1961年、謎の飛行機事故で亡くなった第2代国連事務総長スウェーデン人ダグ・ハマーショルドは、ヘンリー・カボット・ロッジ・ジュニアの言葉を取り上げ「国連は私たちを天国に導くためではなく、私たちを地獄から救うために創設された」という偉大なポリシーを残した。まさしく、世界中の弱者救済という理念にあふれた言葉だろう。
この言葉の先には、
「目標とターゲットがすべての国、すべての人々、及びすべての部分で満たされるよう、誰一人取り残さない」という、SDGsのポリシーが大きくつながっているのだろう。
このダグ・ハマーショルドの前述の名言で、どうしても頭に浮かべてしまうコミックやアニメ、ゲーム、映画などのエンタメコンテンツがいくつかあるはずだ。
著者の場合、その最たる1本が、2021年についに完結した「進撃の巨人」だ。つまり進撃の巨人の空想世界と、SDGsを掲げるぼくら現実の世界、この2つは、まるでアメコミのマーベルお得意のマルチバース作品のようにパラレルにあると捉えることがじつはできる。AAAのエンタメ作品である「進撃の巨人」を通すことで、SDGsが今一ぴんと来てない人も、その重要性を理解してもらうきっかけになってほしいと思い、前回の「ピクミン」に続き、このfile02を公開したい。
ヘッダー写真:©諌山創・講談社/「進撃の巨人」製作委員会 amazonプライムより
目次[非表示]
ファンにとってはいまさらになってしまうが、「進撃の巨人」というコミックやアニメをまったく知らない人のために、作品自体を簡単に解説しよう。
「進撃の巨人」第1巻表紙より ©Hajime Isayama2010
進撃の巨人の世界では、人類が食物連鎖の頂点にはいない。彼ら人類は、人を頭から丸かじりで捕食する巨人という存在に怯えながら生活しており、秩序ある社会と安全な生活を確保するために、100年もの間、3重にもなる巨大な外壁に囲われた、海もないその閉ざされた壁の中で必死に生き延びているのだ。
進撃の巨人season1「二千年後の君へ~シガンシナ陥落②」より/©諌山創・講談社/「進撃の巨人」製作委員会
進撃の巨人というコンテンツでは、「残酷な世界」という言葉がさまざまなシーンで頻出する。この言葉は、大きなテーマにもなっているし、日笠陽子が歌うエンディングテーマのタイトルですら、「美しき残酷な世界」である。
進撃の巨人2巻第6話「少女が見た世界」より/©Hajime Isayama2010
その「残酷な世界」というフレーズこそ、17の項目で彩られたSDGsの裏返しにほかならないだろう。そして、物語は平和にサステナブルに存続されてきた100年が、突如襲来した大型巨人によって、壁に穴をあけられ、その平和が終わりを告げるところから始まるのだ。
立体機動装置という派手なギミックを操って、壁の内外を暴れまわる巨人を討伐するシーンのせいで、アクション性で爽快感の高い話だと進撃の巨人は思われがちだが、たしかにそういう部分もあるにはあるが、それが本質だと思うのはまったくの間違い。
進撃の巨人とは、SDGsの真逆の世界である残酷な世界から、主人公級の3人エレン、ミカサ、アルミンを含む、さらには脇役まで含めてすべての子供たちが、旧態依然とした大人たちや体制からそれぞれ自立し、自らの力で、遺恨と血で呪われた歴史から人類を解放と贖罪していく変革の人生のエピソード集と言っても過言ではない。
進撃の巨人season1「二千年後の君へ~シガンシナ陥落①」より/©諌山創・講談社/「進撃の巨人」製作委員会
このコンテンツ、伏線の塊のようなプロット構成となっていることも有名だが、伏線回収という手段は彼ら子供たちが、この残酷な世界でいかに成長し、それぞれのエンディングをどう迎えるかということに尽きるだろう。
では、残酷な世界をSDGsに照らし合わせながら、なるべくネタバレせず楽しめる範囲で解説していきたい。
進撃の巨人の世界に散りばめられたSDGsな要素とは・・・次ページ
気候変動の最新記事