サステイナブルが売り上げになる時代 日本ロレアルが前年比121%達成した理由 | EnergyShift編集部

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サステイナブルが売り上げになる時代 日本ロレアルが前年比121%達成した理由

サステイナブルが売り上げになる時代 日本ロレアルが前年比121%達成した理由

EnergyShift編集部
2020/12/15
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2020/12/15
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気候変動イノベーション 動き出した企業(1)日本ロレアル・前編

ヨーロッパを拠点とする世界的化粧品メーカーとして、地球環境問題への取り組みをリードしてきたロレアル(本社・パリ)が今春、“持続可能な経営”に向け、ビジネスモデル変革を含む大胆な目標を打ち出した。日本ロレアルは2022年末に100%カーボンニュートラルを達成すると宣言。日本ロレアルのヴァイスプレジデントでコーポレートコミュニケーション本部長の楠田倫子さんによると、日本の消費者や企業の意識も変化しており、「サステイナブルが売り上げにつながる時代がようやくきた」という。成長を支える取り組みを聞いた。(後編は12/16公開予定)

意識高い日本の若年層、関連商品売上が前年比121%

― 先駆的にサステイナブルの取り組みを進めてきたロレアルですが、日本でも消費者や企業の意識が変化していると感じますか?

楠田倫子さん:ここへきて、意識が高まっていると感じます。

従来、日本の消費者はサステイナブルへの認知が低いと言われてきました。その表れとして、スキンケア化粧品ブランドのキールズの売り上げは非常に好調に推移しています。今年に入り、ラグジュアリー化粧品マーケットの売上が前年比マイナス37%となる中、2020年は前年比プラス21%と急成長しています。

― キールズの取り組みについて、教えてください。

楠田さん:「利益を得るだけでなく、地域社会に還元する」ことを掲げるキールズは、2015年から、店頭で空き容器の回収をしています。米国のベンチャー企業「テラサイクル」と協業し、回収した容器をフラワーポットやスパチュラ(化粧品クリームをとるヘラ)に再生しています。

顧客の中心層は、20代後半から30代前半。この年代は、サステイナビリティに感度が高いと言われる年齢層のなかで、一番上の世代の人たち。「サステイナブルなことをしている」「地域社会への還元というブランド理念に共感できる」ということが消費につながっているととらえています。

地球環境保全の取り組みは、消費者にも理解してもらうことが大事です。たとえば、容器回収について、わざわざ店舗にお持ちいただくことの意味を理解していただき、共感してもらえるコミュニケーションをしなければなりません。

今年7月には、キールズのショッピングバッグを有料化しました。これまでも、バッグが必要かどうかを選ぶことはできましたが、有料バッグを導入し、その売り上げが森林保全団体に寄付されると伝わることで、お客様にもサステイナブルを意識していただく機会になっています。

マーケティング戦略としてサステイナビリティをやっているわけではなく、ブランド哲学を持ってやっていたら、結果として意識が高い人に支持されたのだと思っています。「サステイナビリティをまじめにやっていることが選ばれるブランドにつながる」。そういう時代がやっときたな、という手ごたえを感じています。


キールズの空き容器回収箱(写真提供:ロレアル)

日本独特の流通商習慣にも変化、「大量廃棄」の削減へ取り組み

―企業の意識にも変化はありますか?

楠田さん:今年に入ってから特に、流通企業の方から「サステイナブルについて、なにかやりたい」との相談が増えました。今までは当社の考えを一生懸命説明しても、「うーん、そうなんですね」で終わってしまったのが、先方から「なにか一緒にやりましょうよ」と声をかけていただける機会が増えました。これは変化だと感じています。

たとえば、日本独特の流通業界の商習慣に「定番落ち」というのがあります。春秋の年2回、店舗の棚にある「定番品」を一斉に見直し、在庫を一掃します。その結果、このタイミングに、業界全体で大量の「廃棄」が発生するのです。

