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日本にも影響を及ぼす? 石炭に依存している中国の電力不足の実情とは

2021年10月26日

今後の石炭需要の予測とエネルギー対策への見通し

火力発電所は今年9月~10月に石炭倉庫を補充。冬季に向けて、電力需要がさらに増加し、暖房供給用の石炭需要が増えるため、石炭需要の高位推移はしばらく続くことが予想される(図7)。

中国政府は10月19日、電力不足を解消するため、エネルギー関連の大手企業にフル稼働するよう指示したと発表した。中国で主力となっている石炭火力発電だけでなく、水力や原発も総動員して電力を確保する方針を示した。

国内石炭の増加については8月から累積で1.2億トン(年間)の生産能力を増加し、12月までに合計5,000万トンを増産できる見通しで、輸入石炭の増加については、9月に輸入量が再び3,000万トンを超えた。また、エネルギー多消費産業(鉄鋼、アルミ、セメントなど)の生産量と生産設備の新設を厳しく制限することにより、石炭需要の削減につなげる考えだ。

自然エネルギー財団上級研究員の王氏は、自然エネルギーの発電比率は今後も伸び続け、中長期的な低炭素目標に影響しないとし、電源の低炭素化を従来通りに推進すると予測している。習近平国家主席がCO2排出量を2060年までに実質ゼロにする目標を国際公約に掲げる中、エネルギー消費削減目標の達成は義務となっており、手綱を緩めるのは難しいとされる。

図7

日本への影響は?

一方、中国は石炭価格の上昇で採算が悪化した発電所が相次いで操業を止め、各地で停電が頻発。生産停止に追い込まれる工場も多い。今年9月には中国の南部の広東省や東部の江蘇省のほか、東北部の遼寧省など、幅広い地域で、電力の供給制限が行われ、これによって、一部の地域では住宅地で停電が起きているほか、企業の操業停止も相次いだ。

影響は日系企業にも及ぶ。企業活動の停滞によって中国経済のみならず中長期的にみれば、中国からの輸入の不足や価格の上昇などを通じて、日本経済にも影響を広げる恐れがある。

さらに、世界的なエネルギー危機により、石炭価格のみならず、天然ガスも高騰しており、代替需要として原油の国際価格も上昇している。日本国内ではすでに原油価格高騰の影響で大手電力10社と大手ガス4社が値上げを決めている

原油価格に連動するガソリン価格も上昇し、灯油の価格も上がっていくだろう。飛行機の燃油サーチャージでは既に値上げが進んでいるほか、暖房設備を使用しているハウス栽培の野菜の値上げ、船の燃料代の高騰による魚の値上げ、パックとタレを入れる袋に石油が使われている商品の値上げも懸念されている。

総務省が10月22日に発表した9月の全国消費者物価指数(CPI、2020年=100)は、ガソリンや電気代などを含むエネルギーが大幅に伸び、CPIを押し上げた。プラスは2020年3月以来、1年6ヶ月ぶり。QUICKがまとめた市場予想の中央値(0.1%上昇)と同じだった。

原油価格の高騰を背景に、エネルギーは前年同月比7.4%上昇と2018年11月(8.1%上昇)以来の高水準だった。「灯油」や「ガソリン」が2桁の上昇となったほか、原油相場の影響がガソリンより遅行する「電気代」も4.1%上昇した。

石炭などの化石燃料の価格が上昇し、電力価格の高騰や不足が世界中で起こるという連鎖が起きている。日本にも影響が及んでいることは顕著である。特に化石燃料比率が高い国はこうむりを受けている。

原油価格のリスクを考えると、エネルギーに占める化石燃料の割合の引き下げや再生エネルギーの普及をさらに後押しすることも必要だ。今後の動向に注目していきたい。

※図の出典はすべて中国電力企業連合会と中国政府の公表資料に基づいて財団が作成

Text:東條英里)

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東條 英里
東條 英里

2021年8月よりEnergyShift編集部にジョイン。趣味はラジオを聴くこと、美食巡り。早起きは得意な方で朝の運動が日課。エネルギー業界について日々勉強中。

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