PwC Japan 坂野俊哉氏、磯貝友紀氏にきく"

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