2021年1月25日、国際環境NGO FoE Japan、「環境・持続社会」研究センター(JACSES)、気候ネットワーク、メコン・ウォッチ、国際環境NGO 350.org Japanなど39ヶ国128団体は、日本の官民に対し、ベトナム・ブンアン2石炭火力発電事業(ブンアン2)からの撤退を求める要請書を提出した。
昨年(2020年)12月28日に日本の公的金融機関である国際協力銀行(JBIC)が、ブンアン2に対し6億3,600万米ドル(約600億円)の融資契約を締結した*1。協調融資に参加した民間金融機関は、三菱UFJ銀行、みずほ銀行、三井住友銀行、三井住友信託銀行が含まれるとみられている。また出資には三菱商事、中国電力が含まれるとみられている*2。
ブンアン2はこれまでも国際的な批判を受けていた事業で、政府および参加各企業の気候変動対策との矛盾や環境影響評価の不備など、多くの問題が指摘されていた。
JBICによるブンアン2への融資は「環境保全」を目的としたウインドウ(成長投資ファシリティ質高インフラ環境成長ウインドウ)を利用したものであることも明らかになっており、グリーンウォッシュだと批判の声も上がっている*3。
要請書には賛同署名とともにメッセージも寄せられており、日本政府や同事業に関わる企業に対し「気候危機の現実を直視してください」、「世界中で気候変動を解決しようと頑張っている人たちの努力を潰さないでほしいです」、「ネットゼロとはこれ以上化石燃料を支援しないということです」などといった声が上がっている。
前述の各団体の他、アメリカ、イギリス、スウェーデン、そしてベトナムなどの39ヶ国の団体も共同提出に名を連ねている。
パリ協定が採択されて、すでに5年が経過した。この間、さらに気候変動に関する科学的な分析が進み、気候危機を食い止めるためには新規に石炭火力発電所を建設する余裕がないことは、広く知られ始めている。パリ協定の国別目標の実施が始まる2021年を目前に、いまだ日本政府が新規石炭火力発電事業へ公的支援を決定したことに対し強く抗議するとともに、ブンアン2への支援の撤回を求めている。
また、日本政府は国際協力機構(JICA)を通じてバングラデシュ・マタバリ石炭火力発電事業フェーズ2、インドネシア・インドラマユ石炭火力発電事業に関しても新規建設を支援しようとしている。これらについても、公的支援は行わないと明確にすべきとしている。
参照
*1:JBIC, 「ベトナム社会主義共和国ブンアン2石炭火力発電事業に対するプロジェクトファイナンス 成長投資ファシリティにより、電源開発プロジェクトを支援」
*2: IJGlobal, “UPDATE: JBIC signs debt for Vietnam coal-fired”, 05 Jan 2021
*3:https://sekitan.jp/jbic/2021/01/21/4976
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