レベニューキャップ(収入上限)制度とは 新しい託送料金制度の詳細設計が開始される 第1回「料金制度専門会合」 | EnergyShift編集部

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レベニューキャップ(収入上限)制度とは 新しい託送料金制度の詳細設計が開始される 第1回「料金制度専門会合」

レベニューキャップ(収入上限)制度とは 新しい託送料金制度の詳細設計が開始される 第1回「料金制度専門会合」

EnergyShift編集部
2020/10/08
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審議会ウィークリートピック

分散型エネルギーの増加に対し、送配電網への適切な投資と効率化の徹底を両立させていくことは重要な課題となっている。これまでの総括原価方式を基本とする制度から、欧州で取り入れられているレベニューキャップ制度へ移行していくことになるだろう。ではそのレベニューキャップ制度とはどういったしくみなのか。この点について今回は紹介していく。

レベニューキャップ制度導入は2023年4月予定

託送料金制度の改革が開始された。

すでに「脱炭素化社会に向けた電力レジリエンス小委員会」等で方向性が示されているように、再エネ主力電源化やレジリエンス強化など次世代型のネットワークに転換していくため、「効率化の徹底」と「必要な投資促進」を両立させる託送制度の在り方について検討が進められてきた。

2020年6月に成立したエネルギー供給強靭化法においては、欧州の制度も参考にしたうえで、「レベニューキャップ(収入上限)制度」の導入が盛り込まれた。

別稿『強靱な電力ネットワークの形成と電力システムの分散化を目指して』でご報告のとおり、第5回「持続可能な電力システム構築小委員会」において、レベニューキャップ制度の詳細制度設計に係る論点出しが開始されたところである。

ただし、レベニューキャップ制度の詳細については、専門的な料金審査に係る内容も多く含まれてくることから、電力・ガス取引監視等委員会と連携しつつ、詳細検討をおこなっていくこととされた。

電力・ガス取引監視等委員会には従来から「料金審査専門会合」という審議会が設置されており、電気やガスの小売料金・託送料金の審査や事後評価を担っていた。ここでは機械的に各社の料金を審査するだけでなく、その査定方針も策定していた。

今回さらに、レベニューキャップという新しい託送料金制度そのものの詳細設計に踏み込んだ検討をおこなう必要性から、「料金制度専門会合」に改組され、その第1回会合が7月30日に開催された

本稿ではまず、現在の日本の託送料金制度がどのようなものとなっているかを紹介したうえで、レベニューキャップ制度ではどのような点が変わるのか概要を説明したい。 なおレベニューキャップ制度の開始は、2023年4月が予定されている。

現在の託送料金は規制料金。「総括原価方式」と「インセンティブ規制方式」に大きく分けられる

日本の託送料金や過去の規制小売料金は「総括原価方式」によって設定されてきた。筆者自身の過去の「審議会ウィークリートピック」でも簡易的にそのように表現してきたが、実はこれは半分正しく、半分不正確である。

小売料金とは異なり、託送料金は規制料金である。規制料金の基本設計には、大きく分けて「総括原価方式」と「インセンティブ規制方式」が存在する。総括原価方式の場合、当初の料金設定の時点では、「原価=収入」となるように料金が設定される(当然、事後的に差異が生じることに関しては後述する)。

この等式を満たすには、原価(費用)が削減されれば収入も少なくてよい、ということを意味しており、料金は値下げすることが基本原則である。

逆に、必ず費用を回収できることから、「必要な投資をためらわず実行できる」という良い面と、不要不急な過剰投資をおこないかねないという悪い面の両面が存在し、コスト削減のインセンティブが弱いという指摘がなされてきた。

コスト削減のインセンティブ確保の為の、さまざまな仕組み

電気事業法では、「料金は、能率的な経営の下、適正な原価に適正な利潤を加えたもの」と規定されている。事業者は、料金算定規則(一般送配電事業託送供給等約款料金算定規則)に則り、ある意味、機械的に料金を算定する。
過去実績は参考としつつも、あくまで「フォワード・ルッキング」に料金が算定される。単なる「成り行き:Business as Usual」の料金が認められることはなく、一定の将来的コストダウンを織り込んだ料金である必要がある。原価算定期間は3年間である。

