トヨタ・日産の持たざる経営に転機は本当か? 分析で見えるトヨタの本当の強さとは。 | EnergyShift

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トヨタ・日産の持たざる経営に転機は本当か? 分析で見えるトヨタの本当の強さとは。

トヨタ・日産の持たざる経営に転機は本当か? 分析で見えるトヨタの本当の強さとは。

2021年09月17日

半導体不足が続いている。半導体不足の原因は先日解説したが、その影響は自動車メーカーに如実に響いており、トヨタは先般減産を発表。8月時点の生産計画に対し、9月追加分が約7万台、10月分が約33万台の減産となる。そうした中、トヨタをはじめ、日本の自動車メーカーが在庫を持たざる経営を改める動きが出てきた。これは日本の自動車産業、特にトヨタの経営スタイルを大きく転換させるものだ。半導体不足に起因するこの現象について、ゆーだいこと前田雄大が解説する。

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そもそも「持たざる経営」とは何か

9月15日付の日経新聞は、トヨタや日産など自動車メーカーが在庫の調達戦略を見直すと報じた。しかし、事態をきちんと把握すると、実はトヨタに関しては「持たざる経営」の転換をもっと前から準備していたことがわかる。そこで今回は、「持たざる経営転機」報道について、別角度から分析していきたい。

まずは、そもそも在庫を持たざる経営とは何か、トヨタ生産方式を例に解説し、その上で、次の4つの論点を分析したい。

  1. 自動車メーカー各社の転換について
  2. 実はトヨタはもっと前から「持たざる経営」転換に取り組んでいた
  3. その準備があったからこそ、トヨタはこの危機に逆転打を打てた
  4. 今後の展望について、半導体不足下でどうかじ取りするのか

それでは、持たざる経営とは何か、トヨタ生産方式を例に解説したい。

戦後、特に1990年代ごろまで、日本の経営方式は世界の研究対象となっていた。なぜ、日本企業は強いのか、と注目を浴びたわけだが、その中で世界に名をとどろかせたのが、トヨタ生産方式やその中にあるカンバン方式だった。

筆者が2000年代後半にアメリカの国際関係の大学院に留学したときにも、まだ日本の経営方式についてレガシーが残っていたほどだ。経営概念としてインパクトのある手法である、ということだろう。

実は、このトヨタ生産方式やカンバン方式は、密接に、今回の持たざる経営に関係している。

トヨタの生産の特徴は、徹底的な無駄の排除と、製造工程の合理性を求めるもの。日本の他の企業をはじめ、多くの自動車企業がこれを見習っているが、トヨタのスキル、徹底ぶりは段違いであると言われている。

トヨタのこのシステムは、生産性をアップさせる自動化という考え方と、そして無駄をなくして生産効率をアップさせるジャストインタイム方式の2つの柱から成り立っている。

特に持たざる経営の特色を出しているのが、後者のジャストインタイム方式。「ジャストインタイム」とは、簡単に言えば、「必要なものを、必要なときに、必要なだけ」供給するための生産計画という考え方だ。ちなみに、このジャストインタイムと似ているものの、その実、大きく違うのが受注生産方式である。通称BTO。BTOは顧客の希望に合わせた製品を、顧客の注文を受けてから製造する方法のことで一見、合理的に見えるが、BTOで需要家が選べるオプションが多いと、それだけメーカー側はパーツの在庫を持たなくてはいけなくなる、という欠点がある。

一方、すべてのパーツを自社で在庫せず、必要なときに必要な分だけ準備する考え方がジャストインタイムだ。では、どんな仕組みなのか、簡単に見ていこう。

前田雄大
前田雄大

YouTubeチャンネルはこちら→ https://www.youtube.com/channel/UCpRy1jSzRpfPuW3-50SxQIg 講演・出演依頼はこちら→ https://energy-shift.com/contact 2007年外務省入省。入省後、開発協力、原子力、官房業務等を経験した後、2017年から2019年までの間に気候変動を担当し、G20大阪サミットにおける気候変動部分の首脳宣言の起草、各国調整を担い、宣言の採択に大きく貢献。また、パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略をはじめとする各種国家戦略の調整も担当。 こうした外交の現場を通じ、国際的な気候変動・エネルギーに関するダイナミズムを実感するとともに、日本がその潮流に置いていかれるのではないかとの危機感から、自らの手で日本のエネルギーシフトを実現すべく、afterFIT社へ入社。また、日本経済研究センターと日本経済新聞社が共同で立ち上げた中堅・若手世代による政策提言機関である富士山会合ヤング・フォーラムのフェローとしても現在活動中。 プライベートでは、アメリカ留学時代にはアメリカを深く知るべく米国50州すべてを踏破する行動派。座右の銘は「おもしろくこともなき世をおもしろく」。週末は群馬県の自宅(ルーフトップはもちろん太陽光)で有機栽培に勤しんでいる自然派でもある。学生時代は東京大学warriorsのディフェンスラインマンとして甲子園ボウル出場を目指して日々邁進。その時は夢叶わずも、いまは、afterFITから日本社会を下支えるべく邁進し、今度こそ渾身のタッチダウンを決めると意気込んでいる。

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