別の例でいえば、ある企業での定番入れ替え日が4月1日と決まると、店舗で「欠品」を起こしたくないので3月31日まで棚に陳列する商品は潤沢な在庫を抱えておきたい。ところが、4月1日には商品を入れ替えるから、取り扱いをやめた商品は一斉に「余剰在庫」となり、メーカーに返品されてきます。メーカー側は、これを仕方なく廃棄してきました。

店舗側が在庫を抱える理由は、お客様第一主義ということもありますが、販売機会のロスにもつながるからです。以前であれば「販売機会ロスを強いるのか」と言われるところでしたが、最近は「ごみ削減の観点」からの話をし、理解していただける企業が増えました。

―それ以外にも、日本ならではの難しさを感じる場面はありますか?

楠田さん:日本は、ヨーロッパに比べて、サステイナビリティについての認知、取り組みが相対的に低いという印象があります。社員の関心度も一律ではありません。認知度を高めていくチャレンジが必要です。

一方、一企業でできることは、限りがあります。だからこそ、消費者の人を巻き込んで伝えたい。NGOや省庁、あるいは競合他社とのパートナーシップを広げることも考えていきたい。日本は、SDGsの項目の中で「パートナーシップが弱い」という指摘を国連から受けていると思いますが、それを変えていく一端になれたらと思っています。

―ロレアルは、容器や包装材についても取り組むことを掲げています。

楠田さん:世界的に二つの取り組みを進めています。一つは、ごみとなる容器の総量削減。リフィル型を開発するとか、かさばらない容器にするアプローチです。

もう一つは、素材へのアプローチ。容器は従来、プラスチック製が主流です。密閉性、軽量性、デザイン的に扱いやすい、いろんな形が簡単につくれるなどの面で優れており、かわる素材がなかなかありませんでした。これに対し、世界で初めて、紙製のラミネートチューブを仏の化粧品容器メーカー・アルベア社と共同開発しました。

―サプライチェーン改革にも触れています。ハードルが高い課題ですが、どう取り組みますか?

楠田さん:以前から取り組んでいるのは、輸送まわりのCO2削減です。海外工場からの製品輸送を、飛行機から船便に変更。国内輸送もトラック使用を最適化しています。営業車も、カーシェアリングをしたり、電気自動車をリースしたり。出張をオンラインで済ませる動きは、コロナでさらに定着しました。


今年6月の記者発表で、梱包用テープや緩衝材の脱プラスチックが100%達成されていることも報告された(画像提供:ロレアル)

また、梱包時のガムテープでプラスチック素材をやめ、昨年は、梱包の緩衝材をすべてプラスチックから紙に切り替えました。こまかいところですが、使用する紙はすべてFSC認証紙に変えるなど、仕入れを見直し、一つひとつCO2削減に動いています。

 

日本ロレアル
世界最大の化粧品会社ロレアルグループの日本法人。マーケティングや販売などを行うオフィス機能だけでなく、研究開発や製造工場も有する、グループ内でも有数の戦略的拠点。ロレアルグループは、国際NGO「CDP」が毎年行っている、企業活動の環境への影響評価で、「気候変動」「森林コモディティ」「水セキュリティ」の3つの分野でいずれも最高評価となる「トリプルA」を獲得。4年連続の「トリプルA」は世界で唯一。

 

楠田倫子さん
日本ロレアル ヴァイスプレジデント コーポレートコミュニケーション本部長
1989年上智大学法学部国際関係法学科を卒業後、富士銀行(現みずほ銀行)に総合職として入行。1992年に同行を退職、コロンビア大学ビジネススクールへ留学。MBAを取得後1994年に帰国。米系消費財メーカー(ワーナー・ランバート、現ファイザー)を経て1999年に日本ロレアル入社。シュウ ウエムラ、ヘレナ・ルビンスタインなどロレアルグループ内のブランドの事業部長職を歴任。2015年にアクティブ コスメティックス事業部事業部長に就任し、2020年1月1日より現職。

(ヘッダー写真:インド プネーにあるロレアルの工場に設置されているソーラーパネル 提供:ロレアル)

(Interview & Text:山田亜紀子)


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