近年、ESG(環境・社会・企業統治)投資やSDGs経営の重要性の高まりから、サステナビリティに関しての企業と投資家の対話や非財務情報の開示に関心が高まり、「サステナビリティ委員会」の設置や機能強化が求められている中、本稿では日本企業の動向を追う。
東京証券取引所(東証)は2021年6月、上場企業の行動規範「コーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)」の改定版を公表し、サステナビリティに関する取り組みとその適切な開示を促している。
改定の主な内容としては、SDGsやTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)といった気候変動をはじめとする地球環境問題への対応や、人権への配慮など国際的な課題への対応を企業に強く求めている。
例えば、基本原則の中には、「取締役会は、気候変動などの地球環境問題への配慮、人権の尊重、従業員の健康・労働環境への配慮や公正・適切な処遇、取引先との公正・適正な取引、自然災害等への危機管理など、サステナビリティを巡る課題への対応はリスクの減少のみならず収益機会にもつながる重要な経営課題であると認識し、中長期的な企業価値の向上の観点から、これらの課題に積極的・能動的に取り組むよう検討を深めるべきである」と明記するなど、サステナビリティに関する内容を大幅に補充するものとなっており、これまで以上にサステナビリティを踏まえた経営を推進するための文言が目立つ。
ESG要素の中でも特に喫緊の課題として挙げられている気候変動問題に関しては、TCFD提言に沿った開示の拡充が進んでいる。東証が2022年4月に行う市場区分の再編により、最上位市場である「プライム市場」に上場する企業にはTCFD提言と同等の情報開示が求められる。3月期決算企業は6月の株主総会後に提出するコーポレートガバナンス報告書から記載が必要だ。つまり、プライム上場企業は気候変動の影響等について、今までよりも質も量も充実した開示が求められるといえる。
また、金融庁はコーポレートガバナンスの改定に併せ、「投資家と企業の対話ガイドライン」についても2021年6月に改定。「取締役会の下または経営陣の側に、サステナビリティに関する委員会を設置するなど、サステナビリティに関する取り組みを全社的に検討・推進するための枠組みを整備しているか」などの論点を追加した。
こうした新たな企業統治指針や東証再編の流れを受け、日本国内でもサステナビリティ関連の委員会を設置する企業が増加しつつある。
さらに、社会のサステナビリティを踏まえた企業の目指すべき方向性や長期的な基本戦略の立案自体は、一義的には社長・CEOを中心とする経営陣が行うものでもあるとして、取締役が参加する「サステナビリティ委員会」を設置する企業が出てきた。
では、実際に企業の取り組み事例を見てみよう。
サステナビリティ委員会の設置例と日本企業が抱える課題とは・・・次ページ
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