「旅は魔法」。星野佳路代表の“大胆予測”に見る 星野リゾートの先見性と革新 Part.2 脱炭素を目指す | EnergyShift

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「旅は魔法」。星野佳路代表の“大胆予測”に見る 星野リゾートの先見性と革新 Part.2 脱炭素を目指す

「旅は魔法」。星野佳路代表の“大胆予測”に見る 星野リゾートの先見性と革新 Part.2 脱炭素を目指す

2021年05月22日

今年創業107年を迎えた、日本ホテル界の明星、星野リゾート。Part.1では、創業当時から自家水力発電を始めていた先見性と、各リゾートを展開する場所で、その地域の文化と歴史をリスペクトし、地元との信頼を構築しながら観光地としての競争力を自然な形で高めている姿をお伝えした。Part.2ではさらに、そこに根差す確かな企業理念とSDGsに沿った具体的取り組みに迫りたい。

連載:世界のエコ・リゾート

創業早々から木製の水車で自家水力発電を始めていた星野温泉の誕生から107年。現在の星野リゾートでも、実に真摯に様々な持続可能な取り組みが行われている。星野リゾートの原点となる軽井沢星野エリア(星のや軽井沢・軽井沢ホテルブレストンコート・BEB5軽井沢)では、国連がSDGsを提唱する2015年より10年以上も早い1999年にリゾート内部で「ゼロ委員会」を発足し、2011年11月にホテル・旅館業界で初めてゼロ・エミッション(ゴミの再資源化率100%)を達成。今に至るまでゼロ・エミッションを継続・維持している。

また、独自の指標「EIMY(Energy In My Yard)」を掲げ、“自分たちの使うエネルギーはできる限り自給していく”という考え方のもと、自家水力発電に加えて温泉排湯と地中熱を組み合わせた熱源を導入。軽井沢の地質特性に合わせた技術改良と、1年間の熱源の需要を綿密に調査して大きな変動にも耐えうるシステムを設計し、消費エネルギーの約70%の自給を実現している。

他にも、オリジナルタンブラー推奨によるペットボトルフリーの実現や、日本で初めて「ベアドッグ(クマ対策犬)」を用いて人とクマが適度な距離を保ちながら共に暮らす方法を求める自然との付き合い方のモデルの発進。はたまた、イリオモテヤマネコの生息する西表島で日本初のエコツーリズムホテルの造成等々、実に独自性に富んだ様々な取り組みが成され、それらすべてが、“ホテルと地域は一心同体”という理念のもと、生半可ではない深い配慮と堅実な実践に満ちたものとなっている。

雄大な自然に包まれた西表島ホテル
雄大な自然に包まれた西表島ホテル

旅産業は今後最も大切な平和維持産業に

創業家4代目、現在の星野リゾート興隆の担い手である星野佳路代表は、自ら“大胆予測”と言及しながらも『100年後には旅産業は世界で最も大切な平和維持産業になっている』という仮説を披露している。

「旅で国内各地を訪れることで自らの国を深く理解し、また、外国に行くことで、他国の文化や豊かさを感じ、その場所に住んでいる人と触れ合い友人になることが出来る。『世界の人たちを友人として結んでいくこと』。それは、他の産業にはできない旅の魔法なのです。人と人とが国境を越えて理解を深め合うことに貢献することが、国と国が平和を維持する力となっていく。『ちょっと大袈裟だよ』と思われても、旅にはそういう役割が託されていると考えたいのです」と語る。

聖なる川の集落に佇む「星のやバリ」
聖なる川の集落に佇む「星のやバリ」

確かに、実際旅してみないとわからない事というのは沢山ある。どんなに、インターネットで多様な情報や発信を得ることが出来る時代となっても、事前に得た知識やイメージをもって旅先に赴くと、それらが鮮やかに裏切られることが多々あるという経験は、旅の醍醐味でもある。旅は驚きと発見の連続といわれるが、それは古今東西変わらない真実だ。そして、そこで生まれた思いがけない触れ合いこそが、他者や多様な文化を理解して受け入れるきっかけとなり、延いてはそれが平和を維持する力となる、即ちその経験が持続可能な未来を担っていくということになるのだろう。


星野リゾートトマムの雲海テラス

星野リゾートが様々に実践し、地球と自然を思いやる持続可能な取り組みのさらなる継続と発展を祈り、また、このコロナ禍を抜けて、星野佳路代表の“大胆予測”の通り、旅産業が世界で一番大切な平和維持産業となる世の中になることを心から願って、筆を置きたい。

日本初のグランピングリゾート「星のや富士」の夕暮れ
日本初のグランピングリゾート「星のや富士」の夕暮れ

(ヘッダー画像:四季折々に楽しめる「星のや軽井沢」の棚田)

Part.1はこちら

小川直美
小川直美

株式会社afterFIT クリエイティブ・ディレクター 過去○十年、文藝春秋勤務。 週刊誌のファッション&ライフスタイル・ディレクター、旅行誌アドバタイジング・エディター、雑誌マーケティング、文藝誌編集等、多岐に亘る雑誌メディア業に従事。 心の本業はダンサー。

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