日本のカーボンニュートラル実現にとって欠かせない火力発電の脱炭素化。化石燃料を使わない発電として、大手電力会社はじめ、三菱重工業やIHI、川崎重工業の総合重工3社が狙うのが水素発電だ。政府も2030年をめどに大規模水素発電タービンを立ち上げ、アジア市場などへの展開を狙う。水素で勝機をつかむ企業はどこなのか。今回は水素発電分野の最新動向から探ってみたい。
目次[非表示]
カーボンニュートラル実現に向けては、石炭火力のみならず、LNG(液化天然ガス)火力の脱炭素化も欠かせない。LNGに代わる新たな燃料として期待されているのが、燃焼時に二酸化炭素(CO2)を排出しない水素だ。国などの試算によると、世界の水素タービン市場は2050年には最大約23兆円、最大約3億kW(累積発電容量)の巨大市場に化けると見込む。
政府は日本企業が世界をリードする大規模水素発電タービンを2030年に商用化させ、発電コストを1kWhあたり17円とし、発電容量100万kW、30万トンの水素需要を立ち上げるとともに、LNG火力の依存度が高いアジア市場を取り込む計画だ。2050年には発電コスト12円/kWhの実現を目指す。
脱炭素の流れは、ガスタービンやボイラーなど火力発電設備を収益源としてきた三菱重工やIHI、川崎重工の重工大手3社にとって、逆風にもなる。足もとの2021年4〜9月期決算では3社ともに最終黒字を確保したが、川崎重工はガスタービンコンバインドサイクル発電プラント(GTCC)の減収が続く。IHIは原子力での安全対策工事が貢献し増収だったが、三菱重工はGTCCの受注高が減少傾向にある。しかも、新型コロナウイルスの影響を受け、主力事業のひとつである航空機関連の不振から抜け出せない。三菱重工や川崎重工はボーイング向けの受注が低迷、IHIの航空部門は赤字だ。
火力発電を中心とするエネルギー部門は3社にとって大きな収益源である。特にエナジー部門で1兆6,000億円(2021年度予想)を稼ぐ三菱重工は、国内はじめアジア、アメリカなどに1,500を超えるガスタービンを供給する世界トップシェアメーカーでもある。航空や火力発電に代わる新たな収益源の育成が急務となっている中、世界的な脱炭素の流れを受け、大手3社は水素やアンモニア発電を次世代事業に位置づけ、開発を急ぐ。
三菱重工業
エナジー | 1兆6,000億円 |
プラント・インフラ | 6,500億円 |
物流・冷熱・ドライブシステム | 9,500億円 |
航空・防衛・宇宙 | 6,000億円 |
川崎重工業
エネルギーソリューション&マリン | 3,200億円 |
宇宙航空システム | 3,200億円 |
車両 | 1,500億円 |
精密機械・ロボット | 2,600億円 |
モータサイクル&エンジン | 4,400億円 |
IHI
資源・エネルギー・環境 | 3,400億円 |
社会基盤・海洋 | 1,700億円 |
産業システム・汎用機械 | 4,000億円 |
航空・宇宙・防衛 | 2,700億円 |
重工3社の2021年度セグメント別売上高の見通し
三菱重工、2030年に100%水素タービン商用化へ・・・次ページ
エネルギーの最新記事