さらに、いわゆる「ヤードスティック方式」(比較基準方式)を採用しており、、一般送配電事業者(以下、一送)間の効率性を比較する。非効率で高単価な事業者は厳しい査定を受けることにより、希望する満額は認められないこととなる。これにより、事業者は他社より効率性を高めようというインセンティブが働いている。これが期初の料金設定段階において、公開の場(従来の「料金審査専門会合」等)で厳格に審査されてきた。

託送料金のコストダウンと値下げの関係

認可申請・審査が必要な料金値上げとは異なり、値下げは「届出」だけでよく、タイムリーな値下げを促す制度となっている。また、日本では料金の「定期洗い替え」制度は無いが、「ストック管理+フロー管理」による「事後評価」というしくみが存在する。

料金審査専門会合では毎年、事業者の超過利潤累積額が一定の水準を超過するか否かを確認し(ストック管理)、要件に該当する事業者が自主的な料金値下げをおこなわない場合には、料金値下げ命令が発令される。同じく毎年、想定原価と実績原価の乖離率が5%を超過するか否かを確認している(フロー管理)。

この事後評価を逆に捉えれば、ストック・フローのいずれも一定水準を超えない範囲までは、事業者がおこなうコストダウンの成果は、事業者自身の利益とすることが可能な制度である。これにより、事業者に対して一定のコストダウンインセンティブを与えるしくみとなっている。

よって現状の日本の制度は、「総括原価方式+(一定の)インセンティブ方式」であると言える。ただし、5%等の一定水準以上の大きなコストダウンをおこなうインセンティブを与える制度とはなっていない。

レベニューキャップ制度とは

以上のような、従来の「原価=収入」を原則とする総括原価方式とは異なり、「インセンティブ規制方式」では必ずしもこの等式を求めない。

コストダウンの成果を事業者利益とすることを認めることにより、事業者に効率的な経営へのインセンティブを与える制度である。料金の上限を定める「プライスキャップ制度」のほか、収入上限を定めるレベニューキャップ制度が存在する。

経産省 2020年2月25日 プレスリリース資料より

同じレベニューキャップ制度でも、国により細部はかなり異なるが、送配電事業者は一定期間ごとに収入上限について承認を受け、その範囲で柔軟に料金設定が可能である。

単純に収入上限だけが設定されると、事業者は、短期的利益に寄与しない研究開発投資や長期的巨額の投資等を避けるようになってしまうという批判があった。この問題点を軽減するために、各国ではさまざまな制度詳細での工夫をおこなっている。

紙幅の都合上、諸外国のレベニューキャップ制度詳細を紹介することはできないが、諸外国の「良いとこ取り」を目指している日本の制度案を眺めることで、レベニューキャップの全体像が把握できるものと期待する。

なお、必要な投資促進とコスト効率化の両立を図るという大きな方向性自体は各国とも同じであるため、制度詳細設計や運用面での工夫により、実際には、総括原価方式やインセンティブ規制方式の各国の違いは、縮小しつつあると考えられる。

収入上限が定められる一定の期間のことを規制期間と呼ぶが、時間軸で見ると、規制期間開始前・規制期間中・規制期間終了時の3つのフェーズに分けられる。

規制期間開始前のフェーズ

まず役割分担を整理する。国が指針を定め、一送はその指針に基づいた事業計画を策定する。その事業計画に伴う収入・費用を算定し、国に提出する。国はその収入上限を承認する、このような流れとなっている。

国は、再エネ主力電源化やレジリエンス強化のため、一送に対して送配電設備増強や維持更新を求めると同時に、コスト効率化にも取り組むよう指針を策定する。指針には、一送が達成すべき目標や一送が策定すべき事業計画の内容、一送の収入上限の算定方法などが記載される。

一送が規制期間中に達成すべき目標としては、国が定めるエネルギー基本計画や、電力広域的運営推進機関が定めるマスタープラン(広域系統整備計画)と整合的なかたちで、安定供給(EUE:年間停電量期待値)や広域化(仕様統一化、災害時の連携)、再エネ導入拡大(既存送電網の送電容量拡大、発電量予測精度の向上)、系統利用者へのサービス品質、等の目標が例示されている。

