気候変動対策に伴う産業構造の転換は、労働者にも大きな影響を与える。そうしたことから、日本ではあまり知られていないが、気候変動枠組み条約における会議でも、労働組合は公式オブザーバーとして参加している。世界が脱炭素に向けてまい進する中で、労働者個々人の暮らしと働く場所を守るには、政府はどのような政策を進めるべきなのか、あるいは経営者はどのような労使対話が求められるのか。日本労働組合総連合会(連合)の総合政策推進局長、冨田珠代氏に話をおうかがいした。
—最初におうかがいしたいのは、政府の動向に対する評価です。
冨田珠代氏:2020年10月には、菅前首相の下、2050年カーボンニュートラルが表明され、2021年には、2030年までに温室効果ガス排出量削減目標が46%減へと引き上げられました。
脱炭素へ向かう世界情勢の中で、重要なのは、日本が国内外に向けてリーダーシップを発揮することだと考えています。そうした意味で、脱炭素に向けた明確な目標が新たに打ち出されたことは一定の評価ができます。
一方で、課題もあります。それは、その目標に向かうまでの具体性を帯びたシナリオやロードマップを必要としている点です。政府は、2021年10月にCOP26(気候変動枠組み条約第26回締約国会議)を直前に様々な目標や考えを表明しましたが、これらの実現には、国内の各主体の理解と実行過程における協力が必要不可欠であり、この点に関しては早期に国の丁寧な対応を求めたいと考えています。
日本労働組合総連合会 総合政策推進局長、冨田珠代氏
—具体的な道筋が示されていないことについて、労働組合の立場から、危機感を抱くのは、どういった点でしょうか。また、どのような対策が必要とお考えでしょうか。
冨田氏:脱炭素に向けて本格的に動き出すときには、様々なイノベーションと共に、産業構造の大きな転換が見られ、雇用や地域経済に少なからぬ影響が生じることが予測されます。
そうした流れを前提としつつ、雇用や地域経済への負の影響を極力小さくするには、「公正な移行」を実現する必要があり、産業構造の転換と雇用・経済政策は同時に推進されるべきであると考えています。
例えば、労働者に対する教育訓練の実施、住居政策の支援、「ディーセント」で「クリーン」かつ「持続可能な」雇用の維持・創出、再就職先の斡旋など、労働組合をはじめとする関係当事者が参加する枠組みの中で社会対話を行い、具体的な施策を検討していく必要があると考えています。政府には、こうした機会の設置を要望しています。しかしながら、現時点では実現しておりませんので、今後も要望していくつもりです。
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