今年7月に公表された第6次エネルギー基本計画。Fridays For Future Japanはその計画策定までを注視し、スピーチやスタンディングなどの活動をおこなってきた。そして発表された計画を、日本のこれからのエネルギー計画を、どう受け止めたのだろうか。
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2021 年7月21日、炎天下の中、私は交通費を浮かせるために自転車で駅まで向かった。電車で向かう先は「経済産業省」。今日は昨年10月に始まった「エネルギー基本計画」の素案が決まる日だった。会議が始まって以来、Fridays For Futureのオーガナイザーが代わる代わるで会議が行われている経産省前に立ちスピーチやスタンディングを行ってきた。その最後の日。
本当はバイトと試験の後で眠いし、外に立つなんて暑いし、家でエアコンの効いた部屋で寝ていたかった。しかし、この日出されたエネルギー基本計画の内容に納得しているなんて勘違いされないよう、私たちの声を届けに行った。
7月21日午後に経済産業省前に集まったFFFJapan のオーガナイザー
(こういう発言をすると「エアコン?!CO2出してるじゃないか!」とごく一部の人に指摘されることがあるが、私たちはそんな石炭火力発電に頼った社会を変えるために活動しているのだ。そして我が家は再エネに切り替え済みである。このEnergyShiftを運営する株式会社afterFITも最近「しろくま電力」という可愛いクリーンな電力事業を始めたので、エアコンを使うことに後ろめたさを感じている人はぜひ調べてみてほしい。(しろくま電力 HP)
COP26を今年の秋に控え、2030年までのエネルギーの使い方を決めるにあたり開かれた会議を「基本政策分科会」といい、そこで今回決められたのが「第6次エネルギー基本計画」である。
分科会は 2020年10月13日から 2021年7月21日までの間に15回行われた。この計画はエネルギーミックスという電源の構成(火力何%、原子力何%、再生可能エネルギー何%で日本の電力を賄うよー的なやつ)に反映され、温室効果ガス削減目標をはじめとした日本の気候変動政策に大きく影響を与えるものである。
Fridays For Future Japan インスタグラムより、エネルギー基本計画を解説する投稿
私たちはこのエネルギー基本計画に合わせてアクションを企画してきた。
まずはFridays For Future Japanとしての署名の提出。これはエネルギー基本計画に対してだけではないが、昨年2020年の12 月、責任ある気候変動政策を求める署名を経済産業省や内閣総理大臣をはじめとする政府各所、そしてこの基本政策分科会の委員にも提出した。(Fridays For Future Japan HP より、署名全文)
この署名では、
を求め、3万8千筆以上の賛同が集まった。
次に、この「エネルギー基本計画」という超重要な会議が行われていることをSNSを通して広めること。この会議は今後10年、30年先の日本の気候変動対策にとても影響する超大事な会議なのに、難しい言葉が多すぎてとっつきづらすぎる。
私たちオーガナイザーも、まずはこの会議の内容を理解するのに苦労した。「エネルギーミックスって何?」「基本政策分科会ってなんの会?」「どんな人が会議に出てるの?」といったことを、なるべく分かりやすく、ときにはユーモアを加えて発信した。
エネルギー基本計画を決めている「基本政策分科会」の委員の方々を、皆に分かりやすいように”エネモンカード”にし、その人の発言の「気候正義度合」や発言に気候正義がどれだけ反映されているかを記号で表した。評価は発言の参照元とした基本政策分科会をウォッチし、カードをを作成したメンバーで話し合って決めた。これを見ればどれだけ偏ったメンバー構成だったかも、どの企業がどのスタンスを取っているのかも、何もかもが一目でわかる。他にもインスタライブで会議について生解説をする企画も行なった。
Fridays For Future Japan インスタグラムより、エネルギー基本計画に関する投稿例
Fridays For Future Japan インスタグラムより、エネルギー基本計画に関する投稿例
そして、エネ基が始まった 2020年10月13 日、6人のオーガナイザーが経済産業省前に集まりプラカードを掲げた(写真を見返すと10月なのにタンクトップを着ていて、至る所から気候変動を感じる日々だ)。
それ以降も可能な限り会議がある日は経済産業省の前に集合してスタンディングアクションを行なってきた。時には会議に出席する委員に会ったり、会議の中で私たちがスタンディングしていることを話してくれる委員の方がいたり、大きな影響は与えられたかわからないが、少しは「若者が見ているぞ」という圧を与えられたのではないかと思う。
そして最終日の7月21日、オーガナイザー8人が集まり、最後のスタンディングを行なった。冒頭でも述べたように、エネルギー基本計画の内容に納得しているなんて勘違いされないよう、最後の最後まで、そしてこれからも声を上げ続けるのだ。
2020年10月13日のスタンディングに集まったオーガナイザー
最後に、発表の内容を受け、改めてFridays For Future Japanとして「2030 年エネルギーミックス仮案発表に際しての声明」を出した。日米気候パートナーシップやG7コミュニケの矛盾、化石燃料利用からの早期脱却を示す計画の要求、エネルギーも気候正義も踏まえた公正な解決策の要求を示した。詳しい中身はHPから見てみてほしい。(Fridays For Future Japan HPより、声明文全文)
資源エネルギー庁事務局は、この基本政策分科会において2030年電源構成について、再生可能エネルギー36~38%、火力41%(LNG20%、石炭19%、石油等2%)、原発20~22%、水素アンモニア発電1%とする案を発表した。
声明文にもあるように、この構成は決して受け入れられるものではない。このエネルギーミックスは4月22日に菅首相より表明された「2030年温室効果ガス削減目標(通称、NDC)を46%にする」という数値が大きく関わっている。
しかしそもそもこの目標では、パリ協定で定められた1.5℃目標を達成し、気候変動を解決するためには全く不十分である。これまでに大量の温室効果ガスを排出してきた歴史的責任や負担能力を踏まえると、日本では最低でも62%必要だとする報告もある。日本政府は2050 年までにカーボンニュートラルを目指すと宣言したにも関わらず、まだまだ少なくとも10年間は火力や原子力に頼り続けるつもりなのだ。
(経済産業省 「エネルギー基本計画(素案)の概要」2021)
世界中で、特に先進国で再生可能エネルギーへ大幅にシフトする流れができている中で、それに逆行するような計画。そしてそれを「大幅な引き上げがなされました」とその数値が意味することまでは伝えずポジティブなニュースかのように報道する多くのメディア。何より、自分たちの暮らしや将来に大きく影響する話がされていることを全く知らず、ニュースにも興味すら抱かない人の多さに、とてつもない危機感を感じている。
とはいえまずは、この会議に対して様々なアプローチで「少しでも良い計画を!」と全力を尽くしてくれた仲間に感謝したい。私自身何度も「で、結局エネ基ってなんだっけ?何決めてるんだっけ?」と頭を悩ませた。
どうしたら効果的に声を届けられるか、そしてどうしたらその声を反映してもらえるのか、ここまで日本の政策に対して真剣に長期間向き合ったのは初めてだったと思う。
私個人としては、政府は敵ではないと考えている。私たちはお互いに歩み寄り、誰もが幸せに安心して過ごせる世界を作るために、共に大変革を起こす仲間でありたい。しかし、仲間だからといって妥協はしない。
11月のCOP26まで日が迫ってきた。今回のエネルギー基本計画に際してのアクションから学んだことを活かし、今後も引き続き、そしてさらに強く、声を上げていきたい。
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