一送が策定すべき事業計画の内容には、需要見込みや再エネ連系量等の前提計画のほか、設備拡充計画、設備保全計画、仕様統一化や競争発注等を通じた効率化計画等が含まれる。 一送による収入上限の算定のイメージは、図2のようなものである。

出所:第1回 料金制度専門会合事務局資料 託送料金制度(レベニューキャップ制度)の詳細設計について
2020年7月30日 電力・ガス取引監視等委員会

現行制度では消費税率の変更反映等を除き、期中調整スキームは存在しないが、レベニューキャップでは、一送がコントロールできない外生的な費用(制御不能費用)の変動については、期中または翌期に収入上限に反映する等のしくみが導入される。「キャップ」という言葉のイメージとはうらはらに、むしろ収入上限を変えやすく、柔軟な託送料金の値上げが起こりやすいのがレベニューキャップ制度である。

ただし、具体的にどのような費用項目が外生的費用となるのか、それをいつ(期中・翌期)反映させるのか、どのように審査(無審査で自動的値上げ・詳細な査定)するのか等については、今後議論される予定である。

なお現在の制度では、一送のインバランス料金過不足はこれ単独で「インバランス収支」として管理しており、託送料金に基づく「託送収支」とは全く別枠で管理されている。

7月31日開催の第49回「制度設計専門会合」では、2022年の新たなインバランス制度導入に伴い、このインバランス収支を託送収支に繰り入れること(託送収支として両者を一体的に管理すること)が提案され、了承された。よって今後は一送のインバランス収支が、託送収支を通じて託送料金に影響を及ぼすこととなる。これはかなりの部分が一送のコントロール外となるため、図2では調整力費用が外生的費用の一候補として位置付けられている。

規制期間中、規制期間終了時のフェーズ

本来は規制期間開始前に定められているはずだが、規制期間の長さについては事務局資料では、規制期間中のフェーズで論じられている。

英国やドイツでは、8年間や5年間という規制期間の実例がある。

規制期間を長く設定すれば、中長期的な目標達成に向けた投資や効率化を一送に促しやすくなるメリットがある反面、事業計画や収入上限の不確実性が増すことや、定期洗い替えが長期間不要となり消費者還元もおこなわれないというデメリットがある。

規制期間終了時には、国は一送の事業計画の達成状況を評価する。

事業計画に記載された成果目標(安定供給等)の達成状況に応じて、一送に対して金銭的なボーナスやペナルティを与えることも今後検討される。

規制期間終了時だけでなく、期中にも達成状況の評価・フォローアップをおこなうことが提案されている。仮に毎年評価するならば、この点では運用面で現行制度に非常に近い姿となることが想定される。

レベニューキャップでは、一送がコスト効率化に取り組むインセンティブを与えるため、実績費用が見積費用を下回った成果は一送の利益として認めることが大前提である。しかしながら規制期間終了時の定期洗い替えにおいて、この成果を翌期の収入上限にどのように反映するかは難しい論点である。

コストダウン分をすべて翌期の新たな収入上限に反映させる(収入上限がダウンする)ならば、託送料金の低下により消費者・発電事業者へ還元されるが、これでは現在同様に、一送のコストダウン意欲を削ぐこととなってしまう。

かといって、翌期の収入上限も前期と同額を維持し、託送料金も同額のままであれば、消費者・発電事業者は納得しがたいであろう。

仮に規制期間が5年間であれば、計10年間同じ託送料金が続くことは、かなり硬直的なしくみであるという印象を与える。

レベニューキャップ制度への移行、今後のスケジュールは

レベニューキャップ制度への移行は、2023年4月が予定されている。これに向けた制度詳細設計は2021年6月頃に取りまとめをおこない、省令改正等を経て、2022年4月からはレベニューキャップに基づく新たな各社の料金審査が開始される予定となっている。

同時に、発電側基本料金の詳細設計も進められる。従来の託送料金は需要側・小売電気事業者側が100%負担していたが、今後新たに託送料金を負担することとなる発電事業者にとっても、託送料金制度改革は目を離せないテーマである。

(Text:梅田あおば)

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