東証再編に影響した気候変動のふたつの重大なリスクとは 今こそコーポレート・ガバナンス・コードに向き合うべき理由 イチからはじめるプライム市場・CGコード・気候変動対応(2) | EnergyShift

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東証再編に影響した気候変動のふたつの重大なリスクとは 今こそコーポレート・ガバナンス・コードに向き合うべき理由 イチからはじめるプライム市場・CGコード・気候変動対応(2)

2021年11月25日

環境、ESGの変化に対するふたつのリスク

企業の成長、それも中長期にわたる成長には投資が欠かせない。一方で新規事業や製品開発には、当たり前だがリスクがつきものだ。「リスクをとらない、とれない経営」が、日本の長期的な停滞につながっているという指摘もある。

TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言にもあるように、気候変動による災害によるリスクとともに、気候変動による社会変化による収益機会を逃すこともまたリスクなのだ。

金融庁の担当者は「TCFDの提言にも『リスクと収益機会』と書かれたのが2017年頃。その頃から(気候変動を)機会としても捉えていくべきではないかということが盛んにいわれるようになってきた。(2020年の)カーボンニュートラル元年の影響だけではないが、もちろん日本政府の取り組みも含めてTCFDというものもCGコードにはある。もともとは有識者会議、フォローアップ会議で議論していたものだ」という。

こうしたリスクと収益機会をよく理解した投資が求められているのだが、パッシブ投資ではそれに十分応えているとはいえない。リスクを成長機会と捉えるのであればなおさらだ。

そこでより重要になってくるのが、対話であり相互の理解だ。

なにも、すべての投資家が機関投資家のように振る舞う必要があるわけではない。特別なランチミーティングをCEOと交わす必要はないが、リスクと成長を十分にお互いに理解する必要がある。

情報開示は、まさにそのためにある。

対話の基盤となるのが情報開示

2021年6月にコーポレート・ガバナンス・コードとともに改訂されたのが金融庁による「投資家と企業の対話ガイドライン」だ。

このガイドラインは2つのコードの附属文書として位置づけられており、対話にあたっては形式的な対応をおこなうことは適切ではなく、実効的な対話をおこなうことが重要とされている。

その文書の改訂において付されたのがESG、SDGs等の環境変化への対応だ。「たとえば、取締役会の下、または経営陣の側にサステナビリティに関する委員会を設置するなど、サステナビリティに関する取組みを全社的に検討・推進するための枠組を整備しているか」という文言が改訂で加えられた。

このサステナビリティ委員会とは、従来のような社会貢献の延長でのCSR委員会とは異なるものだ。経営トップもコミットする横断的な取組みであり、各事業部と経営企画、法務、人事など、全社的なものであり、統合報告書と同様のものになる。

サステナビリティ委員会と統合報告書が投資家と企業の相互理解・対話のための重要なツールであり、形式的なものではなく実効が求められる。統合報告書の発行企業はTOPIX全体に比べ、株価が高い。


ディスクロージャー&IR総合研究所 統合報告書分析レポート 2021.6.30

前回記した海外の機関投資家からの優良な(=アクティブな)投資を招くために加えられたESG要素、特に気候変動が、日本企業がどれだけ対話できるのか、さらには形だけのサステナビリティになるのか、相互理解ある対話になるかが、中長期的な企業価値の存続に大きく関わってくる。

対話に必要な開示としてCGコード改訂にあげられているのが、「TCFD、またはそれと同等の」開示内容だ。次回はなぜTCFDなのか、「同等の」とは何をさすのか、具体的な内容を交えて紹介する。

シリーズ:イチからはじめるプライム市場・CGコード・気候変動対応
(1)なぜ今、東証再編? 海外から魅力のない日本市場の実態とは
(3)東証再編でキーになるTCFD すべての企業は具体的に何をしていけばいいのか

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小森岳史
小森岳史

EnergyShift編集部 気候変動、環境活動、サステナビリティ、科学技術等を担当。

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